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虫歯&銀歯の女の子
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虫歯&銀歯の女の子
- 1 :名無しさん@ピンキー:04/07/19 16:12 ID:8MZmTy88
- こんな子に激しく萌えます
- 239 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 18:09 ID:NVu7uLIt
- そう思っていると、歯医者の声がまた始まった。
「次。左下いきます。7番。」また、カリッカリッと、つついている。 「C2。6番、○。インレーです。5番、C2。4番…これは初めて、大丈夫だ。4から右3まで斜線。」 これまで、全部虫歯だったのか… あらためて、香緒里の歯のボロボロぶりに驚く。 不思議と、不快感はなかった。むしろ、この診察で、また昨日のように少しドキドキしていた。 「右、4番、レジン、だけどこれも、2次齲蝕だなあ。5番、C2、6番、インレー、7番、C2、以上。」 カチャリ、と、歯医者はミラーと針を置いた。
- 240 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 18:10 ID:NVu7uLIt
- 「どう。」と助手に尋ねる。
「多すぎて…ちょっと待って下さい」 美人だが、やや冷たい顔の助手は、カルテの文字を数える。 「要治療、19本です。C1が2本、C2が12本、C3が2本にC4が1本、2次齲蝕2本です。」 「年とおんなじだけ、虫歯があるなんて、多すぎるよ。小さい子供ならまだしも。」 歯医者は厳しい顔で言った。 「うーん、この分だと、全部治すのに、まあ半年は通ってもらうことになると思う。 とりあえず、痛いところから治していくつもりだけど、痛くなくなったからやめる、なんてことはしないように。 この分だと、どんどん痛む歯は増えるだろうしね。ちゃんと最後まで通えるね。」 念押しするように、香緒里の顔を見つめる。 ハイ、と、泣き出しそうな声で香緒里が答える。
- 241 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 18:11 ID:NVu7uLIt
- 「一度に、何本か進めていかないと、終わらないから。一番痛むところと、
その奥をなんとかしようと思うけど、今日は時間ある?」 「いえ、今日は」 とっさに香緒里が首を振る。えっ、と思ったが、まあ、今日はショックもあるのだろう。 そう思い、黙っていた。このことが後で、香緒里の悲劇を生むことになろうとは… 「大野さん、あのね…」 歯医者は、呆れたような顔になり、なにか言いたそうだったが、 「ま、ここでお説教しても進まない。とりあえず、治療に入りましょう。」 香緒里の顔が、体が、また固くなった。 別の助手が、器具を並べ始め、歯医者は、レントゲンを見つめた。
- 242 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 18:12 ID:NVu7uLIt
- で、ここで217に続く。と。
我ながら、長・・・
- 243 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 18:44 ID:m/mJwhBZ
- GJ!!
- 244 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 20:42 ID:lIahtgwm
- 細かい描写に激萌えです!
乙! お礼に230の続きを少し… 「救急の歯医者、やってると思うけど行く?」 香緒里は首を振る。 肩を震わせしゃくり上げる香緒里の枕に、涙の大きな染みができている。 「…そこまで迷惑、かけられないよ。ヒック。私はいいから寝てて。」 そうは言っても、歯を欠けさせたのは俺だ。 心配で眠れるわけがない。 「薬はいつ飲んだの?」 「30分ぐらい前かな、でもわかんない。時間が経つのが遅くて…」 じゃあそろそろ効いてきても良い頃だ。 頭に血が昇ると痛いから、といって香緒里は上体を起こした。 抱きかかえて支えてやる。
- 245 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 20:47 ID:lIahtgwm
- 歯も一応診ておいた方がいいだろう。
「あーんしてみて、無理ならいいよ。」 俺がそういうと、香緒里は涙に濡れた顔をしかめながら口を大きく開けた。 慌ててスタンドライトを付ける。 左上の一番奥の歯、歯磨きするまでは小さかった虫歯の穴が、大きく開いている。 香緒里に申し訳なくて、動悸がした。 「ん?」 よく見ると、穴の中に白い欠片が見える。 「香緒里、多分、歯の欠片が詰まったままだと思うんだけど、 取れば楽になるんじゃないかな?」 どうやって取れば良いだろう。爪楊枝でほじくり出すか、でもかなり痛そうだ。 「…うがい、してみる」 しゃくり上げながら香緒里が言った。 「米粒とか、うがいで結構取れるから」
- 246 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 20:59 ID:lIahtgwm
- コップに水を汲み、思いついて洗面器も持ってきた。
「はい。ここにはき出せばいいからね」 洗面器を香緒里の太ももの上に置いた。 「……んっ!」 水を口に含むと、香緒里は目をぎゅっと瞑った。目尻から、涙がぽろぽろと落ちる。 しまった、少し冷た過ぎたか。香緒里の歯の半分はC2の虫歯に犯されている。 きっと頭に響くほどしみたのだろう。心の中で香緒里に手を合わせる。 「…どう?」 水をはき出し、香緒里はまた口を開ける。 「んー、だめだ。残ってる。」 やはり爪楊枝しかないようだ。戸棚から一本取ってくる。
- 247 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 21:07 ID:p80Dyk50
- す、すげえ・・
興奮しまくりだった。検診編、乙。 この香緒里の彼氏激裏山。 虫歯をつつくチャンスまで・・
- 248 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 21:12 ID:g/c+IvN0
- 救急に行って美人女医に怒られる、
って展開を想像してたが、 C3のムシバぐりぐりは予想以上だ…萌え〜
- 249 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 21:18 ID:lIahtgwm
- 「これで取ってみるよ。痛いかもしれないけど、ちょっとの間我慢できるね?」
「うん」 言って香緒里は口を開ける。 閉じてしまわないように、左手の指を口の中に入れ、親指で上の歯を押し上げた。 欠片は、穴の入り口付近にあった。 手前の歯が削られて平べったくなっているから、うまくすれば取れそうだ。 「いくよ」 声をかけると、香緒里は俺の服の端を握って、息を止めた。 爪楊枝を虫歯の穴に入れていく。 「あーっ、ふ、んあーーっ」 やはり相当痛いようだ。香緒里は服を引っ張る手に力をこめ、声を上げて泣き叫んだ。 「もう少し、我慢して…」 「あ、はあっ!!」
- 250 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 21:26 ID:g/c+IvN0
- か、噛まれる!?
- 251 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 21:27 ID:lIahtgwm
- 香緒里ののどの奥から声にならない声が絞り出されたその時、
欠片は穴からころりと落ちた。 洗面器に欠片を吐き出すと、香緒里は俺の胸に顔を埋め、きつくしがみついてきた。 「痛い、痛いぃー!!」 「もう終わったよ。大丈夫、大丈夫」 慌ててアイスノンを当ててやる。 「ひっく、ひっく…。痛かったよぉー」 頭を抱え込み、撫でてやる。 俺のせいでこんな痛い思いをさせてしまったと思うと、 一昨日虫歯をからかったことさえ、後悔の念でのしかかってくる。 辛いのは香緒里なのに… 香緒里は、ひとしきり泣いたあと、薬が効いたのか強引な治療が効いたのか、 はたまた泣き疲れただけか、しゃくり上げながら寝付いてしまった。
- 252 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 21:30 ID:g/c+IvN0
- 良スレになってきたと思うのはオレだけか・・?
- 253 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 21:38 ID:g/c+IvN0
- ぐりぐり編、乙。
主人公の悪意のなさ、思いやる気持ち、 それゆえに香緒里に苦行を強いているあたりが たまらん。 こんなのと付き合いてぇぇぇぇぇ
- 254 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 21:48 ID:lIahtgwm
- 俺はなんだか興奮して眠れなかった。
俺の前ではいつもしっかり者の香緒里が、 小さな歯に出来た虫歯一つで、あんなに弱くなってしまうなんて…。 動悸は一晩中おさまらなかった。 8時頃、香緒里が暗い顔をして起きてきた。 「やっぱり痛いの…ずいぶんましにはなったんだけど…」 「薬は?」 「今飲んだとこ。駄目ぇ、痛いよぅ…」 まだ次の予約までは日があったが、もう、少しも待てない。 痛い痛いと泣く香緒里をなぐさめつつ、昨日の歯医者に来た。 今日は香緒里も恐怖より痛みを取って欲しい気持ちが強いようで、 中の様子をうかがったりしている。 中には誰もいないようだ。 診療開始までまだ1時間近くある。どうしよう、他を当たるか…
- 255 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 21:52 ID:lIahtgwm
- 「どうしました?」
突然、声をかけられた。振り向くと、香緒里の担当の先生だ。 「おや…大野さん」 若くて虫歯だらけの香緒里は先生にも印象的だったのだろうか。 先生は名前を覚えていた。 「どこか痛むのかい?」 「あい、おくらあ、いらくて」 香緒里は頬をアイスノンで押さえていて口が回っていない。 首をかしげる先生に、俺は叫んだ。 「昨日、歯磨きで虫歯が欠けちゃって、夜中からすごく痛がってるんです。 薬もあまり効かないみたいで…」 「…入りなさい。とりあえず麻酔を打ってあげよう」 よかった…膝から力が抜けそうになる。 少しといいつつ長くなっちゃったよ〜 リアルタイムでコメント下さった方、ありがとう。
- 256 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 22:20 ID:5BF5cM/n
- 続けちゃっていいですかね
鍵を開けて、中に入れてくれると、そのまま診察室に通された。 「着替えてくるから、ちょっと待ってて。」 奥の部屋に消えた歯医者は、白衣を着て出てきた。 「で、どうしたって?」 「昨日、俺が歯磨きして、一番奥の歯が、欠けちゃって大きい穴があいちゃったんです。」 必死に訴えた。 「ほう、じゃ、見せてごらん。」 椅子を倒し、ライトを当てる。 冷たく光るミラーが香緒里の口に入れられる。 「あー、こりゃいかんな」 すぅっと血の気が引いた。 「俺が!乱暴にやりすぎちゃって!」 叫ぶ俺を軽く制して、歯医者は顔を上げて言った。 「いや、君は悪くないよ。」
- 257 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 22:28 ID:5BF5cM/n
- 「でも・・・」
「どうせ、あの部分は削るわけだし、欠けても特に問題はないんだよ。」 「そうなんですか。」 「この歯が痛み出すのは時間の問題だったんだ。もしかすると痛いのはこっちかもしれない、と 昨日も言っただろう。」 「そういえば・・」 「昨日、隣の歯を治療したので、神経が刺激されて、急に痛みが強くなったかもしれないね。 だから、昨日のうちに、まとめてやっておけばよかったんだが・・・」 香緒里が、しゅん、となった。
- 258 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 22:43 ID:5BF5cM/n
- 「じゃあ、いかん、っていうのは・・」
「ああ、この歯は隣と違って、まだ神経が一応、生きてるんだ。だから、痛みを止めるのに、 麻酔を打つわけ。」 「はい。」 「ただ、今見たところ、神経がかなり充血してしまっているんだ。 こういうときは、麻酔がほとんど効かないんだよ。」 「えっ・・・」 香緒里も、しゃくり上げながら、青ざめている。 「じゃあ・・神経を取っちゃえばいいんじゃないですか?」 俺は必死に抵抗を試みた。 「たしかに、神経は取らないといけないけど、麻酔せずに神経に触るなんて、拷問だよ。」 そうか・・・香緒里を見ると、ほとんど真っ白になってしまっている。
- 259 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 22:56 ID:5BF5cM/n
- 「他には?神経を殺すとか」
「君、鋭いね。神経を殺す薬を入れて、穴に蓋をして殺す、っていう方法もあるんだ。 ただね、それは、きちんと虫歯の部分を取って、きれいにしないとできないよ。 このまま蓋をしたら、歯や神経が腐って、ガスがたまるから、余計に痛むんだ」 「どうすれば・・・」 「とりあえず、できるだけのことはやってみよう。まず、麻酔を打って。強めの痛み止めと、 炎症をおさえる薬をあげるから、それを飲んで、おとなしくしてなさい」 「どのくらい、でおさまるんしょうか」 「2、3日といったところかな」 2、3日。数時間でも耐えがたかっただろうに、数日とは。
- 260 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 23:10 ID:5BF5cM/n
- 「それで治療してもらえるんですか」
「できるようになるよ。ただ、私は明日から1週間ほど出張なんだ。 でも、もう一人の先生に頼んでおくから大丈夫。美人の女医さんだ。 ちょっときついところもあるけど、腕は確かだよ。」 そう言い残して、歯医者は席を立ち、注射器を手に戻ってきた。 「はい、大野さん、あーん」 「あぁ」 「ちくっとするよー、まあ、歯の痛みに比べたらどうってことない。我慢してねー」 注射器を口の中に入れる。 「あ」 香緒里の脚が、ぴん、と伸びる。 注射器を持つ親指が、ゆっくりと押し込まれていった。
- 261 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 23:18 ID:EDeaxLqT
- 乙、すげー萌だよ!!
続きがかなり楽しみです。 ところでC4って抜かないといけない歯だったんじゃなかったっけ? けどそうなるとブリッチになるけどその隣もC3って事は ブリッチが不可能で入れ歯になっちゃうか、、、。 まっどうでもいいか。
- 262 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 23:20 ID:5BF5cM/n
- 「んあああ」
ぎゅっと閉じた香緒里の目から、涙がこぼれる。 「はい、今度外から入れるね」 そういうと、左手で、香緒里の唇をぐいっ、と上方向に押し広げた。 香緒里はされるがままだ。 「もう一度ちくっとするよー」 さらに唇が広げられ、注射器が入っていく。 「あぅぅ」 喉の奥からかすれた声がもれる。 薬が押し込まれるのに合わせる様に、涙がはらはらと出る。 「はい、これでおしまい」 椅子を戻し、注射器にキャップをはめて、歯医者が言った。 香緒里は、かすかな声で、「ありがとうございました」 と言い、頭を下げた。
- 263 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 23:26 ID:5BF5cM/n
- 受付で、薬の説明を受けていると、ドアが開いて、
昨日のカルテを書いていた助手と、もう一人、女の人が入ってきた。 「ああ、萩原先生。」 歯医者は、いいところに来た、とばかりに、女の人に話しかけた。 これが、さっき言っていた女医さんか。 たしかに美人だった。 「こちらの大野さん、明後日、治療に来られるから、お願いしますね。」 歯医者が言うと、 「お願いひまふ」 俺と香緒里も頭を下げた。香緒里は麻酔のせいで、口が回らない。
- 264 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 23:27 ID:5BF5cM/n
- 「昨日の患者さんですよ」
助手が、萩原先生に告げた。 「ん?ああ、はい、お大事に。明後日ね。」 萩原先生は、微笑んでドアを開け、送り出してくれた。 帰り道。 「痛むか?」 まだ涙が止まらない香緒里に、尋ねる。 「やっふぁり、麻酔、効かないみたい・・ひっく、ひっく」 「早くおさまって、治療してもらえるといいな。あの先生、腕は確からしいし」 「でも、あの先生、怖そうだよぅ、ひっく」 気弱になっているんだろう。そんな香緒里の肩を抱きながら、ゆっくり歩いて帰った。 たしかに、少しのつもりが、書き出すと長くなるねー 後よろ〜
- 265 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 23:49 ID:gvmfjkfx
- あ
- 266 :名無しさん@ピンキー:04/09/05 23:54 ID:gvmfjkfx
- 乙〜萌えますた。
>>261 漏れもそうオモタ。ブリッジしたいとこだけど、7番がつらいか? 7番にクラウンできるなら、できるかも。 萩原先生は、微笑んでドアを開け、送り出してくれた。 の後に、 きれいな白い前歯が、朝日にまぶしかった。 とか入れたい漏れは逝ってヨシ 萩原先生&助手コンビ、いじめキャラのヨカーン
- 267 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 00:20 ID:Hpo0RBeU
- 萩原先生のきれいな白い歯の裏側は金属でギラギラだといっそう萌え。
- 268 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 01:57 ID:MVaOPK2R
- 香緒里は、その日は痛い痛いと泣いていたが、
2日たち、ちょうど歯医者に行く日になると、痛みはおさまったようだった。 「今日は一人で行かれるか?」と言うと、 「痛くなくなっちゃった・・・来週でもいいかなあ。」と、渋る香緒里。 「ダメ。今は、痛み止めのおかげだよ。これ以上、先延ばしはダメ。」 とさとし、いやがる香緒里を連れて、歯医者に向かった。 「萩原先生に治療していただく、大野です」 と、受付で名を告げると、雑誌を手に取る間もなく、 「大野香緒里さん」 呼ぶ声がした。美人助手だった。 「彼氏も一緒に来てもらって、と萩原先生がおっしゃってるわ」 許可を求める前に、呼ばれてしまった。 香緒里を後から押すようにして、診察室に入る。
- 269 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 02:01 ID:sCiNuTJv
- 美人コンビに期待高まります!
- 270 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 02:22 ID:MVaOPK2R
- 「どう。痛みは軽くなった?」
診療椅子に座るなり、萩原先生が尋ねる。今日は、眼鏡をかけていて、少し厳しい感じがした。 「はい。」 「よかった。じゃあ、治療に入れるわね。」 「はい・・・よろしくおねがいしま、す」 「今日は、まず、この間痛かった、左上7番、一番奥の歯を削って、神経を抜いて様子を見るわね。」 「はい。」 「なるべくまとめて治療するように、院長先生に言われたんだけど、」 カルテを手にして、先生は難しい顔をした。 「んー、よりどりみどり、ってとこね。どこから行くか・・・ それにしても、ひどいわね。こんなの見たことないわ」 ちら、と香緒里を見る。 香緒里はうつむいてしまった。
- 271 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 02:40 ID:MVaOPK2R
- 「えーと、左上の4番は、珍しく軽いから、さっさと終わらせちゃいましょう。
次に左下5番、を削って、神経抜かないといけないかどうか見て・・・」 「え。神経・・抜くかもしれないんですか」 「C2だと、場合によるわね。冷たいものがしみるくらいなら、大丈夫なことが多いけど、 熱いものとか、甘いものがしみるようになってると、けっこう進んでるの」 香緒里の顔が硬直する。左下の歯は、熱いお茶がしみたのだ。 「甘いものとか、しみるの?」 萩原先生は、香緒里の変化を見逃さなかったようだ。 「あ、いえ・・・」 「ま、いいわ。」軽くため息をつくと、レントゲンをかざして見た。「あとは・・」 「えっ、まだ」 香緒里が小さく声を出す。
- 272 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 02:43 ID:sCiNuTJv
- 結構進んだC2って、削るとき痛いですよね。
しかも削りすぎるといけないから、って麻酔なし… 治療シーンが楽しみだ…
- 273 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 02:47 ID:MVaOPK2R
- すると、萩原先生が、急に、冷たい声になった。
「大野さん、あなた、何本虫歯があると思っているの?19本よ。しかも、どれも進行してるの。 そんなに放っておいたのに、簡単に治るわけないでしょう?治す気あるの?」 香緒里が悲しそうな顔になる。 「そんな顔したってダメ。虫歯は、なるもんじゃないの。作るものなのよ。 あなたが虫歯に「してしまった」のよ。自覚してるのかしら。」 香緒里の目に涙があふれてきた。 「前のとき、時間がないとか言って帰って、痛くなって駆け込んできたこと、忘れたの。」 えっ、と思って横を見ると、美人助手が頷いている。 香緒里は涙に声をふるわせながら、 「おねがいします・・・」と言った。
- 274 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 03:05 ID:6XQUlHtG
- ttp://www.ultra-closeup.com/
(・∀・)イイ!!
- 275 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 03:09 ID:MVaOPK2R
- 「はい。じゃ、あとは左上の2番。一番ひどい前歯ね。これは痛み出すかもしれないから
早めにやってあげたいんだけど。ちょっと見せてくれる。」 香緒里の顔を自分の方に向けさせ、唇をめくりあげる。 「ずいぶん変色してるわね。これだったら気付いてたでしょう。うーん、これはちょっと厄介だから もう少し後で集中してやりましょう。」 「あの・・・その歯、どうなるんでしょうか」 気になったので、思わず聞いてしまった。 「どうって?まあ、削って、神経を取ることになるだろうから、根がちゃんとしてれば、 土台を立てて、歯をかぶせることになると思うわ」 「それって、差し歯、ですか。」 香緒里が差し歯はイヤだと言っていたのを思い出した。 「そう、差し歯だけど?」 萩原先生が不思議そうに答える。 「差し歯・・・」 香緒里が青ざめていた。 「こんなにボロボロにしておいて、何言ってるの?ひょっとしたら、差し歯にもできないかもしれないわよ。 根っこまでやられてたら、抜くしかないから、両脇の歯を差し歯にして、くっつけて歯を入れるしかないわね。 これは、レントゲンを見た限りでは、どっちとも言えないんだけれど。」
- 276 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 03:27 ID:MVaOPK2R
- 重苦しい雰囲気だった。
助手が、カチャリ、カチャリ、と、治療の準備を始める。 「ま、とにかく、始めましょう」 椅子がゆっくりと倒され、萩原先生の目がいっそう厳しくなった。 「一番奥からやるつもりだけど、麻酔が効くようになってるかどうか、見せてね。」 口調は優しくもどっている。 左手にミラー、右手に探針を手にして、香緒里の口の中を覗き込む。 「あぅ!」 香緒里が跳ねた。 「まだちょっと充血してるようね。今日は無理だわ。もう少し落ち着かせましょう。 じゃ、下の歯からにしましょうか。左下の5番ね。」 一瞬、ホッとした顔を浮かべた香緒里だったが、 「一応、C2だから、麻酔せずに削っていきます。」 と言われ、目を見開いて怯えているのがわかった。
- 277 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 03:31 ID:MVaOPK2R
- 「我慢できなくなったら、ちゃんと麻酔するから大丈夫よ。」
横から、助手がなぐさめるように言った。 「はい、じゃ、あーん。」 ミラーでしばらく見た後、萩原先生は、先を選んで、器械にはめた。 不安そうに横目で見つめる香緒里。 「ちょっと見にくいから、ワイダーつけてくれる?」 「はい。」 助手は立って、プラスチックの道具を持ってきた。 なんだろう・・・ 見ていると、助手は、それを香緒里の唇にはめた。 すると・・・可愛い香緒里の口が、無理やり大きく開かされていた。 目を離せずにいると、香緒里がそれに気付いて、泣き出しそうな顔をした。 「じゃ、削りますよー」
- 278 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 03:49 ID:MVaOPK2R
-
助手が、J字型の器械を持って、香緒里の口に入れた。<BR> ジュボボ・・と音がする。<BR> 「バキュームっていうの。唾液を吸い取るのよ」<BR> と、助手が教えてくれた。<BR> チュイーン、と音をさせながら、ドリルが歯に近付いていった。<BR> 「痛くなったら、左手上げてね」<BR> 香緒里が体を固くした。<BR> キュゥーン、キュゥーン、<BR> 音を響かせながら、香緒里の歯をドリルがえぐっていく。<BR> キュィーン、イィィィィィィィン、チュイン、チュイン、<BR> ドリルの音は続く。<BR> 「あー、けっこう中で広がってる、頑張って」
- 279 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 03:50 ID:MVaOPK2R
- あ。やり直し。
助手が、J字型の器械を持って、香緒里の口に入れた。 ジュボボ・・と音がする。 「バキュームっていうの。唾液を吸い取るのよ」 と、助手が教えてくれた。 チュイーン、と音をさせながら、ドリルが歯に近付いていった。 「痛くなったら、左手上げてね」 香緒里が体を固くした。 キュゥーン、キュゥーン、 音を響かせながら、香緒里の歯をドリルがえぐっていく。 キュィーン、イィィィィィィィン、チュイン、チュイン、 ドリルの音は続く。 「あー、けっこう中で広がってる、頑張って」
- 280 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 03:59 ID:MVaOPK2R
-
キュイーン、イーン、<BR> どのくらい削ったころだろうか。<BR> 「あぅ!」<BR> 香緒里の悲鳴が上がり、左手が上がった。<BR> 「もうちょっとだからねー、ちょっと我慢して。」<BR> 香緒里の足先に、ぎゅっ、と力が入った。<BR>が、まだ終わる気配はない。<BR> キュィーン、キュゥーン、<BR> 「あー、こっちも広がってる・・」<BR> 「あ、はああ、んぁ、ぁぁぁ」<BR> 香緒里が泣き出し、脚をばたばたさせ始めた。<BR> 「あと少しだから」
- 281 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 04:00 ID:MVaOPK2R
- ぐはー、まただ・・
キュイーン、イーン、 どのくらい削ったころだろうか。 「あぅ!」 香緒里の悲鳴が上がり、左手が上がった。 「もうちょっとだからねー、ちょっと我慢して。」 香緒里の足先に、ぎゅっ、と力が入った。 が、まだ終わる気配はない。 キュィーン、キュゥーン、 「あー、こっちも広がってる・・」 「あ、はああ、んぁ、ぁぁぁ」 香緒里が泣き出し、脚をばたばたさせ始めた。 「あと少しだから」
- 282 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 04:01 ID:MVaOPK2R
- キュゥゥゥゥゥゥン。
ドリルが口からようやく離れる。 ワイダーもはずされ、椅子が起こされる。 「口ゆすいでね」 くちゅくちゅ。すこしホッとした顔で、香緒里が口をゆすぐ。 「はい。もう一度倒しますよー」 ふたたびワイダーが付けられる。 助手がバキュームを手に取る。 えっ、終わりじゃなかったのか・・・・ 「意外と大きく広がってたから、もう少し削らないと。」 香緒里が怯えた顔をしたが、口は強制的に開けられているので、 逃げることもできない。 キュィィィィン、 ドリルがふたたび、口に入っていった。 そろそろ限界だ。寝まふ。 どうも、美人ペアを活かしきれてないな・・ 書き直しキボン。
- 283 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 04:19 ID:sCiNuTJv
- 乙!めっちゃ萌えた〜。
続き少しだけ書くよ。 シュゥン、シュゥン。 少しずつ、本当にほんの少しずつ香緒里の歯は削られていく。 「あ、う、ぁあ…あっ、んぅっ」 そのたびに香緒里がのどの奥で呻く。 手はチェアをきつく掴み、足は絶えずうごめいている。 「神経に近いから少し痛いと思うけど、神経にはまだ触ってないからね。」 手を止めずに荻原先生は言った。 歯を削られている香緒里は、肯くことも出来ずに、涙を流すばかりだ。 口も強制的に開けられていて、香緒里の自由になるのは足ぐらいのものだ。 その足は椅子を蹴り続ける。
- 284 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 04:33 ID:sCiNuTJv
- チィッ、チィン、シュゥンン…
「はい、終わり」 無限にも思われた時間が終わり、香緒里の口から再度ワイダーが外された。 口をゆすぐ香緒里に荻原先生が声をかける。 「神経は取らずに済んだわ。神経を保護する薬を入れて、型を取って、 今度金属の詰め物を入れますからね。じゃあお願いね。」 最後の一言は美人助手に向けた言葉だ。 美人助手はてきぱきと薬とセメントを練り合わせ、荻原先生に手渡した。 椅子を倒し、香緒里に口を開かせる。 ノズルの着いたチューブを香緒里の口に入れ、ボタンを押した。 シューッ、シューッ どうやら歯を乾かしているらしい。 風もしみるのか、香緒里は声こそあげないものの、またもびくん、と跳ねた。 「動かないで、口も閉じないで下さいね」 助手が言ったが、すでに香緒里は口を半分閉じていた。 「……もう一回開けて、はい、あーん」 助手が軽くため息をつきながら言い、再度香緒里の歯を乾かした。 シューーーッ、シューッ 香緒里は目をぎゅっと閉じて、懸命に我慢している。 同じく寝まス。
- 285 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 09:57 ID:JA0zS8b0
- 真っ昼間から続きやらせてください。
「じゃ、型取るわね」 荻原先生はそういって、香緒里の口にセメントの乗った金属のトレイを入れる。 「ちょっとかんで・・しばらくこのままで」 香緒里は、トレイをかんだまま変な顔をしている。 俺がその顔を見つめていると、香緒里はまた泣きそうな顔をしたので、ちょっと視線をはずす。 診察室を見ると、だいぶ近代的な雰囲気である。 小学校のころの歯医者はもっと怖いイメージがあったのだが、最近は少なくとも見かけはよくなった気がする。 ・・まぁ、香緒里を見ていると、変わったのは見かけがけのようだが・・。 「トレイはずしますねー」 助手はそういうと、香緒里の口からトレイを抜いた。 ピンク色のゴムのようなものに、確かに歯の型が付いている。 助手はそれを持って、奥の方に引っ込んでいった。
- 286 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 11:01 ID:JA0zS8b0
- 「じゃ、この歯は仮詰めしておくから。口あけて」
荻原先生がそういうと、香緒里は弱々しく口を開けた。 助手はまだ戻っていないので、先生が歯を乾かす。 シュッ、シューッ ぎゅっと目を閉じて耐える香緒里。 「口閉じちゃダメよ」 先生はそういって、台の上の棒を火で温め、金属の棒で切って香緒里の口の中に持って行く。 「ちょっと我慢してねー」 そして、穴の開いているところにぎゅっと押しつける。 足がびくんと跳ね、目尻から涙がこぼれる。 「はい、今日はこの歯は終わり・・口ゆすいでいいわよ」 先生はそういうと、器具を台に起き一旦マスクをはずした。 香緒里は、ぼんやりとした目で先生を見て、そして口をゆすいだ。
- 287 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 11:02 ID:JA0zS8b0
- 先生が、立ち上がって手洗い場の方に行く。
どうやら先生もだいぶ疲れたようだ。 「・・大丈夫?」 俺が香緒里に聞くと、香緒里は弱々しい声で 「・・ん、大丈夫」と答えた。 そんなことを話しているうちに、助手を連れて荻原先生が戻ってきた。 「さて、じゃ今度は、前神経取ったとこ見るわね。きれいだったら薬入れ替えるだけだから」 そういうと、マスクをつけて器具を手に取る。 香緒里は、何も言われなくとも口を開いた。 前治療した歯に詰めてある詰め物を、ピンセットで引っかけて取る。 「んー・・元々中で炎症起こしてたみたいね・・」 荻原先生はそういうと、この前の治療で使ったネジのようなものを手に取った。 それを見た香緒里の顔が、すこしこわばる。 「ちょーっと痛いかもしれないけど、麻酔しても変わらないから・・」 そういいながら、針を歯の穴にゆっくりと押し込んでいく。 「んぁっ・・」
- 288 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 11:03 ID:JA0zS8b0
- 先生が、立ち上がって手洗い場の方に行く。
どうやら先生もだいぶ疲れたようだ。 「・・大丈夫?」 俺が香緒里に聞くと、香緒里は弱々しい声で 「・・ん、大丈夫」と答えた。 そんなことを話しているうちに、助手を連れて荻原先生が戻ってきた。 「さて、じゃ今度は、前神経取ったとこ見るわね。きれいだったら薬入れ替えるだけだから」 そういうと、マスクをつけて器具を手に取る。 香緒里は、何も言われなくとも口を開いた。 前治療した歯に詰めてある詰め物を、ピンセットで引っかけて取る。 「んー・・元々中で炎症起こしてたみたいね・・」 荻原先生はそういうと、この前の治療で使ったネジのようなものを手に取った。 それを見た香緒里の顔が、すこしこわばる。 「ちょーっと痛いかもしれないけど、麻酔しても変わらないから・・」 そういいながら、針を歯の穴にゆっくりと押し込んでいく。 「んぁっ・・」
- 289 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 11:03 ID:JA0zS8b0
- 香緒里は痛そうに顔をしかめたが、荻原先生は黙って奥に針を進めていく。
目が真剣そのものだ。 そして、ゆっくりと針を抜く。 「あぁっ・・」香緒里が声を上げるが、お構いなしで次の針を選ぶ先生。 涙がまたこぼれ出すが、手はだらんと下がっている。その手をぎゅっと握る。 そして、また針を入れては抜いていく。先生の目が、険しさを増していく。 「んっ・・んあぁっ」香緒里の声が、静かな診察室に響いていた。 根の治療が一段落したらしく、荻原先生は器具を台においてゆっくりと息を吐いた。 香緒里は、もうぐったりとしている。 先生は、マスクをはずしてゆっくりと説明を始めた。 「えっとね・・この歯は、根の先で炎症起こしてるから、しばらくこの治療繰り返さないとダメだわ。 長期戦になりそうだけど、頑張ってね」 香緒里は、それを聞いて呆然とした顔をした。あの治療を繰り返すのはヤダ、と顔に書いてある。 「・・しばらくって、どのくらいかかるんですか?」 俺が代わりに先生に聞くと、先生は 「それは、香緒里さんの根の具合次第だから・・最低でも後3回ぐらいかかりそうね。 5回以上やってダメなら、歯を抜く方向で考えるけど・・」 といった。
- 290 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 11:05 ID:7moe7J+I
- 盛況だ・・・
こんな時間から萌えてしまうのは危険なので あとでまとめて読もう・・ た、楽しみ〜
- 291 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 11:07 ID:V+X+ZcwC
- 歯を抜く、という言葉を聞いて、蒼白になる香緒里。
それを見た荻原先生は 「19才で歯を抜かなきゃいけないってのはつらいと思うけど、残せないものは仕方ないのよ」 と小さくため息をついた。 重い沈黙が、診察室を包んだ。 「んーと、後どうする?まだ頑張れる?」 荻原先生は、優しい声で香緒里に聞いた。 「・・・」 だが、香緒里は答えない。 「・・どうなんだよ、香緒里」 俺が香緒里に聞くと、香緒里は首を小さく横に振った。 先生は「そう、分かったわ」と優しく言って、助手に予約表を持ってこさせた。 「そうね、土曜日の・・朝でいいかしら?」 先生が言うと、香緒里はこくりと頷いた。 「分かったわ。ただ、仮詰めがとれたら予約の前でも来てね・・もっとも、痛いから言われないでも来てくれるだろうけど」 先生は冗談めかして言ったが、香緒里は小さく頷くだけだった。
- 292 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 11:09 ID:V+X+ZcwC
- >>287-288
2重ゴメン。 昼間っから何やってんだよ俺_| ̄|○
- 293 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 11:35 ID:V+X+ZcwC
- なんか荻原先生がひどい役になっちゃったので、フォロー
「まぁ、今日はゆっくり休んでね。疲れちゃっただろうから。でも、歯磨きは忘れないこと♪」 荻原先生はキャラに合ってない明るい声で言ったが、香緒里はこくんとうなずいただけでよろよろと立ち上がった。 歯医者の外に出ても、香緒里は魂が抜けたようになったままだ。 「香緒里、よく頑張ったね」 俺の方が恥ずかしくなってしまうような言葉をかけても 「・・・」 返事が返ってこない。 「なんか食べてく?」 いつもならすぐに食いついてくる俺のせりふも 「・・いや、いい」 と冷たく返されてしまった。 この後誰かよろしくw
- 294 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 12:25 ID:7moe7J+I
- 乙〜
我慢できずに昼休みに読んでしまった・・ 皆すごいなー、萌えたよ。
- 295 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 16:03 ID:uKP0Qu3f
- 今までの、全部まとめてうpしますた。
壮絶な長文心して読め!。 ttp://www.geocities.co.jp/HeartLand/4796/feti1090221132.txt
- 296 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 17:30 ID:/hARO1Ts
- ラブ小説風に続けさせてください
結局、その日はそのまま家に帰り、食事を取り、忘れずに仕上げ磨きをして寝た。 でも、香緒里は終始元気がなかった。 次の治療の日。 「そろそろ行こうか?」 香緒里に声をかけると、香緒里は首を横に振った。 「ほら、予約の時間に遅刻するぞ」 手を取ると、香緒里はその手を払った。 「・・ヤダ」 香緒里はそういうと、横になった。 「ヤダじゃないだろ、行かないと」 「・・もう痛いのヤダ」 子供のように、首を横に振る香緒里。 「でも、放っておくとまた痛くなるだろ。それはいやだろ?」 諭すようにいうと、こくんと頷く。 「じゃ、我慢して行かないと」 「・・なったことがないから分からないんだよっ!」 香緒里はそう叫ぶと、クッションを俺に投げつけた。
- 297 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 17:34 ID:qJgjbHTk
- 相変わらず気持ち悪い奴が棲み付いているなぁ
- 298 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 17:56 ID:/hARO1Ts
- ショックだった。
香緒里のためを思っていったつもりだったのに、そういわれるとは。 「・・理屈では行かなきゃいけないって分かるけど、でも、でも痛いんだもんっ」 「それは、つらいのは分かるけど・・」 「分かってないよっ!」 また、クッションが飛んでくる。もう、どうでも良くなった。 「・・ならいいよ。キャンセルの電話入れるよ」 受話器を取る。香緒里は、起きあがったがうつむいたままだ。 「・・いいんだな?」 念を押すと、香緒里は力なくうなずいた。 電話をかけると出たのはあのときの助手だった。 「あの、大野ですが、今日は具合が悪いんでキャンセルしたいんですが・・」 「・・少々お待ちください・・大野さん、はい・・あ、先生がお話したいそうですのでかわります」 その言葉のあと、荻原先生のゆっくりとした声が続いた。 「大野さん。痛み止めと炎症止め今日の朝の分までしか出してなかったわよね。あれ切れたら痛みが出ちゃうわ」 「・・先生」 先生の声は全て分かったような声だった。
- 299 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 17:57 ID:/hARO1Ts
- 「あ、彼の方だったのね・・無理に治療はしないから、薬だけでも取りに来てって伝えて。
薬持って帰るだけでいいわ。本人にしか処方できない決まりだから・・ね」 「・・はい、伝えます・・すみません、ご迷惑かけて・・」 「いいわよ、そんなの。仕方ないわよ・・じゃ、待ってるわ」 先生はそういうと、電話を切った。 「・・香緒里。無理に治療はしないから、薬だけ取りにきてって。そのままじゃ痛くなるよ」 「・・ヤダ」 香緒里はうつむいたまま首を振った。 「薬取りに行くだけだって。治療しないって先生もいってくれたし」 「・・でもヤダ」 先生がせっかく言ってくれてるのに、香緒里はそれすらいやがった。 「痛くなっても知らないからな」 そう言って、俺は気晴らしのドライブをしに外へ出た。
- 300 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 18:04 ID:0lj8bFNt
- >>297
激しく胴囲!だれか296を医者(シャーマンでもいい) に通報してくれ・・・。
- 301 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 18:08 ID:0lj8bFNt
- 300は296・298・299に訂正。
- 302 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 18:11 ID:/hARO1Ts
- 走り続けて、もう日がかげり始めていた。
なぜかまた、彼女の家まで戻ってきていた。 先生の言っていたことだと、もうそろそろ痛みが出ているだろう。 心配になって、電話をしてみた。 「・・香緒里?」 声をかけると 「・・ゴメン、ホントにゴメン」 香緒里の声が返ってきた。ちょっと涙声だ。 「・・俺も、出てってゴメン」 「・・寂しかった・・戻ってきてよ・・」 「今戻るよ」 そういうと、俺は香緒里の部屋のドアを開けた。 「ただいま」 俺がそういうと、香緒里は涙で濡れた目をこっちに向けた。 「・・歯、痛くなってない?」 俺が聞くと香緒里は力なく「・・痛い」と答えた。 「・・薬だけ、取りに行こうよ」 俺が言うと、彼女は力なく頷いた。
- 303 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 18:15 ID:7moe7J+I
- お、新展開
書いてくれた人も、まとめてくれた人も乙。 俺は続き楽しみにしてるぞー
- 304 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 18:18 ID:7moe7J+I
- IDがmoeなのがなんとも・・
実は「番外編・萩原先生」を作ったんだが、 気持ち悪いとか言われるからうpはやめとくかな
- 305 :295:04/09/06 18:40 ID:uKP0Qu3f
- まとめ更新。
ついでにフレーム化した。 http://www.geocities.co.jp/HeartLand/4796/feti/
- 306 :295:04/09/06 18:41 ID:uKP0Qu3f
- 訂正
http://www.geocities.co.jp/HeartLand/4796/feti/index.htm
- 307 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 18:46 ID:/hARO1Ts
- 歯医者につくと、もう看板の明かりは消えていた。
「・・もう閉じちゃったのかな」 俺が言うと、香緒里は心配そうに手をぎゅっと握る。 とりあえずドアを押してみると、鍵はかかってなく、すっと開いた。 「あの・・」 俺と香緒里がおそるおそる中にはいると、 「待ってたわ、大野さん」 荻原先生の声がした。 「あ、あのっ」 「ごめんなさいっ」 俺が挨拶をしようとしたら、香緒里が深々と頭を下げた。 すると先生は笑って「いいのよ、別に」と言って、薬の袋を差し出した。 会計を済ませようとすると、もう助手もみんな帰ってしまったようで、先生が会計を打った。 ・・香緒里のために待っていてくれたようだ。申し訳ない。 「ちょっと話があるんだけど、いい?」 会計を済ませて、もう一度謝ってから帰ろうとすると、先生がそう言った。 「あ、はい・・」 香緒里が先生の方に歩いていったので、俺も追いかける。 「じゃ、ここに座ってよ」先生が長いすに腰掛けて、そういう。 先生、香緒里、俺、と、待合室の長いすに座った。
- 308 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 18:47 ID:/hARO1Ts
- 「・・私、分かるんだよね。香緒里ちゃんの気持ち」
先生は遠い目をして語り出した。 「私も、昔は香緒里ちゃんみたいなダメ患者で・・痛くなったら痛み止め、効かなくなったら歯医者。 で、痛みが止まったら通うのやめて、また痛くなるの」 香緒里は、驚いたような目で先生を見た。俺も、先生にそんな経験があるなんて信じられなかった。 「歯が丈夫な人はさ、放っておいてもつらくなるだけだから我慢して行けって言うんだけどね、分かってても行きたくなくて・・ だって、治療痛いもんね」 そういうと先生はふっと笑った。 「でもさー・・高校2年の時だったかな・・治療した先生がさ。私にこんこんと説教してくれてねー・・今香緒里ちゃんの担当してる先生だけどね」 「えっ・・」 俺は思わず声を上げた。あの先生が・・ 「意外でしょ?・・ま、そのとき必死で通って、で、歯医者になろうって決めたんだけどね」 香緒里が先生を見ると、先生は 「そんなわけで、今あなたにこんな話をしてるのよ。つらいのは分かる・・でも、ここで何とかしようよ。私も精一杯やるし」 そういって、香緒里の肩をぽんぽんと叩いた。 「・・分かりました」 香緒里は、先生の方を向いてそう言った。 「それじゃ、次の予約月曜に入れておくから」 だが、先生がそういうと、香緒里は不安そうに目を泳がせた・・。
- 309 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 18:49 ID:/hARO1Ts
- ・・なんか、いつの間にか青春ものみたいに・・。
誰か、続けづらいだろうけど続けて!w
- 310 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:00 ID:7moe7J+I
- あ、萩原先生の過去だ。
俺が作ったのとちと違う・・・ ここはちょっと目をつぶってもらって、勝手に萩原編をうp。 萩原佳奈子、29歳。 都内の歯科医院で働く、歯科医である。 卒業後、臨床一筋でやってきたので、キャリアは5年目ながら、 生来の手先の器用さもあって、今では院長にもその腕を認められていた。 ただ、佳奈子は、少々厳しいことでも有名だった。 「どうしてもっと早く来ないの。こんなになるまで放っておいて!」 「ちゃんと歯は磨いてるの。もっと大事にしないとダメ。」 患者に、つい、小言を言ってしまうのだった。 しかし、これには理由があった・・・
- 311 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:07 ID:7moe7J+I
- 元々、佳奈子はあまり歯が丈夫なほうではない。
子供のころは、よく歯が痛くて泣いていたものだ。 小学校に上がり、引っ越した近所の歯科医院は、当時には珍しく、 予防歯科に熱心な医師で、乳歯が虫歯だらけの佳奈子を 根気強く指導し、おかげで、永久歯になった佳奈子の口の中は、 見違えるように綺麗になった。 惜しいのは、幼稚園のときに、生えてすぐに虫歯にしてしまった6歳臼歯だが、 この歯も、上の2本は、アマルガム充填から2次齲蝕を起こし、 銀のインレーが入れられているものの、 下2本は上手にレジンが詰められており、 歯科検診でも、ほぼ、健全歯と判定されるほどであった。
- 312 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:11 ID:7moe7J+I
- 永久歯は、生えて数年は、虫歯にかかる危険が高いが、
それを乗り切れば、虫歯の危険はぐっと低くなる。 3ヶ月に1度通っていた予防歯科も、中学を卒業するころには、半年で1度の検診だけになった。 周囲の友人たちには、佳奈子は歯が綺麗、と褒められるようになっていた。 いつしか、佳奈子は、自分の歯が丈夫でないと言うことを忘れていた。 身についた丁寧な歯磨きだけは続いていたが、 部活や勉強が忙しく、つい、歯科からの検診のおしらせハガキを見逃してしまった。 高3の夏休みも終わろうとする頃。 朝、歯を磨いていた佳奈子は、左上の前歯の間が、少し白濁していることに気が付いた。 「やだ・・・虫歯?」 そういえば、奥歯は虫歯にならないように、と丁寧に磨いていたが、 前歯は虫歯になりにくいような気がして、少し手を抜いていたかもしれない・・・ ミラーで見ようかと思ったが、急がないと夏期講習に間に合わない。 佳奈子は医学部を目指していた。夏休みは重要なのだ。 そうして、前歯のことは、忙しい日々にまぎれていった。
- 313 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 19:14 ID:/hARO1Ts
- を、萩原先生のストーリーキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
・・そういえば、萩原先生と荻原先生といるねw 今まで気がつかなかったw
- 314 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:17 ID:7moe7J+I
- 時は経ち、大学入試を1週間後に控えた、冬の日のことだった。
家を出て、口から深呼吸をした、そのとき。 「前歯が、しみ・・る・・?」 気になって、何度も歯につめたい風を当ててみる。 最初、少し痛いような気がしたが、そのうち、気のせいか、と思えてきた。 夏休みに、白濁を見つけたことなど、忘れていた。 入試が近づいて、ナーバスになっているのだろう。なにより、歯医者に行くような暇はないのだ。 そうしてまた、前歯の虫歯は、ひっそりと佳奈子の意識下に潜ったのだった。
- 315 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:19 ID:7moe7J+I
- 佳奈子は大学生になった。医学部は落ちてしまったが、歯学部には見事合格し、
歯医者を目指して勉強することになった。 念願の一人暮らしも始め、昼間は授業、バイト、夜は飲み会、と、充実した日々を送っていた。 しかし、歯にとっては過酷な日々だった。 栄養はどうしても偏りがちになるし、お昼をお菓子で済ませることもあった。 昔からは考えられないことだったが、夜、飲み会で酔ってしまい、家に帰って歯も磨かずに 寝てしまうこともあった。 そんな初夏のある日。いつものように、友人たちと飲みに出かけ、 「暑いときはこれに限る」とばかりに、冷たいビールに口をつけた瞬間だった。
- 316 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:25 ID:7moe7J+I
- 「っ!!」
佳奈子の前歯に激痛が走った。思わずグラスを取り落とす。 「どうしたの?」 心配して見つめる友人たちに、 「あはは、手がすべっちゃった」 と笑ってごまかしてみせた。歯学部の友人に、歯が痛いとは、言えなかった。 その夜、早めに帰宅した佳奈子は、鏡の前で、おそるおそる口を開いた。 いーっ、とやってみる。 左上前歯、1番と2番の間に、かすかに茶色い点が見えた。 歯がぴっちりと綺麗に並んで生えている佳奈子の歯では、間の様子はそれ以上見えない。 そこから周囲に向かって、ややうっすら黒い?ような気がしたが、 洗面所のやや薄暗い光の下では、鏡から遠ざかってみると、きれいな歯に見えた。
- 317 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:27 ID:7moe7J+I
- 少しホッとしながら、裏側もチェックしてみることにする。
予防歯科でもらったミラーは、実家に置いて来てしまった。 仕方なく、ポーチから手鏡を持ってきて、歯の裏に当ててみた。 歯の裏側を、鏡にうつしてみると・・・ 歯の間が、真っ黒になっていた。黒ずみは、両方の歯の中心近くまで広がっている。 動悸が激しくなるのを感じた。 「そんな・・・」 前から見ると、ほとんどなんともないのだ。 もう一度、鏡にうつす。間違いであってほしいと願ったが、やはり、黒かった。 爪でこすってみても、取れない。そのうえ、爪に少し、ひっかかりを感じた。 顔を近づけ、目をこらすと、1番の方には、小さな穴も開いている。 間違いなく、虫歯だった。
- 318 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:33 ID:7moe7J+I
- 「どうしよう・・」
母親の、差し歯が目に浮かぶ。歯はやけに白いが、歯ぐきがやや黒ずんでいて、 佳奈子はそれを見るたびに、「差し歯にだけはなりたくない」と思っていたのだった。 それなのに・・・ 佳奈子の目から、涙がこぼれた。 前から見たら、なんともないのだから、案外大したことはないのかもしれない。 早く歯医者に行って、治してもらおう。 そう思うものの、もし、差し歯になってしまったら、と思うと、怖くて決心がつかなかった。 その夜、歯医者に行く夢を見た。 「差し歯にするしかないですね。」と言われたうえ、気が付くと、乳歯の頃のような、 虫歯だらけの口に戻っていた。予防歯科の歯医者が、悲しそうな顔で見ている。 目が覚めて、佳奈子は、泣いていた。
- 319 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:37 ID:7moe7J+I
- 結局、歯医者には、行かなかった。怖かったのだ。
バイトや授業で忙しい、と言い訳をしながら。 飲み会は少し減らし、 今さら遅いとわかっていながら、歯磨きも念入りにやった。 相変わらず、冷たいものがあたると激痛が走ったが、 うまく、右側を通して流し込む術もおぼえ、夏が過ぎていった。 秋になるころ、佳奈子の2番目の前歯は、光の当たり方によっては、黒ずみが表からも見えるようになっていた。 鏡を見ては、ため息をつく日々だった。疲れてくると、たまに痛むような気もした。
- 320 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:45 ID:7moe7J+I
- ある日、前期の試験の打ち上げがあった。
クラスの面々だけでなく、授業で教授のアシスタントをしていた、紺野という若い歯科医も参加していた。 紺野は、しゃべり方も穏やかで、小児歯科を目指している、と言っていた。 クラスメイトの間では、やや物足りない、少し年上すぎる、という意見が多かったが、 佳奈子は、少し紺野を意識して、女のクラスメイトたちと、彼の近くに座った。 実際に飲み会で話してみると、紺野は意外とおもしろく、佳奈子はますます彼が気になっていた。 そのとき。向かいに座っていた由美子が、突然、 「佳奈子。いーってしてみて?」 と言い出した。 「前歯、黒くなってる気がして。虫歯じゃないの?前歯は早く治したほうがいいよ。」 佳奈子は思わずびくっとして、 「何よ。変なこと言わないでよ」 と言ってしまった。紺野の前でそんなことを言われたのが、たまらなかった。 「別に、そんなつもりじゃなかったんだけど。ごめんごめん」 由美子は屈託なく笑い、別の話題にさっさと移っていった。 動悸が激しくなっていた。
- 321 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:53 ID:7moe7J+I
- 飲み会の帰り、気を利かせたクラスメイトたちは、佳奈子と紺野を残し、カラオケに行ってしまった。
「一緒に行きましょうか?暗いし。」 紺野は、佳奈子と一緒に歩き出した。 教授のうわさや、高校のことなど、当たり障りのない話をして、歩いていった。 「ところで。」 大学の門のそばの街灯の下で、紺野は立ち止まった。 「さっきのことだけど。」 佳奈子は、なに?という顔をしてみせた。 「前歯、早く治したほうがいいよ。けっこう進んでると思う。」 すうっと血の気が引いた。気付かれていた。よく考えると、紺野は歯科医だ。気付かないわけはなかった。 「見せてごらん」 逃げそうになる佳奈子の手首をつかむ。 「放っておくほど、虫歯は悪くなるんだから。」 諭されるように言われ、佳奈子は体の力を抜いた。おとなしく、少し上を向く。
- 322 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:57 ID:7moe7J+I
- 紺野の指が、佳奈子の唇をめくった。
「あぁ。痛むんじゃない?これは。」 佳奈子が首を振る。「しみる、くらいです」 「・・・そう。もうちょっとちゃんと診たいんだけど、今、いいかな? 研究室のところに、ちゃんとユニットもある。僕はほとんど飲んでないし、診るだけだから大丈夫だよ」 予想外の展開に、佳奈子は体を固くした。 「歯医者が怖いかもしれないけど、僕も怖いかな。平気でしょ?」 紺野は優しく言って、微笑みかける。 さすが小児歯科を目指すだけあって、話の持って行き方がうまかった。これでは、頷かざるを得ない。 「じゃ、行こうか」 こんなふうに、二人きりになろうとは。 建物をカードキーで開けて入っていく紺野に着いて行きながら、紺野に歯を見られて恥かしい気持ちと、 ようやく治療ができるという安心感と、差し歯への恐怖感に、少し混乱していた。
- 323 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:01 ID:7moe7J+I
- 「ここだよ。どうぞ。」
紺野に招き入れられた部屋の真ん中には、歯科医の椅子が置かれていた。 「口、ゆすいでいいですか」 さすがに、飲み会の後の口の中をそのまま見せるのはイヤだった。 「あぁ、そこに座って、ユニットのを使って。コップは・・はい、これ。」 使い捨てのコップを渡された。 佳奈子は靴を脱いで、ユニットに上がり、口を丁寧にゆすいだ。 「じゃ、いいかな?」 滅菌器から器具を取り出した紺野が、横に座る。 「はい。お願いします。」 佳奈子が答えると、紺野はちょっと微笑んで、椅子のスイッチを押した。 うぃーーーん。 椅子が倒されていく。 「じゃ、ちょっと見せてね。とりあえず、あーん」 ミラーを手にした紺野に促され、佳奈子は口を開く。 「うん、だいたい綺麗だね。小さい虫歯が1,2本あるけど、大丈夫。綺麗な歯だよ。」 ほめられて、佳奈子は少し力を抜いた。
- 324 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 20:12 ID:Sb9IXeKW
- やべー、本編に安易に萩原先生の過去入れるんじゃなかった。
すごい本格的だよー・・。
- 325 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:14 ID:7moe7J+I
- 「じゃ、前歯見るよ。」
ミラーが前歯の内側に当てられた瞬間、紺野の顔が少し険しくなった。 「うーん。これは思ったより進んでるね。前から見るよりも、裏はかなりひどいよ。」 佳奈子の顔が歪む。 台の上の探針に手を伸ばしかけた紺野が、佳奈子の表情に気付いた。 「まだ、怖いのかな?」 佳奈子は、思い切って言ってみた。 「歯医者が怖いんじゃないんです。予防歯科に通ってて、慣れてるから。ただ・・」 「ああ、歯は綺麗だったものね。ただ、どうしたの?」 「差し歯・・差し歯になるのが怖くて」 佳奈子はすがるような目で、紺野を見た。 ふう、ため息をつき、紺野はミラーを置いた。 椅子も起こされ、佳奈子は紺野と向かい合う形になった。
- 326 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:18 ID:7moe7J+I
- 「えっと・・萩原・・・佳奈子ちゃん、だっけ。」
「はい。」 「はっきり言うね。」 「ハイ。」 緊張した雰囲気に、佳奈子の声が震える。 「残念だけど、この前歯は、差し歯になるのは避けられないと思う。」 佳奈子は、頭を殴られたような気がした。 心のどこかで覚悟はしていたが、現実を突きつけられると、やはり、辛かった。 「あと2ヶ月早ければ、差し歯にせずに治せたかもしれないけど」 2ヶ月。やっぱり、あの、激痛が走ったときに歯医者に行っていればよかったのだ。 後悔で、涙がじわっとあふれてきた。
- 327 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:22 ID:7moe7J+I
- 「ただね。差し歯って、たぶん、お母さんか何かのを想像してると思うんだけど、
あの、ふちが黒くなってて、変に白い、あれ。」 こくり、と佳奈子が頷く。 「最近のは、もっと見た目も自然なのがちゃんと作れるんだよ。 だから、そんなに怖がらなくてもいい。」 心をほぐすように、紺野が続ける。 「ほら、僕もここ、差し歯なんだけど」 右上1番を指差し、にっ、と笑う。 それは、周りの歯と見分けがつかなかった。 「えっ・・わからなかった・・虫歯ですか?」 「僕は、スキーでぶつかって折れちゃったんだけどね。かっこ悪いだろ?」 微笑む紺野に、佳奈子もつられて笑った。 「でも、虫歯も、根っこさえちゃんと残ってれば、 差し歯はかっこ悪くないのができるから。大丈夫。ね?」 佳奈子は頷いた。 差し歯になるのは、まだやっぱりショックだったが、あの差し歯にはならないのだ、 と思うと、少し気が楽になった。
- 328 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:27 ID:7moe7J+I
- 「じゃあ、ちゃんと治療できるね?」
はい、と答えたものの、こちらでは、いい歯医者がどこかわからない。 「あの・・大学病院でも診てもらえるんですか?」 と聞いた。 「ああ、もちろん。学生はほとんど無料で治療できるよ。 教授には紹介が必要だけど、僕でかまわなければ、僕が診るよ。」 好意とは別に、さっきからの様子に、紺野に診てもらえれば、安心できる気がした。 「お願いします。」 佳奈子がそう言うと、 「じゃあ、さっそく、明日の朝、病院の方に来て。」 と、紺野が指示する。 しかし、明日は友達と遊びに行く約束だった。 「大学は休みでしょ?それに、1番の歯、そろそろ痛み出すと思うから、早いほうがいいよ。 前歯の痛みは辛いらしいし、痛みが出たら、根の状態も急に悪くなるしね。」
- 329 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:31 ID:7moe7J+I
- 痛いくらいなら、ま、我慢すればいいわ。
差し歯への恐怖が薄れた佳奈子は、根の話は耳に入らなかった。 結局、地元から友達が出てくる、と言って、治療はその次の日に延ばしてもらった。 紺野は、心配だったのか、 「痛くなったら連絡して。」 と、携帯と、構内の内線電話の番号をくれた。 次の日。このところ、気にかかっていた前歯のこともやや進展し、試験も終わって、 佳奈子は、ひさしぶりに、晴れ晴れとした気分で遊んでいた。 夜、シャワーを浴びていると、トクン、トクン、と、脈にあわせて、 1番の前歯に、少し不快感が出てきた。 「ん・・・まあ、痛いわけじゃないし。」 と、そのまま眠りについた。
- 330 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:38 ID:7moe7J+I
- ・・・ドクン、ドクン、ドクン、ズキン!ズキン!
佳奈子は、歯の痛みで目が覚めた。時計を見ると、5時だった。 叫び出したくなるような痛みではなかったが、頭が痛くなってくる。 「はあ。紺野先生、怒るかなあ」 早いほうがいい、と言っていた、紺野の顔を思い浮かべた。 「あ、そうだ、電話!」 さすがに早すぎると思い、6時まで待ってから、紺野に電話をかける。 「はい。」 「あの・・萩原ですけど。起こしちゃいましたか?」 「ああ、佳奈子ちゃんね。もう起きてるよ。どうしたの?痛み出した?」 「・・・はい。」ほらみろ、と言われるかと思ったが、 「大丈夫?我慢できる?治療は8時からだけど、7時半から開いているから、早めにおいで。」 優しく言われただけだった。
- 331 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:48 ID:7moe7J+I
- 7時半に行ってみると、紺野はすでに待っていた。
マスク姿を見るのは初めてだ。少し怖い感じに思える。 言われるままに、レントゲンを撮りに行き、戻って、ユニットに座る。椅子が倒された。 「はい、見せてごらん」 おとなしく口を開ける。 「あー、これは痛いね。でも、ちょっと我慢してくれる。」 と言うと、指で、1番をとんとん、と叩いた。 「っうぅぅ」 歯だけでなく、目の奥まで痛みが走り抜けた。 「もっかい」 次に、2番を叩いた。 今度は、歯の中がぼわん、と痛んだだけだった。 「どうかな。」 佳奈子が痛みかたを伝えると、今野は、難しい顔になった。 「うーん。とりあえず、こっちの1番からやろう。削って、ちょっと根の状態を確認するね。」 目で頷く。
- 332 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:14 ID:7moe7J+I
- 根の状態?佳奈子は、なにか大事なことだったような気がして、
一生懸命考えていた。 先日の夜とは違って、今日は、衛生士や助手もたくさんいる。 助手が、麻酔のシリンジを、紺野に手渡した。 「はい。ちくっとするけど、我慢して。」 しばらくして、麻酔が効くのを待って、治療が始まった。 「見にくいから、視野確保して。リトラクター。」 「はい。」 佳奈子の唇に、プラスチックの器具がはめられた。口が大きく開けられ、歯茎がむき出しになる。 「!」 恥かしい、と思って、紺野の顔をとっさに見たが、 紺野は、真剣な顔で、タービンにチップを装着し、佳奈子の目を見て、大丈夫だよ、というふうに微笑むと、 チュイーン と音をさせて、佳奈子の歯を削りにかかった。
- 333 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:22 ID:7moe7J+I
- キュイーン、キュィーン。
まずは、1番と2番の間から。次に、裏側へ。進むにつれ、紺野の顔が険しくなる。 「んー、思ったよりも中に進んじゃってるなあ。痛いけど、我慢してね・・」 佳奈子の脚がもぞもぞしているのに気付いてか、紺野は釘をさすように言った。 「ああぁぁぁん、あああぁ、あぁぁ!」 佳奈子が泣き出した。 「ん、もうやめるから」 すぐに、タービンの音が消えた。 「よく頑張ったね。」 紺野はなぐさめながら、泣きじゃくっている佳奈子の口から、リトラクターをはずした。 透明な唾液が、つーっ、と糸を引く。 「とりあえず、口ゆすいで。」 椅子を起こす。
- 334 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:29 ID:7moe7J+I
-
思ったよりも、削る時間は短かったな・・・<BR> 舌で確かめてみると、意外と穴も小さいようだ。佳奈子はホッとした。<BR> 口をゆすいで、姿勢を戻すと、紺野が、マスクを顎にはずし、佳奈子の方を見ていた。<BR> 「1番の、治療なんだけどね。」<BR> 少し、厳しい顔で話し始める。<BR> 「思っていたより、深くまで進んでるんだよ。2番の方が、前も黒くなっていて気になっただろうけど、<BR> 1番は、虫歯が中に向かって進んでいたんだね。こっちの方が、ひどい虫歯だよ。」<BR> どうやら、深刻な話だ。佳奈子は体を固くして、頷く。<BR> 「で、今、ちょっと削ってみたんだけれど、中が大きくやられてる。おそらく、根っこまで。」<BR> 根っこ。佳奈子は突然思い出した。<BR> “根っこさえちゃんと残ってれば、差し歯にできる。”と、紺野が言っていたのだった。<BR> じゃあ、根っこがない場合は・・?
- 335 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:31 ID:7moe7J+I
- ん?昨日のにもこんなのあったけど、何だコリャ
思ったよりも、削る時間は短かったな・・・ 舌で確かめてみると、意外と穴も小さいようだ。佳奈子はホッとした。 口をゆすいで、姿勢を戻すと、紺野が、マスクを顎にはずし、佳奈子の方を見ていた。 「1番の、治療なんだけどね。」 少し、厳しい顔で話し始める。 「思っていたより、深くまで進んでるんだよ。2番の方が、前も黒くなっていて気になっただろうけど、 1番は、虫歯が中に向かって進んでいたんだね。こっちの方が、ひどい虫歯だよ。」 どうやら、深刻な話だ。佳奈子は体を固くして、頷く。 「で、今、ちょっと削ってみたんだけれど、中が大きくやられてる。おそらく、根っこまで。」 根っこ。佳奈子は突然思い出した。 “根っこさえちゃんと残ってれば、差し歯にできる。”と、紺野が言っていたのだった。 じゃあ、根っこがない場合は・・?
- 336 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:36 ID:7moe7J+I
- お、大丈夫だ
ワードから貼り付けてんだけど・・ま、いいや、続き 「だから、1番は抜かなきゃならないよ。」 歯を抜かないといけない。しかも、前歯を。自分が虫歯にしてしまったせいで。 歯医者に行かずに、放っておいたせいで。 頭がくらくらした。 「あの・・じゃあ、差し歯は・・」 「そう。差し歯にはできないんだ。」 「入れ歯・・・?」佳奈子は、涙声になっていた。 「大丈夫。入れ歯にはならないよ。ブリッジって言って、両端の歯にかぶせ物をして、 その歯で支えるように、つないで歯を入れる。」 父親の奥歯にあった、3連の銀歯を思い出した。 「見た目は・・?」 「それは、普通の差し歯とおんなじだよ。心配いらない。」 佳奈子は、黙ってしまった。
- 337 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 21:43 ID:siUjlSVV
- 今後は、こっちでどうぞ。
えっちねたロビー http://sakura01.bbspink.com/hneta/
- 338 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 21:50 ID:Sb9IXeKW
- >>337
行為はしてないだろ。フェチ板でいいはずだ。
- 339 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:56 ID:7moe7J+I
- 「まだ18歳だし、歯を抜かないといけないのは、つらいだろうけど・・・」
紺野が静かに言う。 「抜かなきゃいけなくなったのは、しょうがないんだ。きっちり治すから。佳奈子ちゃんも頑張ろう。」 佳奈子は、こくり、と頷いた。 「何か、聞きたいことはない?」 「抜いた後・・歯抜けにはならないですよね?」 「ああ、そりゃ、気になるよね。」紺野は笑った。 「大丈夫、仮の歯を作ってはめるから。案外、よくできてるよ。ぱっと見わからないくらい。」 「両端の歯って、右の1番と、左の2番ですか。右の1番は、なんともないんですけど・・」 紺野の顔から、微笑が消えた。 「うん、それはしょうがないんだ。なんともない歯を削るのは悲しいだろうけど、 ブリッジの端の歯には、真ん中の歯の分も力がかかるから、負担がかかる。 右の1番はしっかりしてるから、その点、大丈夫。」 一瞬、佳奈子の顔に浮かんだ不安をさえぎるように、紺野が続ける。
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