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虫歯&銀歯の女の子
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虫歯&銀歯の女の子
- 1 :名無しさん@ピンキー:04/07/19 16:12 ID:8MZmTy88
こんな子に激しく萌えます http://up.nm78.com/data/up047068.jpg
- 301 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 18:08 ID:0lj8bFNt
300は296・298・299に訂正。
- 302 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 18:11 ID:/hARO1Ts
走り続けて、もう日がかげり始めていた。 なぜかまた、彼女の家まで戻ってきていた。 先生の言っていたことだと、もうそろそろ痛みが出ているだろう。 心配になって、電話をしてみた。 「・・香緒里?」 声をかけると 「・・ゴメン、ホントにゴメン」 香緒里の声が返ってきた。ちょっと涙声だ。 「・・俺も、出てってゴメン」 「・・寂しかった・・戻ってきてよ・・」 「今戻るよ」 そういうと、俺は香緒里の部屋のドアを開けた。 「ただいま」 俺がそういうと、香緒里は涙で濡れた目をこっちに向けた。 「・・歯、痛くなってない?」 俺が聞くと香緒里は力なく「・・痛い」と答えた。 「・・薬だけ、取りに行こうよ」 俺が言うと、彼女は力なく頷いた。
- 303 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 18:15 ID:7moe7J+I
お、新展開 書いてくれた人も、まとめてくれた人も乙。 俺は続き楽しみにしてるぞー
- 304 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 18:18 ID:7moe7J+I
IDがmoeなのがなんとも・・ 実は「番外編・萩原先生」を作ったんだが、 気持ち悪いとか言われるからうpはやめとくかな
- 305 :295:04/09/06 18:40 ID:uKP0Qu3f
まとめ更新。 ついでにフレーム化した。 http://www.geocities.co.jp/HeartLand/4796/feti/
- 306 :295:04/09/06 18:41 ID:uKP0Qu3f
訂正 http://www.geocities.co.jp/HeartLand/4796/feti/index.htm
- 307 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 18:46 ID:/hARO1Ts
歯医者につくと、もう看板の明かりは消えていた。 「・・もう閉じちゃったのかな」 俺が言うと、香緒里は心配そうに手をぎゅっと握る。 とりあえずドアを押してみると、鍵はかかってなく、すっと開いた。 「あの・・」 俺と香緒里がおそるおそる中にはいると、 「待ってたわ、大野さん」 荻原先生の声がした。 「あ、あのっ」 「ごめんなさいっ」 俺が挨拶をしようとしたら、香緒里が深々と頭を下げた。 すると先生は笑って「いいのよ、別に」と言って、薬の袋を差し出した。 会計を済ませようとすると、もう助手もみんな帰ってしまったようで、先生が会計を打った。 ・・香緒里のために待っていてくれたようだ。申し訳ない。 「ちょっと話があるんだけど、いい?」 会計を済ませて、もう一度謝ってから帰ろうとすると、先生がそう言った。 「あ、はい・・」 香緒里が先生の方に歩いていったので、俺も追いかける。 「じゃ、ここに座ってよ」先生が長いすに腰掛けて、そういう。 先生、香緒里、俺、と、待合室の長いすに座った。
- 308 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 18:47 ID:/hARO1Ts
「・・私、分かるんだよね。香緒里ちゃんの気持ち」 先生は遠い目をして語り出した。 「私も、昔は香緒里ちゃんみたいなダメ患者で・・痛くなったら痛み止め、効かなくなったら歯医者。 で、痛みが止まったら通うのやめて、また痛くなるの」 香緒里は、驚いたような目で先生を見た。俺も、先生にそんな経験があるなんて信じられなかった。 「歯が丈夫な人はさ、放っておいてもつらくなるだけだから我慢して行けって言うんだけどね、分かってても行きたくなくて・・ だって、治療痛いもんね」 そういうと先生はふっと笑った。 「でもさー・・高校2年の時だったかな・・治療した先生がさ。私にこんこんと説教してくれてねー・・今香緒里ちゃんの担当してる先生だけどね」 「えっ・・」 俺は思わず声を上げた。あの先生が・・ 「意外でしょ?・・ま、そのとき必死で通って、で、歯医者になろうって決めたんだけどね」 香緒里が先生を見ると、先生は 「そんなわけで、今あなたにこんな話をしてるのよ。つらいのは分かる・・でも、ここで何とかしようよ。私も精一杯やるし」 そういって、香緒里の肩をぽんぽんと叩いた。 「・・分かりました」 香緒里は、先生の方を向いてそう言った。 「それじゃ、次の予約月曜に入れておくから」 だが、先生がそういうと、香緒里は不安そうに目を泳がせた・・。
- 309 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 18:49 ID:/hARO1Ts
・・なんか、いつの間にか青春ものみたいに・・。 誰か、続けづらいだろうけど続けて!w
- 310 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:00 ID:7moe7J+I
あ、萩原先生の過去だ。 俺が作ったのとちと違う・・・ ここはちょっと目をつぶってもらって、勝手に萩原編をうp。 萩原佳奈子、29歳。 都内の歯科医院で働く、歯科医である。 卒業後、臨床一筋でやってきたので、キャリアは5年目ながら、 生来の手先の器用さもあって、今では院長にもその腕を認められていた。 ただ、佳奈子は、少々厳しいことでも有名だった。 「どうしてもっと早く来ないの。こんなになるまで放っておいて!」 「ちゃんと歯は磨いてるの。もっと大事にしないとダメ。」 患者に、つい、小言を言ってしまうのだった。 しかし、これには理由があった・・・
- 311 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:07 ID:7moe7J+I
元々、佳奈子はあまり歯が丈夫なほうではない。 子供のころは、よく歯が痛くて泣いていたものだ。 小学校に上がり、引っ越した近所の歯科医院は、当時には珍しく、 予防歯科に熱心な医師で、乳歯が虫歯だらけの佳奈子を 根気強く指導し、おかげで、永久歯になった佳奈子の口の中は、 見違えるように綺麗になった。 惜しいのは、幼稚園のときに、生えてすぐに虫歯にしてしまった6歳臼歯だが、 この歯も、上の2本は、アマルガム充填から2次齲蝕を起こし、 銀のインレーが入れられているものの、 下2本は上手にレジンが詰められており、 歯科検診でも、ほぼ、健全歯と判定されるほどであった。
- 312 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:11 ID:7moe7J+I
永久歯は、生えて数年は、虫歯にかかる危険が高いが、 それを乗り切れば、虫歯の危険はぐっと低くなる。 3ヶ月に1度通っていた予防歯科も、中学を卒業するころには、半年で1度の検診だけになった。 周囲の友人たちには、佳奈子は歯が綺麗、と褒められるようになっていた。 いつしか、佳奈子は、自分の歯が丈夫でないと言うことを忘れていた。 身についた丁寧な歯磨きだけは続いていたが、 部活や勉強が忙しく、つい、歯科からの検診のおしらせハガキを見逃してしまった。 高3の夏休みも終わろうとする頃。 朝、歯を磨いていた佳奈子は、左上の前歯の間が、少し白濁していることに気が付いた。 「やだ・・・虫歯?」 そういえば、奥歯は虫歯にならないように、と丁寧に磨いていたが、 前歯は虫歯になりにくいような気がして、少し手を抜いていたかもしれない・・・ ミラーで見ようかと思ったが、急がないと夏期講習に間に合わない。 佳奈子は医学部を目指していた。夏休みは重要なのだ。 そうして、前歯のことは、忙しい日々にまぎれていった。
- 313 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 19:14 ID:/hARO1Ts
を、萩原先生のストーリーキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! ・・そういえば、萩原先生と荻原先生といるねw 今まで気がつかなかったw
- 314 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:17 ID:7moe7J+I
時は経ち、大学入試を1週間後に控えた、冬の日のことだった。 家を出て、口から深呼吸をした、そのとき。 「前歯が、しみ・・る・・?」 気になって、何度も歯につめたい風を当ててみる。 最初、少し痛いような気がしたが、そのうち、気のせいか、と思えてきた。 夏休みに、白濁を見つけたことなど、忘れていた。 入試が近づいて、ナーバスになっているのだろう。なにより、歯医者に行くような暇はないのだ。 そうしてまた、前歯の虫歯は、ひっそりと佳奈子の意識下に潜ったのだった。
- 315 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:19 ID:7moe7J+I
佳奈子は大学生になった。医学部は落ちてしまったが、歯学部には見事合格し、 歯医者を目指して勉強することになった。 念願の一人暮らしも始め、昼間は授業、バイト、夜は飲み会、と、充実した日々を送っていた。 しかし、歯にとっては過酷な日々だった。 栄養はどうしても偏りがちになるし、お昼をお菓子で済ませることもあった。 昔からは考えられないことだったが、夜、飲み会で酔ってしまい、家に帰って歯も磨かずに 寝てしまうこともあった。 そんな初夏のある日。いつものように、友人たちと飲みに出かけ、 「暑いときはこれに限る」とばかりに、冷たいビールに口をつけた瞬間だった。
- 316 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:25 ID:7moe7J+I
「っ!!」 佳奈子の前歯に激痛が走った。思わずグラスを取り落とす。 「どうしたの?」 心配して見つめる友人たちに、 「あはは、手がすべっちゃった」 と笑ってごまかしてみせた。歯学部の友人に、歯が痛いとは、言えなかった。 その夜、早めに帰宅した佳奈子は、鏡の前で、おそるおそる口を開いた。 いーっ、とやってみる。 左上前歯、1番と2番の間に、かすかに茶色い点が見えた。 歯がぴっちりと綺麗に並んで生えている佳奈子の歯では、間の様子はそれ以上見えない。 そこから周囲に向かって、ややうっすら黒い?ような気がしたが、 洗面所のやや薄暗い光の下では、鏡から遠ざかってみると、きれいな歯に見えた。
- 317 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:27 ID:7moe7J+I
少しホッとしながら、裏側もチェックしてみることにする。 予防歯科でもらったミラーは、実家に置いて来てしまった。 仕方なく、ポーチから手鏡を持ってきて、歯の裏に当ててみた。 歯の裏側を、鏡にうつしてみると・・・ 歯の間が、真っ黒になっていた。黒ずみは、両方の歯の中心近くまで広がっている。 動悸が激しくなるのを感じた。 「そんな・・・」 前から見ると、ほとんどなんともないのだ。 もう一度、鏡にうつす。間違いであってほしいと願ったが、やはり、黒かった。 爪でこすってみても、取れない。そのうえ、爪に少し、ひっかかりを感じた。 顔を近づけ、目をこらすと、1番の方には、小さな穴も開いている。 間違いなく、虫歯だった。
- 318 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:33 ID:7moe7J+I
「どうしよう・・」 母親の、差し歯が目に浮かぶ。歯はやけに白いが、歯ぐきがやや黒ずんでいて、 佳奈子はそれを見るたびに、「差し歯にだけはなりたくない」と思っていたのだった。 それなのに・・・ 佳奈子の目から、涙がこぼれた。 前から見たら、なんともないのだから、案外大したことはないのかもしれない。 早く歯医者に行って、治してもらおう。 そう思うものの、もし、差し歯になってしまったら、と思うと、怖くて決心がつかなかった。 その夜、歯医者に行く夢を見た。 「差し歯にするしかないですね。」と言われたうえ、気が付くと、乳歯の頃のような、 虫歯だらけの口に戻っていた。予防歯科の歯医者が、悲しそうな顔で見ている。 目が覚めて、佳奈子は、泣いていた。
- 319 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:37 ID:7moe7J+I
結局、歯医者には、行かなかった。怖かったのだ。 バイトや授業で忙しい、と言い訳をしながら。 飲み会は少し減らし、 今さら遅いとわかっていながら、歯磨きも念入りにやった。 相変わらず、冷たいものがあたると激痛が走ったが、 うまく、右側を通して流し込む術もおぼえ、夏が過ぎていった。 秋になるころ、佳奈子の2番目の前歯は、光の当たり方によっては、黒ずみが表からも見えるようになっていた。 鏡を見ては、ため息をつく日々だった。疲れてくると、たまに痛むような気もした。
- 320 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:45 ID:7moe7J+I
ある日、前期の試験の打ち上げがあった。 クラスの面々だけでなく、授業で教授のアシスタントをしていた、紺野という若い歯科医も参加していた。 紺野は、しゃべり方も穏やかで、小児歯科を目指している、と言っていた。 クラスメイトの間では、やや物足りない、少し年上すぎる、という意見が多かったが、 佳奈子は、少し紺野を意識して、女のクラスメイトたちと、彼の近くに座った。 実際に飲み会で話してみると、紺野は意外とおもしろく、佳奈子はますます彼が気になっていた。 そのとき。向かいに座っていた由美子が、突然、 「佳奈子。いーってしてみて?」 と言い出した。 「前歯、黒くなってる気がして。虫歯じゃないの?前歯は早く治したほうがいいよ。」 佳奈子は思わずびくっとして、 「何よ。変なこと言わないでよ」 と言ってしまった。紺野の前でそんなことを言われたのが、たまらなかった。 「別に、そんなつもりじゃなかったんだけど。ごめんごめん」 由美子は屈託なく笑い、別の話題にさっさと移っていった。 動悸が激しくなっていた。
- 321 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:53 ID:7moe7J+I
飲み会の帰り、気を利かせたクラスメイトたちは、佳奈子と紺野を残し、カラオケに行ってしまった。 「一緒に行きましょうか?暗いし。」 紺野は、佳奈子と一緒に歩き出した。 教授のうわさや、高校のことなど、当たり障りのない話をして、歩いていった。 「ところで。」 大学の門のそばの街灯の下で、紺野は立ち止まった。 「さっきのことだけど。」 佳奈子は、なに?という顔をしてみせた。 「前歯、早く治したほうがいいよ。けっこう進んでると思う。」 すうっと血の気が引いた。気付かれていた。よく考えると、紺野は歯科医だ。気付かないわけはなかった。 「見せてごらん」 逃げそうになる佳奈子の手首をつかむ。 「放っておくほど、虫歯は悪くなるんだから。」 諭されるように言われ、佳奈子は体の力を抜いた。おとなしく、少し上を向く。
- 322 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:57 ID:7moe7J+I
紺野の指が、佳奈子の唇をめくった。 「あぁ。痛むんじゃない?これは。」 佳奈子が首を振る。「しみる、くらいです」 「・・・そう。もうちょっとちゃんと診たいんだけど、今、いいかな? 研究室のところに、ちゃんとユニットもある。僕はほとんど飲んでないし、診るだけだから大丈夫だよ」 予想外の展開に、佳奈子は体を固くした。 「歯医者が怖いかもしれないけど、僕も怖いかな。平気でしょ?」 紺野は優しく言って、微笑みかける。 さすが小児歯科を目指すだけあって、話の持って行き方がうまかった。これでは、頷かざるを得ない。 「じゃ、行こうか」 こんなふうに、二人きりになろうとは。 建物をカードキーで開けて入っていく紺野に着いて行きながら、紺野に歯を見られて恥かしい気持ちと、 ようやく治療ができるという安心感と、差し歯への恐怖感に、少し混乱していた。
- 323 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:01 ID:7moe7J+I
「ここだよ。どうぞ。」 紺野に招き入れられた部屋の真ん中には、歯科医の椅子が置かれていた。 「口、ゆすいでいいですか」 さすがに、飲み会の後の口の中をそのまま見せるのはイヤだった。 「あぁ、そこに座って、ユニットのを使って。コップは・・はい、これ。」 使い捨てのコップを渡された。 佳奈子は靴を脱いで、ユニットに上がり、口を丁寧にゆすいだ。 「じゃ、いいかな?」 滅菌器から器具を取り出した紺野が、横に座る。 「はい。お願いします。」 佳奈子が答えると、紺野はちょっと微笑んで、椅子のスイッチを押した。 うぃーーーん。 椅子が倒されていく。 「じゃ、ちょっと見せてね。とりあえず、あーん」 ミラーを手にした紺野に促され、佳奈子は口を開く。 「うん、だいたい綺麗だね。小さい虫歯が1,2本あるけど、大丈夫。綺麗な歯だよ。」 ほめられて、佳奈子は少し力を抜いた。
- 324 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 20:12 ID:Sb9IXeKW
やべー、本編に安易に萩原先生の過去入れるんじゃなかった。 すごい本格的だよー・・。
- 325 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:14 ID:7moe7J+I
「じゃ、前歯見るよ。」 ミラーが前歯の内側に当てられた瞬間、紺野の顔が少し険しくなった。 「うーん。これは思ったより進んでるね。前から見るよりも、裏はかなりひどいよ。」 佳奈子の顔が歪む。 台の上の探針に手を伸ばしかけた紺野が、佳奈子の表情に気付いた。 「まだ、怖いのかな?」 佳奈子は、思い切って言ってみた。 「歯医者が怖いんじゃないんです。予防歯科に通ってて、慣れてるから。ただ・・」 「ああ、歯は綺麗だったものね。ただ、どうしたの?」 「差し歯・・差し歯になるのが怖くて」 佳奈子はすがるような目で、紺野を見た。 ふう、ため息をつき、紺野はミラーを置いた。 椅子も起こされ、佳奈子は紺野と向かい合う形になった。
- 326 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:18 ID:7moe7J+I
「えっと・・萩原・・・佳奈子ちゃん、だっけ。」 「はい。」 「はっきり言うね。」 「ハイ。」 緊張した雰囲気に、佳奈子の声が震える。 「残念だけど、この前歯は、差し歯になるのは避けられないと思う。」 佳奈子は、頭を殴られたような気がした。 心のどこかで覚悟はしていたが、現実を突きつけられると、やはり、辛かった。 「あと2ヶ月早ければ、差し歯にせずに治せたかもしれないけど」 2ヶ月。やっぱり、あの、激痛が走ったときに歯医者に行っていればよかったのだ。 後悔で、涙がじわっとあふれてきた。
- 327 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:22 ID:7moe7J+I
「ただね。差し歯って、たぶん、お母さんか何かのを想像してると思うんだけど、 あの、ふちが黒くなってて、変に白い、あれ。」 こくり、と佳奈子が頷く。 「最近のは、もっと見た目も自然なのがちゃんと作れるんだよ。 だから、そんなに怖がらなくてもいい。」 心をほぐすように、紺野が続ける。 「ほら、僕もここ、差し歯なんだけど」 右上1番を指差し、にっ、と笑う。 それは、周りの歯と見分けがつかなかった。 「えっ・・わからなかった・・虫歯ですか?」 「僕は、スキーでぶつかって折れちゃったんだけどね。かっこ悪いだろ?」 微笑む紺野に、佳奈子もつられて笑った。 「でも、虫歯も、根っこさえちゃんと残ってれば、 差し歯はかっこ悪くないのができるから。大丈夫。ね?」 佳奈子は頷いた。 差し歯になるのは、まだやっぱりショックだったが、あの差し歯にはならないのだ、 と思うと、少し気が楽になった。
- 328 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:27 ID:7moe7J+I
「じゃあ、ちゃんと治療できるね?」 はい、と答えたものの、こちらでは、いい歯医者がどこかわからない。 「あの・・大学病院でも診てもらえるんですか?」 と聞いた。 「ああ、もちろん。学生はほとんど無料で治療できるよ。 教授には紹介が必要だけど、僕でかまわなければ、僕が診るよ。」 好意とは別に、さっきからの様子に、紺野に診てもらえれば、安心できる気がした。 「お願いします。」 佳奈子がそう言うと、 「じゃあ、さっそく、明日の朝、病院の方に来て。」 と、紺野が指示する。 しかし、明日は友達と遊びに行く約束だった。 「大学は休みでしょ?それに、1番の歯、そろそろ痛み出すと思うから、早いほうがいいよ。 前歯の痛みは辛いらしいし、痛みが出たら、根の状態も急に悪くなるしね。」
- 329 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:31 ID:7moe7J+I
痛いくらいなら、ま、我慢すればいいわ。 差し歯への恐怖が薄れた佳奈子は、根の話は耳に入らなかった。 結局、地元から友達が出てくる、と言って、治療はその次の日に延ばしてもらった。 紺野は、心配だったのか、 「痛くなったら連絡して。」 と、携帯と、構内の内線電話の番号をくれた。 次の日。このところ、気にかかっていた前歯のこともやや進展し、試験も終わって、 佳奈子は、ひさしぶりに、晴れ晴れとした気分で遊んでいた。 夜、シャワーを浴びていると、トクン、トクン、と、脈にあわせて、 1番の前歯に、少し不快感が出てきた。 「ん・・・まあ、痛いわけじゃないし。」 と、そのまま眠りについた。
- 330 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:38 ID:7moe7J+I
・・・ドクン、ドクン、ドクン、ズキン!ズキン! 佳奈子は、歯の痛みで目が覚めた。時計を見ると、5時だった。 叫び出したくなるような痛みではなかったが、頭が痛くなってくる。 「はあ。紺野先生、怒るかなあ」 早いほうがいい、と言っていた、紺野の顔を思い浮かべた。 「あ、そうだ、電話!」 さすがに早すぎると思い、6時まで待ってから、紺野に電話をかける。 「はい。」 「あの・・萩原ですけど。起こしちゃいましたか?」 「ああ、佳奈子ちゃんね。もう起きてるよ。どうしたの?痛み出した?」 「・・・はい。」ほらみろ、と言われるかと思ったが、 「大丈夫?我慢できる?治療は8時からだけど、7時半から開いているから、早めにおいで。」 優しく言われただけだった。
- 331 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:48 ID:7moe7J+I
7時半に行ってみると、紺野はすでに待っていた。 マスク姿を見るのは初めてだ。少し怖い感じに思える。 言われるままに、レントゲンを撮りに行き、戻って、ユニットに座る。椅子が倒された。 「はい、見せてごらん」 おとなしく口を開ける。 「あー、これは痛いね。でも、ちょっと我慢してくれる。」 と言うと、指で、1番をとんとん、と叩いた。 「っうぅぅ」 歯だけでなく、目の奥まで痛みが走り抜けた。 「もっかい」 次に、2番を叩いた。 今度は、歯の中がぼわん、と痛んだだけだった。 「どうかな。」 佳奈子が痛みかたを伝えると、今野は、難しい顔になった。 「うーん。とりあえず、こっちの1番からやろう。削って、ちょっと根の状態を確認するね。」 目で頷く。
- 332 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:14 ID:7moe7J+I
根の状態?佳奈子は、なにか大事なことだったような気がして、 一生懸命考えていた。 先日の夜とは違って、今日は、衛生士や助手もたくさんいる。 助手が、麻酔のシリンジを、紺野に手渡した。 「はい。ちくっとするけど、我慢して。」 しばらくして、麻酔が効くのを待って、治療が始まった。 「見にくいから、視野確保して。リトラクター。」 「はい。」 佳奈子の唇に、プラスチックの器具がはめられた。口が大きく開けられ、歯茎がむき出しになる。 「!」 恥かしい、と思って、紺野の顔をとっさに見たが、 紺野は、真剣な顔で、タービンにチップを装着し、佳奈子の目を見て、大丈夫だよ、というふうに微笑むと、 チュイーン と音をさせて、佳奈子の歯を削りにかかった。
- 333 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:22 ID:7moe7J+I
キュイーン、キュィーン。 まずは、1番と2番の間から。次に、裏側へ。進むにつれ、紺野の顔が険しくなる。 「んー、思ったよりも中に進んじゃってるなあ。痛いけど、我慢してね・・」 佳奈子の脚がもぞもぞしているのに気付いてか、紺野は釘をさすように言った。 「ああぁぁぁん、あああぁ、あぁぁ!」 佳奈子が泣き出した。 「ん、もうやめるから」 すぐに、タービンの音が消えた。 「よく頑張ったね。」 紺野はなぐさめながら、泣きじゃくっている佳奈子の口から、リトラクターをはずした。 透明な唾液が、つーっ、と糸を引く。 「とりあえず、口ゆすいで。」 椅子を起こす。
- 334 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:29 ID:7moe7J+I
思ったよりも、削る時間は短かったな・・・<BR> 舌で確かめてみると、意外と穴も小さいようだ。佳奈子はホッとした。<BR> 口をゆすいで、姿勢を戻すと、紺野が、マスクを顎にはずし、佳奈子の方を見ていた。<BR> 「1番の、治療なんだけどね。」<BR> 少し、厳しい顔で話し始める。<BR> 「思っていたより、深くまで進んでるんだよ。2番の方が、前も黒くなっていて気になっただろうけど、<BR> 1番は、虫歯が中に向かって進んでいたんだね。こっちの方が、ひどい虫歯だよ。」<BR> どうやら、深刻な話だ。佳奈子は体を固くして、頷く。<BR> 「で、今、ちょっと削ってみたんだけれど、中が大きくやられてる。おそらく、根っこまで。」<BR> 根っこ。佳奈子は突然思い出した。<BR> “根っこさえちゃんと残ってれば、差し歯にできる。”と、紺野が言っていたのだった。<BR> じゃあ、根っこがない場合は・・?
- 335 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:31 ID:7moe7J+I
ん?昨日のにもこんなのあったけど、何だコリャ 思ったよりも、削る時間は短かったな・・・ 舌で確かめてみると、意外と穴も小さいようだ。佳奈子はホッとした。 口をゆすいで、姿勢を戻すと、紺野が、マスクを顎にはずし、佳奈子の方を見ていた。 「1番の、治療なんだけどね。」 少し、厳しい顔で話し始める。 「思っていたより、深くまで進んでるんだよ。2番の方が、前も黒くなっていて気になっただろうけど、 1番は、虫歯が中に向かって進んでいたんだね。こっちの方が、ひどい虫歯だよ。」 どうやら、深刻な話だ。佳奈子は体を固くして、頷く。 「で、今、ちょっと削ってみたんだけれど、中が大きくやられてる。おそらく、根っこまで。」 根っこ。佳奈子は突然思い出した。 “根っこさえちゃんと残ってれば、差し歯にできる。”と、紺野が言っていたのだった。 じゃあ、根っこがない場合は・・?
- 336 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:36 ID:7moe7J+I
お、大丈夫だ ワードから貼り付けてんだけど・・ま、いいや、続き 「だから、1番は抜かなきゃならないよ。」 歯を抜かないといけない。しかも、前歯を。自分が虫歯にしてしまったせいで。 歯医者に行かずに、放っておいたせいで。 頭がくらくらした。 「あの・・じゃあ、差し歯は・・」 「そう。差し歯にはできないんだ。」 「入れ歯・・・?」佳奈子は、涙声になっていた。 「大丈夫。入れ歯にはならないよ。ブリッジって言って、両端の歯にかぶせ物をして、 その歯で支えるように、つないで歯を入れる。」 父親の奥歯にあった、3連の銀歯を思い出した。 「見た目は・・?」 「それは、普通の差し歯とおんなじだよ。心配いらない。」 佳奈子は、黙ってしまった。
- 337 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 21:43 ID:siUjlSVV
今後は、こっちでどうぞ。 えっちねたロビー http://sakura01.bbspink.com/hneta/
- 338 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 21:50 ID:Sb9IXeKW
>>337 行為はしてないだろ。フェチ板でいいはずだ。
- 339 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:56 ID:7moe7J+I
「まだ18歳だし、歯を抜かないといけないのは、つらいだろうけど・・・」 紺野が静かに言う。 「抜かなきゃいけなくなったのは、しょうがないんだ。きっちり治すから。佳奈子ちゃんも頑張ろう。」 佳奈子は、こくり、と頷いた。 「何か、聞きたいことはない?」 「抜いた後・・歯抜けにはならないですよね?」 「ああ、そりゃ、気になるよね。」紺野は笑った。 「大丈夫、仮の歯を作ってはめるから。案外、よくできてるよ。ぱっと見わからないくらい。」 「両端の歯って、右の1番と、左の2番ですか。右の1番は、なんともないんですけど・・」 紺野の顔から、微笑が消えた。 「うん、それはしょうがないんだ。なんともない歯を削るのは悲しいだろうけど、 ブリッジの端の歯には、真ん中の歯の分も力がかかるから、負担がかかる。 右の1番はしっかりしてるから、その点、大丈夫。」 一瞬、佳奈子の顔に浮かんだ不安をさえぎるように、紺野が続ける。
- 340 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:56 ID:7moe7J+I
「問題は、左の2番なんだけどね。 差し歯になるはずだったから、削ってかぶせるのに抵抗が少ないだろうけど、 もともと、2番もかなり虫歯が進行してるからね。自分だけならいいけれど、 たぶん、隣の歯を支えるのは、負担が大きいと思う。」 「だけど、根はあるんですよね」 佳奈子は、自分の頭に浮かんだ考えが、間違っていますように、と祈った。 「うん、ある。でも、隣の歯を支えるほどの力はないんだよ。」 「・・・」 「2番はブリッジの端にはなれない。だから、ブリッジの支えは、右の1番と、左の3番にしようと思ってる。」 「それじゃあ、2番は・・・」 どくん、どくん、どくん、どくん、 佳奈子の心臓は、激しく打っていた。
- 341 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:57 ID:7moe7J+I
「・・・残念だけど、抜くことになるね。」 鼓動は強く感じられるのに、頭からは血の気が引いていく感じだった。 歯を2本も抜くなんて。 さらに、そのために、虫歯じゃない歯を2本も削らないといけない。 どうしてすぐに、歯医者に行かなかったんだろう。 「大丈夫?」 紺野がハンカチを差し出し、顔を覗き込む。 佳奈子の頬には、涙が流れていた。 「落ち着いたら、歯を抜くよ。・・もちろん、次回でもいいけれど。」 呆然としたまま、佳奈子が頷く。 「その後は、仮の歯を入れて、しばらく抜いたところを落ち着かせる。で、口の中の型を取って、 両端の歯を削って、そこの型を取って、ブリッジを作って、終わり。ただ、前歯だから、 最終的にはめる前に、一度、色あわせとかしようね。大丈夫。ちゃんと、綺麗になるから。」 紺野が、ゆっくりと説明する。 佳奈子は、黙って頷いていたが、目をつぶって深呼吸すると、ぱちっと目を開け、 「よろしくお願いします。」 と頭を下げた。
- 342 :番外編・萩原先生:04/09/06 22:02 ID:7moe7J+I
その後、佳奈子の左上1番2番は抜歯され、右上1番から左上3番の、4連ブリッジとなった。 紺野が言ったように、前からの見た目は、他の歯とほとんど見分けがつかないくらいだったが、 歯の裏は・・・ 佳奈子は、大学時代、舌が裏側の金属に当たるたびに、あのときの後悔を、思い出していた。 最近、どうも、右下の6番が、痛いような気がする・・・ 「肩こりかな。そろそろ、30だし」 佳奈子は、なぜか、あのときの後悔を忘れ始めていた・・・ 以上です。長々とすみませんでした。 ホントは、萩原先生虫歯が痛くて美人助手にいじめられる、っていうストーリーを考えてたんだが、 前振りのつもりの前歯編で、つい、力が入って・・・ 差し歯好きなんだよ〜
- 343 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 22:21 ID:l7+itXRe
お疲れ&激しくGJ! 今後来る人のために。 ・本編 >>308より続けてください ・萩原先生編 >>310-342で
- 344 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 22:26 ID:l7+itXRe
>>343 ついでに、萩原先生続編期待っ!
- 345 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 22:45 ID:2f3HGROd
本編続き。 「じゃあ、この間予定より進まなかったし、今日はきっちり治していきますからね」 月曜日。 治療ブースに通された香緒里に、荻原先生はびしっと言い放った。 この間香緒里に優しく話しかけていた時の面影は微塵もない。 虫歯を治す、という使命感に溢れているからだろうか。 俺はなんだか納得してしまったが、香緒里はあからさまに怯えている。 ごめん、用事落ち。帰ってきて続きなかったらまた書きます。
- 346 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 22:46 ID:7moe7J+I
>>343&間でちょくちょくコメントくれた人、ありがとう。 本編も、香緒里の治療がいい感じだから、続くといいな〜 萩原先生編、上に書いたように、歯が痛くなる、にしたいんだけど、 前振りでぐったりしちゃって・・ちと待ってて。 もち、他の人が書いてくれてもいいよー
- 347 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 22:47 ID:7moe7J+I
あ、本編続いた。 とりあえず、帰ろうっと
- 348 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 23:03 ID:5iT/Nd9U
香緒里どうなっちゃうの?ゾクゾク。
- 349 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 23:48 ID:x46YAe9L
申し訳ないが作り話じゃ悶えない。いったいいつまで続くの??
- 350 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 00:03 ID:qxeQdq3A
続けてほしいです!!!!!!!!
- 351 :345:04/09/07 00:35 ID:nhGqUepV
帰ってきたんで続き。 「まず左上を見せてね、はい、あーん。 …うん、充血も引いてるわ。 今日神経抜いてしまいましょう。」 香緒里の口を覗き込みながら萩原先生が言った。 「あと、上の6番の掃除して、前回削った5番は金属が入るからね。 どうする?途中で嫌になってもいいように酷い歯からやろうか?」 「…はい」 酷い歯、と聞いて一瞬青ざめた香緒里だが、覚悟を決めたのか自分から口を開けた。 「じゃあ6番ね」 ゴムのような覆いが外され、細く裂いた脱脂綿が香緒里の歯の中から引き抜かれる。 荻原先生が綿をライトにかざした。先の部分が緑ががったクリーム色に染まっている。 「やっぱりまだ膿んでいるみたいねぇ。もう一度掃除するわね。」 例の針が香緒里の歯にねじ込まれていく。 「んんぅ、…はぁ、ああ……」 やはり相当響くのだろう。香緒里の目端からすっと涙が流れる。 「……ちょっと徹底的に洗うわね」 そういうと荻原先生は、今までねじを回すように入れていた針を、 力を込めて激しく出し入れし始めた。 「あ、ああっ! いあぁ!!」 香緒里が叫ぶ。 荻原先生はそれにはかまわず、額に汗をにじませ、針を取り替えながら同じことを繰り返している。 ざっ、がすっ、がりっ。 かすかにそんな音も聞こえてくる。見ている俺も膝が笑ってくるような治療だ。 「……ふう」 荻原先生は、ため息をつくと、額の汗を拭いた。 「もういいわよ。これで上向きになってくれれば良いんだけれど。」 香緒里は肩で息をしている。涙を拭く気力もなくなっている。 助手が気づいて、ハンカチで香緒里の目の横をそっとぬぐってくれた。
- 352 :345:04/09/07 00:47 ID:nhGqUepV
香緒里の歯に手際よく薬と脱脂綿を詰め、蓋をすると、 荻原先生は一瞬伸びをして、香緒里に向き直り、微笑んで言った。 「じゃあ一番奥の歯を治療します。良く我慢できたわね。もう大丈夫よ」 香緒里の目がまたじわっと滲む。 優しい言葉をかけられて、痛みに苦しんだことを思い出したのだろう。 「麻酔の注射をしますからね。」 荻原先生は、注射器を2本持ってきた。 香緒里の口を開かせる。 「はい、最初ちくっとします。その後は押される感じがしますよ。」 香緒里の一番奥の歯のすぐ隣に針は差し込まれた。 少し薬液を入れては針をほとんど抜けそうなところまで引っ張り、 方向を変えてまた奥深く差し込む。 香緒里は目をぎゅっと瞑って頑張っている。
- 353 :345:04/09/07 01:06 ID:nhGqUepV
一本目の薬液がすっかりなくなったのを確認して、荻原先生は注射器を抜いた。 「はい、いーってして、あ、少しだけ開けてみて」 指示に従った香緒里の唇の左端を、助手が左上に引っ張りあげる。 「ちょっと痛いかもしれませんよ」 言うと同時に2本目の注射器が、香緒里の歯茎に射し入れられた。 「ひ、いぁ、んぅう」 薬液を押し込まれるたびに香緒里は息を漏らした。 「はい、終わり。効くまで少しかかるから、下の金属、入れてしまうわね」 荻原先生は、助手が持ってきた金属の詰め物を香緒里の歯に当てて具合を確かめると、 満足そうに肯き、さっとセメントをつけて詰めてしまった。 さらに指でその歯を、顎ごとぎゅうっと押さえる。 香緒里はびっくりして目を白黒させている。 1,2分たっただろうか。 「よし。そろそろ麻酔もきいたでしょう」 荻原先生はそう言うと、いそいそと歯を削る準備をし始めた。
- 354 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 01:13 ID:6A+kEgPi
チムポが元気になってしまった。 治療する美人先生が説教をしているときに、 先生の差し歯の裏側が見えてドキドキ・・・。
- 355 :345:04/09/07 01:21 ID:nhGqUepV
キュウゥゥゥウン、キュィイ、キュイーィン。 麻酔が良く効いているのだろう。 香緒里は最初こそ緊張で固くなっていたが、 今はこの痛そうな音の中、すっかりリラックスしている。 「ああ、手前がやっぱり酷いわねぇ…」 削りながら荻原先生がつぶやいた。 この歯は元々、手前の崩壊した虫歯と昔接していたであろう部分から出来、 小さな穴が空いて中で広がった虫歯だった。 俺が欠けさせてからは、前半分が大きく口を開けていて、中の黒茶色いのが良く見えた。 見たところ後ろ半分は何もなさそうだったが、 神経を取るというのだから全部削ってしまうのだろう。 そんなことを考えているうちに、すっかり神経の処置まで済んだらしい。 「この歯は次回、土台を入れていけそうね」 見ると、香緒里の歯は手前が歯茎ぎりぎりまで削られ、 後ろに向かって傾斜がつけられていた。 真ん中は神経を取って一層へこんでいるので、斜めに切った竹のようだ。
- 356 :345:04/09/07 01:28 ID:nhGqUepV
薬を詰める準備をしながら、荻原先生は香緒里に話しかけている。 「今日、後一本ぐらい治しておこうと思うんだけど、いいかしら。 ほら、前も言っていた上の4番、一番小さい奥歯ね。一回で治るから。」 「あのぉ・・」 「ん?」 「悪い歯から治して欲しいんです。 もうあんな痛いのやだし…」 「ってことはこの前歯かしら…うーん、院長に相談してからの方が…」 「いえ、そこじゃなくて…」 香緒里の言葉に、荻原先生も俺も首を傾げた。 確か香緒里の歯はC4が1本、C3が2本。 C3で残っているのは前歯だけのはずだが…。 俺が悩んでいる間に、荻原先生が先にひらめいたようだ。 「香緒里ちゃん、もしかして、他にも痛い歯があるの?」 「……はい」
- 357 :345:04/09/07 01:34 ID:nhGqUepV
またも香緒里は真っ赤だ。 「今更恥ずかしいことじゃないわ、どこ?」 「…右の上の…」 「そう。ちょっと待ってね。」 そう言うと荻原先生は、左上の奥歯の処置を仕上げると、レントゲンを手にした。 「ああ、このインレーが入っている歯ね。うっかりしてたわ。これは痛いかもね。」 俺もようやく思い至った。 10年前に詰めた銀の周りが汚らしく変色し、香緒里も「しみるの」と言っていた歯。 実際はしみるどころか、すでに痛みだしていたわけか。 『また嘘吐いたな』、という目で軽く香緒里をにらんでやる。 香緒里は慌てて、 「あの、でも、ズキズキするんじゃなくて、なんかジーンと重い感じなんです。」 と言い足す。
- 358 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 01:41 ID:Xchclbcy
すごい充実ぶり。みんなありがとう 作り話じゃ萌えないって、 ネカマが、歯医者さんに行ってキュイーンされちゃいました、 皆さんは虫歯のない女の子が好きなんですよね とか書いてるやつのほうがいいって言うんだろうか? こっちのスレほうが、よっぽど完成度も高いし、萌えるが。俺は。 ま、とにかく、期待してる。
- 359 :345:04/09/07 01:48 ID:nhGqUepV
「うーん、早く治療してあげたいなあ…でもねぇ」 「でも?」俺と香緒里が同時に聞く。 「左と右、両方治療中だと食べられるものも限られてくるし、 違和感が強かったりするからお勧めできないのよね…」 「無理なんですか?」 香緒里が勢い込んで聞くと、荻原先生は苦笑した。 隣では美人助手も苦笑している。 「そこまで言うってことは実は結構痛いんでしょう?嘘は駄目よ」 「……は、い…」 俺はちょっと呆れた。まあ、自分から治して欲しいと言ったから、許してやろう。 「じゃあこっちも麻酔するわね。神経に届いてるから。」 さっと麻酔をすませると荻原先生は、ドリルの先を取り替える。 「じゃあインレーを外すわね」 ブウゥゥン… 回転数も違うのか、スイッチを入れると、歯を削るときとは違う音がした。
- 360 :345:04/09/07 02:20 ID:nhGqUepV
ドリルが香緒里の口の中に入れられる。 ウィイン! 一度大きな音がしたと思ったら、荻原先生はすぐにドリルを抜いてしまった。 「……取れたわ…触っただけなのに…これは酷いわ」 助手に言って、手鏡を取ってこさせる。 手鏡を香緒里に渡し、探針を口の中に入れる。 「見える?インレーの下、全部虫歯だわ。 セメントが全然効いてなかったもの。ほら、触っただけで崩れるでしょう?」 香緒里は泣き出しそうになっている。 俺も中を見せて貰った。 大きめのインレーが入っていたところ一面、茶色くなっていて、 針で触ると簡単に、ぐずぐずと崩壊していく。 「さあ、さっさと治してしまいましょう。香緒里ちゃん、泣いてたら削れないわ。 麻酔は効いているでしょう?」 ひっく、ひっく。 香緒里がしゃくり上げている。 「うぇっく、はずかしいよぉ、こんな、きたない歯ぁ、ひいっく」 ううー、限界。 心理戦得意な人に、是非続きお願いしたい。
- 361 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 03:41 ID:16alfnjM
「大丈夫よ。それにしても、ずいぶん痛かったでしょう。」 萩原先生が、やさしくなぐさめる。 すると・・ 突然、美人助手が立って、診療室の窓を開けた。 「けほっ、すごい臭いだわ。」 そう言うと、マスクを取ってきて、つけた。 「はい。いくら彼女の歯だって、辛いでしょ」 と、俺にもマスクを渡してくれた。 そういえば・・・ 何かが腐ったような、歯を磨かなかった翌朝の口臭のような、臭いがする。 これが、あの歯から出てるのか・・?
- 362 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 04:26 ID:16alfnjM
香緒里は、ますます激しく泣き出した。 「金子さん。あなた。」 萩原先生は、助手を軽くにらみ、 「こうなってしまったのは、前の治療が原因なの。だから、香緒里ちゃんが泣くことないのよ。」 と、香緒里をなぐさめた。 「だから、治していきましょう。ね。」 香緒里がひっく、ひっく、としゃくりあげながら、ハイ、と返事をした。 「じゃ、続けるわよ。はい、あーん。」 まずは、水で洗いながら、バキュームで吸い取り、それから、ドリルで削りに入った。 「ん、あああああああ」 「麻酔効いてるでしょ。だいじょうぶよ。もうちょっと。我慢して。」 香緒里は、泣きながらも治療に耐えている。
- 363 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 04:27 ID:16alfnjM
3分ほど削っていただろうか。 ドリルの音がやみ、バキュームの、ズズズ、ジュポーっ、という音がして、椅子が起こされた。 「まず、うがいしてくれる。」 先生に言われて、うがいをした香緒里は、青い顔で言った。 「歯が・・歯がない!」 萩原先生は、ちょっと頷くと、口を開いた。 「虫歯に侵されてる部分を全部取ったら、ほとんど残らなかったわ。あとは、さっきの臭いでもわか るとおり、」 香緒里は、赤くなってうつむく。 「神経のところは、腐ってたわ。一応、よく洗って、これから根の処理をするけど」 また!香緒里が硬くなる。 「ジーンと痛かったってことは、炎症が慢性化してるってことなの。だから、かなり長くかかるわね 。覚悟してかからないと。」 香緒里は、もう、どうでもいいといった顔で、ぐったりとしてしまった。 こんなとこか。もう寝るぜ。続き頼みます。
- 364 :295:04/09/07 05:49 ID:mgAdD4/b
小説書いてくれたみんな、乙! いちおー、363まで纏めた。 http://www.geocities.co.jp/HeartLand/4796/feti/index.htm
- 365 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 08:49 ID:9sBRJ5M2
むはー、いい感じになってきたー。 続きかこ♪ 「残った神経を取りますね」 萩原先生はそう言うと、ユニットを倒し、例の針を手に取った。 おびえた目で先生を見る香緒里。 先生はにっこりと微笑んで、香緒里に口を開けさせた。 「そんなに痛くないと思うから、大丈夫よ」 そう言って針を歯に入れたとたん、 「あぁっう」 香緒里がびくんと動いた。 萩原先生は針を抜いて 「ゴメン、まだ麻酔が足りなかったみたいね・・もう2本打つわ」 といい、台の上の注射器を手に取った。 「さっきの麻酔が効いてるから、大丈夫よ」 萩原先生はそう言いながら、香緒里の歯茎に針を入れた。 針をぎゅっと押し込まれると香緒里はちょっと顔をしかめたが、それほど痛くないようだ。 「OK、後1本ね」 同じように注射をするが、香緒里は眉間にしわを寄せただけだった。 「痛くなかったでしょ?」 先生がにっこり笑って言うと、香緒里はこくんと頷いた。
- 366 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 08:49 ID:9sBRJ5M2
むはー、いい感じになってきたー。 続きかこ♪ 「残った神経を取りますね」 萩原先生はそう言うと、ユニットを倒し、例の針を手に取った。 おびえた目で先生を見る香緒里。 先生はにっこりと微笑んで、香緒里に口を開けさせた。 「そんなに痛くないと思うから、大丈夫よ」 そう言って針を歯に入れたとたん、 「あぁっう」 香緒里がびくんと動いた。 萩原先生は針を抜いて 「ゴメン、まだ麻酔が足りなかったみたいね・・もう2本打つわ」 といい、台の上の注射器を手に取った。 「さっきの麻酔が効いてるから、大丈夫よ」 萩原先生はそう言いながら、香緒里の歯茎に針を入れた。 針をぎゅっと押し込まれると香緒里はちょっと顔をしかめたが、それほど痛くないようだ。 「OK、後1本ね」 同じように注射をするが、香緒里は眉間にしわを寄せただけだった。 「痛くなかったでしょ?」 先生がにっこり笑って言うと、香緒里はこくんと頷いた。
- 367 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 08:50 ID:9sBRJ5M2
数分経った後。 「麻酔が効いたか確かめるから」 先生はそう言うと、香緒里の歯の中に針を入れた。 「んぁあっ」 やはりびくんと動く香緒里。困ったような顔をする先生。 「・・金子さん、あれ持ってきて」 そう言われた助手は、となりの部屋に入って、A4ぐらいの紙を持ってきた。 そこには、歯の断面図のようなものが書かれていた。 「あのね、歯ってのは元々こんな感じなのね。この赤いのが神経ね」 香緒里がこくんとうなずく。 「この神経が根の先から歯茎の方につながって、痛みを感じるようになってる。麻酔も、根の先から神経に入るのよ」 香緒里は、もう一度こくんとうなずく。 「で」 先生は、根のところ以外の神経をボールペンで塗りつぶした。 「さっきの歯は、ここまで神経が死んじゃってるの。でも、根のところは生きてるわ」 「あ、だから痛かったんですね?」 香緒里が合いの手を入れる。 ところが、先生は「ええ」と言いながら困ったような顔をした。
- 368 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 08:51 ID:9sBRJ5M2
数分経った後。 「麻酔が効いたか確かめるから」 先生はそう言うと、香緒里の歯の中に針を入れた。 「んぁあっ」 やはりびくんと動く香緒里。困ったような顔をする先生。 「・・金子さん、あれ持ってきて」 そう言われた助手は、となりの部屋に入って、A4ぐらいの紙を持ってきた。 そこには、歯の断面図のようなものが書かれていた。 「あのね、歯ってのは元々こんな感じなのね。この赤いのが神経ね」 香緒里がこくんとうなずく。 「この神経が根の先から歯茎の方につながって、痛みを感じるようになってる。麻酔も、根の先から神経に入るのよ」 香緒里は、もう一度こくんとうなずく。 「で」 先生は、根のところ以外の神経をボールペンで塗りつぶした。 「さっきの歯は、ここまで神経が死んじゃってるの。でも、根のところは生きてるわ」 「あ、だから痛かったんですね?」 香緒里が合いの手を入れる。 ところが、先生は「ええ」と言いながら困ったような顔をした。
- 369 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 09:03 ID:MUCDOB+X
根の掃除が始まった。 荻原先生がごりごりと針を操作する。 「神経は全部死んでしまっているから、痛くないでしょう。 今まで痛かったのは、神経が腐ってでたガスの、行き場がなかったからなの」 ひぃっく。荻原先生の声に香緒里が嗚咽で応える。荻原先生は更に、 「この歯とこの、」 と言って左の奥から2番目の歯を指し、 「歯の根の治療に、あと半月ぐらいかかると思うわ。週2回ぐらい来て貰うわね」 と言う。 「あと、院長先生が帰って来次第、前歯も何とかしましょうね。 他の歯は、しばらく手を出さないでおくわね。 奥歯が両方治療中だから、あまり固い物は食べないでね。 はい、終わり。」 ひっく、ひぃっく。 嗚咽を漏らしながら香緒里はうがいをした。何度も、何度も。 両方に麻酔をされて、うまくうがいできず、ごぼごぼと口から溢れだしている。
- 370 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 09:05 ID:MUCDOB+X
うわ、ごめんなさい、かぶった。 369は忘れて下さい。
- 371 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 09:17 ID:9sBRJ5M2
ぬを、かぶっちゃったか・・ 続きUP行きます。ゴメン。 「さっきの歯は、歯の根のところが細くなってて・・死んだ神経があると細くなるんだけどね。 で、麻酔がうまく入っていかないのよ」 しばらく考えていた香緒里の顔が、さっと曇る。 「・・ど、どうするんですか」 「一番楽なのは、生きている神経のところに直接麻酔の注射をする」 なんか、聞いただけで歯が痛くなってきそうな治療である。 「・・他には、ないんですか」 すこし蒼くなった香緒里が、先生に食い下がる。 「神経を殺す薬を詰めてしばらく置く、ってのもあるけど、次の治療までずっとじんじんするし、効かないかもしれないわ」 香緒里が、まだ何か言おうとしたが、言う言葉もなくなったらしくうなだれる。 「注射さえ終われば、楽になるから・・がんばろ。ね」 萩原先生がぽんぽんと肩を叩くと、香緒里は力なく頷いた。 「じゃあ、準備するから」 先生はそう言うと、となりの部屋に入っていった。
- 372 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 09:17 ID:9sBRJ5M2
先生が、助手を3人ほど連れて出てきた。 無言で、ユニットを倒す。香緒里はおびえた目をしているが、先生は器具のチェックに余念がない。 「えっと・・動くと危ないから、頭押さえさせてね」 先生がそう言うと、助手の一人が香緒里の頭を押さえた。もう一人が、足のところを軽く押さえる。 香緒里の目には、もうすでに涙が浮かんでいる。 「じゃ、やるからね・・痛いけど、動かないでね」 先生はそう言って、香緒里の口を開けさせ、歯の中に注射器を進めた。 「あぁあっ!」 香緒里が悲鳴を上げてびくんと動くが、助手二人がさっと押さえつける。 「危ないから動かないで!」 先生が叫ぶように言う。 「う・・うぁあっ・・」 香緒里は痛そうに声を上げる。先生は、ゆっくりと液を入れていく。 香緒里の目から涙がこぼれ、額には脂汗が浮かんだ。もう一人の助手が、さっとそれを拭く。 「そう、動かないで・・」 「あぁぁっ・・ふぅん・・」 諭すように言いながら、ゆっくりと液を入れていく先生。香緒里の目尻から、また涙の筋がたれる。
- 373 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 09:30 ID:9sBRJ5M2
「もうちょっと、もうちょっとだから・・最初の方の麻酔が効き始めるから楽になるわ」 「んぁあっ・・」 萩原先生はそう言いながら、なおもゆっくりと薬を入れていく。 香緒里の方も、すこしは楽になったようだ。 「・・これで、終わり」 先生はそう言うと、注射器を台において、汗をぬぐった。 「お疲れ様、香緒里ちゃん」 助手の人たちもそう言いながら、自分の汗をぬぐっている。 香緒里は、ひっくひっくとしゃくり上げながら涙をぬぐった。 「これで麻酔が効いたから、そんなに痛くないと思うから。お口開けて・・」 先生はそう言うと、例の針を手に取った。 香緒里は、まだ泣き続けていたが、ゆっくりと口を開いた。 針を歯の中に入れられると、またぴくんと動く。 「ん、ちょっと我慢してね」 そう言いながら、先生は根の治療を続けた。
- 374 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 09:31 ID:9sBRJ5M2
「・・はい、今日はここまで・・お疲れ様」 先生はそう言うと、大きくふぅと息を吐いた。 お疲れ様、と言っているが、自分もだいぶ疲れたのだろう。 「この歯も、しばらくは根の治療しないとダメだけど・・こっちは、もう一本の方よりは早く治るはずよ」 先生がそう言うと、香緒里は力なく微笑んだ。 「次の予約、明後日の夜でいい?」 「はい、よろしくお願いします」 香緒里がそう言うと、先生はにっこり笑って香緒里の頭をなでて 「もう一息、頑張りましょ。今日はよく頑張ったわ」 と言った。 ふぅ、やっと治療完了・・やー、治療長いなぁ。 さて、1000までに香緒里の虫歯は完治するのでしょうか?w
- 375 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 09:33 ID:9sBRJ5M2
今チェックしたら>>367と>>368二重になっちゃった。 >>368はとばしてください。
- 376 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 09:52 ID:ApxuxKX2
オツカレ! 押さえつけられて麻酔…萌えだ〜 あとは、クラウンと前歯と、治療終了後の銀でぎらぎらした口が 萌えポイントかな〜。楽しみ。
- 377 :番外編・萩原先生:04/09/07 11:26 ID:fOljZbC6
乙〜 本編に刺激されて、萩原先生編も書き始めたんだけど、出なきゃ 途中までうpするね 全然いいところにまだ到達してなくて申し訳ない 「歯医者さんは、虫歯がないんですか?」と聞かれることがある。 もちろん、人よりも気をつけてはいるが、 歯医者だって、虫歯には、なるのだ。 あれから10年。佳奈子は、歯科医として、充実した日々を送っていた。 佳奈子自身は、左上の前歯を酷い虫歯にして失ってから、 きっちり歯を磨き、半年に1度、前歯を治療してくれた紺野にチェックしてもらい、予防に努めてきた。 もともと、歯が丈夫でない性質なのだが、努力の甲斐あって、 この10年では、2本の治療で済んでいた。
- 378 :番外編・萩原先生:04/09/07 11:27 ID:fOljZbC6
他の歯の状況は、こうだ。 幼稚園の時に、生えるなり虫歯にしてしまった、6番4本。 下の2本にレジン充填、上の2本は、もともとアマルガムだったのが、 2次齲蝕を起こして、小学生の時に、銀のインレーに変わっている。 あとは、前歯の治療の時に、上の7番の奥に、C1の虫歯が2本見つかり、レジンで充填されている。 5年前、親知らずを抜いたとき、下の7番の奥にも、やはりC1の虫歯が2本見つかったので、同様に治療してもらった。 もともとの歯が弱い佳奈子は、歯ブラシの届きにくいところがあると、すぐ、虫歯になってしまうのだ。
- 379 :番外編・萩原先生:04/09/07 11:29 ID:fOljZbC6
ある日。佳奈子は、勤務中に、右下のあたりに、違和感を感じた。少し、重いような・・・ 「肩でも凝ってるのかな。もう年だし」 そう考えて、肩を揉んでいると、 「萩原先生。今日、すごい患者さん来たんですよ」 と、衛生士の金子夏美が話し掛けてきた。 夏美は、佳奈子と同じ時にこの医院に新卒で来たのだが、 衛生士なので、佳奈子より年は下である。 「どうすごいのよ。」 「虫歯が19本もあるんですよ。おじさんじゃないですよ。19歳の女の子。 彼氏に連れられてきたけど、男にぼーっとなってるから、あんなに虫歯になるんだわ。」 これだけ聞くと、彼氏ができない女の僻みのようだが、夏美は、佳奈子から見ても美人であった。 「ちょっとちょっと。19本はすごいけど、あなた、言いすぎよ。」
- 380 :番外編・萩原先生:04/09/07 11:31 ID:fOljZbC6
夏美は、歯が丈夫なようで、今まで、一度も虫歯になったことがない、と自慢していた。 そのせいか、虫歯を作る人間に対して、かなり手厳しい。 佳奈子が、患者に対して厳しいのは、自分の苦い経験からだが、 夏美の場合は、虫歯にしてしまう、ということ自体を軽蔑しているようだった。 たとえば・・ 佳奈子は、患者を治療するとき、椅子を倒している間は、絶対にマスクをはずさない。 理由はもちろん、前歯の裏である。 佳奈子のブリッジは、紺野が気合を入れて、一番腕がいいという技工士に頼み、 2度も色あわせや修正をしてくれたおかげで、前から見ると、自前でないとは気付かない。 しかし、強度から言って、絶対に裏は金属でないとダメだ、と紺野が譲らず、 裏は、金属がギラギラ光っているのだった。 下から見れば、絶対にわかってしまう。
- 381 :番外編・萩原先生:04/09/07 11:49 ID:fOljZbC6
最初の頃は、声がこもって聞こえにくいからと、あまりマスクをしていなかったが、 歯医者になった年の秋。医院内で、衛生士や助手の歯科検診をしたときのこと。 夏美の担当になり、綺麗な歯に少し嫉妬をおぼえつつ、検診を終えたとき、 下から、夏美が言ったのだ。 「萩原先生、銀歯、見えてますよ。前歯の裏も。欠損してるみたいですけど、 まさか、虫歯じゃないですよね。」 佳奈子は真っ赤になった。 その反応を見て、夏美は、信じられない、という表情をし、さらにこう続けたのだ。 「前歯も虫歯にする人がいるなんて、いないと思ってた。」 衛生士である以上、そんなはずはないのだが。 その後、紺野に、裏が白いものに変えて欲しいと頼んだのだが、 あまりいじるのはよくない、と、許可されなかった。 院長にも頼んでみたのだが、 「せっかく綺麗に入ってるし、もったいないぞ」 と、これも取り合ってもらえなかった。 それ以来、佳奈子は、マスクをすることに決めた。 すまん、ここで中断
- 382 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 17:13 ID:kX0IdWf4
昼夜なく小説を書き続けるスレになってますな。 書いてくれてる人ありがと。 夏美助手のブラッシング指導がよみたいなぁ・・キビシイ奴。 誰かお願いします。
- 383 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 21:30 ID:8uVWc8NJ
>>1-382 今日昼に起きて家に誰も居ないと思って 上半身裸パンツ一丁でオナニー途中の ギンギンなチンコを社会の窓から出して上下に振りながら 「ほんとにほんとにほんとにほんとにライオンだー」 と唄いながら廊下を行進していたところを 妹に見られた俺よりましだろ? すげぇリズミカルにチンコ振っていたんだよねorz
- 384 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 21:33 ID:yX1Gpaap
誤爆?
- 385 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 21:38 ID:8saWqHd+
>>384 誤爆の割にはレス番合ってる・・
- 386 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 21:49 ID:mgAdD4/b
ちょっと話の腰折ってスマンが、 「レッド」ってレーベルで、「おっぱい大図鑑100人」とかのビデオあるじゃない。 htp://www.r-e-d.jp/sakuhin/aka081/bottom.html で、このメーカーのホームページで、「企画募集」ってのがあって、フォームから、「こういうの見たい!」ってのが送れるんだわ。 ttp://www.r-e-d.jp/kikaku.html そこで、「口腔大図鑑100人」とかいうタイトルで、素人娘の口内を見たい!って書いて送らない? ここの結束力があれば、恐らく商品化も不可能ではないと思ってきたんだけど・・・
- 387 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 22:02 ID:8saWqHd+
>>386 んー、「歯医者の女」も続編でてないしなぁ・・ 厳しいんじゃないかなぁ。 このスレも、盛り上がってはいるが人数的にどうかといえば・・。
- 388 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 22:04 ID:0piRx4o2
いやーこのスレは萌え萌えですよ〜。 書いてくれてる人&まとめてくれた人、ありがとう〜 治療終了まで続くことキボーン できれば治療後の外観で恥ずかしがるところもキボーン
- 389 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 23:22 ID:xnVIL5MU
>>381さん 美人先生の差し歯編、つづき楽しみ。オナニーしても良いでしょうか?
- 390 :名無しさん@ピンキー:04/09/07 23:49 ID:kQZkM0/t
萌えー、作者の皆さんありがとう 個人的には、先生の学生時代好きなんだが、 もしかして、これ書いてるの女の人じゃね? そして、続きキボンヌ でも、本編も楽しみ。
- 391 :名無しさん@ピンキー:04/09/08 00:22 ID:c38rXOsZ
>>388 外観で恥ずかしがるのは必須だよな! 個人的には、4番あたりの大きなインレーが、 大口開けて笑ったりしなくても普通の生活でちらちら光るのが萌え〜 >>390 書いてるの女の人なら、実体験混じりってこと? もしホントなら萌え死ぬよ〜(´∀`)
- 392 :番外編・萩原先生:04/09/08 03:21 ID:d8zEJrLq
すまぬ、続き。381の後ね。 その後、二人は、歯科医と衛生士というよりは同期として、比較的仲良くすごしていた。 夏美は、検査でカリエスリスクが高いことがわかった佳奈子が、 その割には歯を健康に保っていることに感心し、 PMTCを定期的に行って、予防に協力的したりもしていた。 が、ときどき、佳奈子は、夏美が歯のことで自分を馬鹿にしているのではないかと、 たまらない気持ちになることがあるのだった。 さて、佳奈子の、肩こりが原因だと思われた右下の違和感は、 徐々に、奥のほうに収束していった。 しかし、自分で鏡の前で念入りにチェックしても、特に異常はみられなかった。 これで明らかな痛みでもあれば、レントゲンで調べるところだが、 半年に一度、検診を受けていることもあり、佳奈子は安心してしまっていたのだった。
- 393 :番外編・萩原先生:04/09/08 03:22 ID:d8zEJrLq
その頃、佳奈子は、件の19本の虫歯の患者、香緒里の治療を担当していた。 彼女の歯は虫歯が進行しているため、神経や根の治療が多い。 歯科治療は、重労働だが、特に、根の処置には集中力が必要だ。 その日も、香緒里の2本の奥歯の根を治療することになっていた。 「んあ!あぅ!」 「我慢してー、もうちょっとだから、動かないで・・」 「あぁぁ」 「はい、よく頑張ったわ。ちょっと休憩しましょ」 1本目の処置を終え、佳奈子も少しホッとして、手を洗いに立った時だった。 ズキーン。 佳奈子の右下6番に、痛みが走った。とっさに、顔をしかめ、右頬を手で押さえる。 「えっ・・虫歯?」 ドキリとしたが、一度深呼吸をすると、痛みはほとんど消えた。
- 394 :番外編・萩原先生:04/09/08 03:23 ID:d8zEJrLq
「何だったんだろう・・」 首をかしげながら、香緒里の治療に戻った。 「じゃあ、次はこの歯をやるわね。」 ピンセットで、仮の封をはずし・・・ ズキ。 「ぁ」思わず声が出た。また、痛みが走ったのだ。 不思議そうに見つめる香緒里に微笑みかけて、ピンセットで詰めてある綿を取り出し、 深呼吸してみる。 しかし、今度は、痛みは消えなかった。 ズン、ズン、ズン、ズン・・ 痛い・・・。 根の治療など、とてもできる状態ではなかった。 急に黙り込んだ佳奈子を、夏美が厳しい目で見ていた。 佳奈子はその視線に気付くと、ふぅ、と短くため息をつき、 「ちょっと炎症が残ってるわね。薬を入れて、もう少し置きましょう。」 と、香緒里に告げた。 「じゃあ、今日は・・」 少しホッとして、しかし、不安げに香緒里が尋ねる。 「そうね、薬を入れて閉じたら終わり。あ、心配することはないわ。大丈夫よ。」 そう言うと、佳奈子は手早く薬液に漬けた綿をつめ、封をして、治療を終えた。
- 395 :番外編・萩原先生:04/09/08 03:31 ID:d8zEJrLq
香緒里を送り出し、医院内の片づけをはじめる。 今日の最後の患者は香緒里で、他のスタッフは、すでに帰ってしまっていた。 「先生」 夏美が、器具を洗浄器に入れながら、隣の佳奈子に言う。 「ひょっとして、歯・・痛むんじゃないですか?」 「え?」 内心の動揺を悟られないよう、笑顔で返した。 「右の歯でしょう。」 思わず、ぴくっとする。夏美は、さらに続けた。 「どうして隠すんですか。そんなの、歯科医として失格でしょう?」 その強い口調に、少しカチンと来て、佳奈子は言い返した。 「ちょっと頭痛がしただけよ。歯はなんともないわ。ほら。」 自分でチェックして確かめた後なので、堂々と口を開けてみせる。
- 396 :番外編・萩原先生:04/09/08 03:33 ID:d8zEJrLq
すると・・・ 「たしかに、見たところ大丈夫そう、ですね、でも」 夏美は、顔をしかめながら言った。 「先生、口臭がしますよ」 佳奈子は、とっさに口をつぐんだ。思わず、手で口を押さえた。 「その臭いは、絶対に虫歯になってますよ。ちゃんと調べました?」 夏美に言われ、口から下ろした佳奈子の手が、かすかに震える。 「そんな」 臭いでわかるわけないでしょう、と、思わず詰め寄ると、 「うっ」 夏美が顔を背けた。 佳奈子の顔が蒼白になる。 「すみません、今の、わざとじゃないんです。でも、きっと虫歯あると思います」 夏美があわててフォローした。 佳奈子は黙ったままだ。 重い沈黙が流れる。
- 397 :番外編・萩原先生:04/09/08 03:34 ID:d8zEJrLq
「そうだ、明日から、紺野先生がお見えになるそうです。」 夏美が思い出したように言った。 佳奈子の歯を治療してくれた紺野は、目標どおり、小児歯科専門医になったが、 今は大学で、主に研究をしていた。 大きなマンションが近いこの歯科医院には、夏休み、治療勧告をもらった 子供たちが、大勢やってくる。 そこで、院長は、夏休みの間、後輩である紺野にヘルプを頼んでいるのであった。 「で、今日、小児用の器具のチェックに来られるって言ってました。 ちょっと遅くなるそうですけど・・待って、診てもらったらいかがですか」 と、夏美が提案した。
- 398 :番外編・萩原先生:04/09/08 03:52 ID:d8zEJrLq
佳奈子は考えた。たしかに、あの痛みは、なんともないわけがない。 でも、見た目はなんともないのに・・・ 突然佳奈子は、痛む歯、6番はレジンで治療済みなことを思い出した。 ・・2次齲蝕? 先日治療した、香緒里の歯が、中でボロボロになっていたのが目に浮かぶ。 「そうね、そうするわ」 佳奈子は、軽くため息をついて、治療椅子に横に座った。 夏美は、棚から佳奈子のカルテを探し出し、治療台に置くと、 「私も、待ってます」と言い、そばの椅子に座った。 1時間後。紺野がやってきた。 「ひさしぶり。でも、こんな時間までどうしたの、二人とも」
- 399 :番外編・萩原先生:04/09/08 04:11 ID:d8zEJrLq
時計は8時を回っていた。 「実は・・歯がちょっと痛くて」 右頬を押さえながら、佳奈子が言った。実は、待っている間に、我慢できなくなり、 ボルタレンを1錠飲んでいたが、なんとなく痛みは消えなかった。 「ああ、それはいけないね。ちょっと見せて」 佳奈子が口を開ける。 「半年前にはなんともなかったけどね。どこ?」 「ひたの、6番です」 口を開けたまま答えると、紺野がかすかに眉をひそめた。 「佳奈子ちゃん、ちょっと、はー、ってしてみてくれる?」 佳奈子の顔が硬直する。
- 400 :番外編・萩原先生:04/09/08 04:16 ID:d8zEJrLq
「診察だから。ほら。」 紺野に促され、佳奈子は、しぶしぶ、 なるべく、息が出ないように、控えめに口を開けた。 「はー」 「いや、もっとちゃんと。」 強い口調で言われ、佳奈子は、思い切って、 「はーっ」 と息を吐いた。 「んっ」 紺野が思わず声を出す。 佳奈子は、泣きそうな顔になって、 「クサイ・・ですか」と、小さな声で尋ねた。 伏目がちに、ふっ、と肩でため息をつくと、紺野は佳奈子の顔を見た。
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