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虫歯&銀歯の女の子
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虫歯&銀歯の女の子
- 310 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:00 ID:7moe7J+I
あ、萩原先生の過去だ。 俺が作ったのとちと違う・・・ ここはちょっと目をつぶってもらって、勝手に萩原編をうp。 萩原佳奈子、29歳。 都内の歯科医院で働く、歯科医である。 卒業後、臨床一筋でやってきたので、キャリアは5年目ながら、 生来の手先の器用さもあって、今では院長にもその腕を認められていた。 ただ、佳奈子は、少々厳しいことでも有名だった。 「どうしてもっと早く来ないの。こんなになるまで放っておいて!」 「ちゃんと歯は磨いてるの。もっと大事にしないとダメ。」 患者に、つい、小言を言ってしまうのだった。 しかし、これには理由があった・・・
- 311 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:07 ID:7moe7J+I
元々、佳奈子はあまり歯が丈夫なほうではない。 子供のころは、よく歯が痛くて泣いていたものだ。 小学校に上がり、引っ越した近所の歯科医院は、当時には珍しく、 予防歯科に熱心な医師で、乳歯が虫歯だらけの佳奈子を 根気強く指導し、おかげで、永久歯になった佳奈子の口の中は、 見違えるように綺麗になった。 惜しいのは、幼稚園のときに、生えてすぐに虫歯にしてしまった6歳臼歯だが、 この歯も、上の2本は、アマルガム充填から2次齲蝕を起こし、 銀のインレーが入れられているものの、 下2本は上手にレジンが詰められており、 歯科検診でも、ほぼ、健全歯と判定されるほどであった。
- 312 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:11 ID:7moe7J+I
永久歯は、生えて数年は、虫歯にかかる危険が高いが、 それを乗り切れば、虫歯の危険はぐっと低くなる。 3ヶ月に1度通っていた予防歯科も、中学を卒業するころには、半年で1度の検診だけになった。 周囲の友人たちには、佳奈子は歯が綺麗、と褒められるようになっていた。 いつしか、佳奈子は、自分の歯が丈夫でないと言うことを忘れていた。 身についた丁寧な歯磨きだけは続いていたが、 部活や勉強が忙しく、つい、歯科からの検診のおしらせハガキを見逃してしまった。 高3の夏休みも終わろうとする頃。 朝、歯を磨いていた佳奈子は、左上の前歯の間が、少し白濁していることに気が付いた。 「やだ・・・虫歯?」 そういえば、奥歯は虫歯にならないように、と丁寧に磨いていたが、 前歯は虫歯になりにくいような気がして、少し手を抜いていたかもしれない・・・ ミラーで見ようかと思ったが、急がないと夏期講習に間に合わない。 佳奈子は医学部を目指していた。夏休みは重要なのだ。 そうして、前歯のことは、忙しい日々にまぎれていった。
- 313 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 19:14 ID:/hARO1Ts
を、萩原先生のストーリーキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! ・・そういえば、萩原先生と荻原先生といるねw 今まで気がつかなかったw
- 314 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:17 ID:7moe7J+I
時は経ち、大学入試を1週間後に控えた、冬の日のことだった。 家を出て、口から深呼吸をした、そのとき。 「前歯が、しみ・・る・・?」 気になって、何度も歯につめたい風を当ててみる。 最初、少し痛いような気がしたが、そのうち、気のせいか、と思えてきた。 夏休みに、白濁を見つけたことなど、忘れていた。 入試が近づいて、ナーバスになっているのだろう。なにより、歯医者に行くような暇はないのだ。 そうしてまた、前歯の虫歯は、ひっそりと佳奈子の意識下に潜ったのだった。
- 315 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:19 ID:7moe7J+I
佳奈子は大学生になった。医学部は落ちてしまったが、歯学部には見事合格し、 歯医者を目指して勉強することになった。 念願の一人暮らしも始め、昼間は授業、バイト、夜は飲み会、と、充実した日々を送っていた。 しかし、歯にとっては過酷な日々だった。 栄養はどうしても偏りがちになるし、お昼をお菓子で済ませることもあった。 昔からは考えられないことだったが、夜、飲み会で酔ってしまい、家に帰って歯も磨かずに 寝てしまうこともあった。 そんな初夏のある日。いつものように、友人たちと飲みに出かけ、 「暑いときはこれに限る」とばかりに、冷たいビールに口をつけた瞬間だった。
- 316 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:25 ID:7moe7J+I
「っ!!」 佳奈子の前歯に激痛が走った。思わずグラスを取り落とす。 「どうしたの?」 心配して見つめる友人たちに、 「あはは、手がすべっちゃった」 と笑ってごまかしてみせた。歯学部の友人に、歯が痛いとは、言えなかった。 その夜、早めに帰宅した佳奈子は、鏡の前で、おそるおそる口を開いた。 いーっ、とやってみる。 左上前歯、1番と2番の間に、かすかに茶色い点が見えた。 歯がぴっちりと綺麗に並んで生えている佳奈子の歯では、間の様子はそれ以上見えない。 そこから周囲に向かって、ややうっすら黒い?ような気がしたが、 洗面所のやや薄暗い光の下では、鏡から遠ざかってみると、きれいな歯に見えた。
- 317 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:27 ID:7moe7J+I
少しホッとしながら、裏側もチェックしてみることにする。 予防歯科でもらったミラーは、実家に置いて来てしまった。 仕方なく、ポーチから手鏡を持ってきて、歯の裏に当ててみた。 歯の裏側を、鏡にうつしてみると・・・ 歯の間が、真っ黒になっていた。黒ずみは、両方の歯の中心近くまで広がっている。 動悸が激しくなるのを感じた。 「そんな・・・」 前から見ると、ほとんどなんともないのだ。 もう一度、鏡にうつす。間違いであってほしいと願ったが、やはり、黒かった。 爪でこすってみても、取れない。そのうえ、爪に少し、ひっかかりを感じた。 顔を近づけ、目をこらすと、1番の方には、小さな穴も開いている。 間違いなく、虫歯だった。
- 318 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:33 ID:7moe7J+I
「どうしよう・・」 母親の、差し歯が目に浮かぶ。歯はやけに白いが、歯ぐきがやや黒ずんでいて、 佳奈子はそれを見るたびに、「差し歯にだけはなりたくない」と思っていたのだった。 それなのに・・・ 佳奈子の目から、涙がこぼれた。 前から見たら、なんともないのだから、案外大したことはないのかもしれない。 早く歯医者に行って、治してもらおう。 そう思うものの、もし、差し歯になってしまったら、と思うと、怖くて決心がつかなかった。 その夜、歯医者に行く夢を見た。 「差し歯にするしかないですね。」と言われたうえ、気が付くと、乳歯の頃のような、 虫歯だらけの口に戻っていた。予防歯科の歯医者が、悲しそうな顔で見ている。 目が覚めて、佳奈子は、泣いていた。
- 319 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:37 ID:7moe7J+I
結局、歯医者には、行かなかった。怖かったのだ。 バイトや授業で忙しい、と言い訳をしながら。 飲み会は少し減らし、 今さら遅いとわかっていながら、歯磨きも念入りにやった。 相変わらず、冷たいものがあたると激痛が走ったが、 うまく、右側を通して流し込む術もおぼえ、夏が過ぎていった。 秋になるころ、佳奈子の2番目の前歯は、光の当たり方によっては、黒ずみが表からも見えるようになっていた。 鏡を見ては、ため息をつく日々だった。疲れてくると、たまに痛むような気もした。
- 320 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:45 ID:7moe7J+I
ある日、前期の試験の打ち上げがあった。 クラスの面々だけでなく、授業で教授のアシスタントをしていた、紺野という若い歯科医も参加していた。 紺野は、しゃべり方も穏やかで、小児歯科を目指している、と言っていた。 クラスメイトの間では、やや物足りない、少し年上すぎる、という意見が多かったが、 佳奈子は、少し紺野を意識して、女のクラスメイトたちと、彼の近くに座った。 実際に飲み会で話してみると、紺野は意外とおもしろく、佳奈子はますます彼が気になっていた。 そのとき。向かいに座っていた由美子が、突然、 「佳奈子。いーってしてみて?」 と言い出した。 「前歯、黒くなってる気がして。虫歯じゃないの?前歯は早く治したほうがいいよ。」 佳奈子は思わずびくっとして、 「何よ。変なこと言わないでよ」 と言ってしまった。紺野の前でそんなことを言われたのが、たまらなかった。 「別に、そんなつもりじゃなかったんだけど。ごめんごめん」 由美子は屈託なく笑い、別の話題にさっさと移っていった。 動悸が激しくなっていた。
- 321 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:53 ID:7moe7J+I
飲み会の帰り、気を利かせたクラスメイトたちは、佳奈子と紺野を残し、カラオケに行ってしまった。 「一緒に行きましょうか?暗いし。」 紺野は、佳奈子と一緒に歩き出した。 教授のうわさや、高校のことなど、当たり障りのない話をして、歩いていった。 「ところで。」 大学の門のそばの街灯の下で、紺野は立ち止まった。 「さっきのことだけど。」 佳奈子は、なに?という顔をしてみせた。 「前歯、早く治したほうがいいよ。けっこう進んでると思う。」 すうっと血の気が引いた。気付かれていた。よく考えると、紺野は歯科医だ。気付かないわけはなかった。 「見せてごらん」 逃げそうになる佳奈子の手首をつかむ。 「放っておくほど、虫歯は悪くなるんだから。」 諭されるように言われ、佳奈子は体の力を抜いた。おとなしく、少し上を向く。
- 322 :番外編・萩原先生:04/09/06 19:57 ID:7moe7J+I
紺野の指が、佳奈子の唇をめくった。 「あぁ。痛むんじゃない?これは。」 佳奈子が首を振る。「しみる、くらいです」 「・・・そう。もうちょっとちゃんと診たいんだけど、今、いいかな? 研究室のところに、ちゃんとユニットもある。僕はほとんど飲んでないし、診るだけだから大丈夫だよ」 予想外の展開に、佳奈子は体を固くした。 「歯医者が怖いかもしれないけど、僕も怖いかな。平気でしょ?」 紺野は優しく言って、微笑みかける。 さすが小児歯科を目指すだけあって、話の持って行き方がうまかった。これでは、頷かざるを得ない。 「じゃ、行こうか」 こんなふうに、二人きりになろうとは。 建物をカードキーで開けて入っていく紺野に着いて行きながら、紺野に歯を見られて恥かしい気持ちと、 ようやく治療ができるという安心感と、差し歯への恐怖感に、少し混乱していた。
- 323 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:01 ID:7moe7J+I
「ここだよ。どうぞ。」 紺野に招き入れられた部屋の真ん中には、歯科医の椅子が置かれていた。 「口、ゆすいでいいですか」 さすがに、飲み会の後の口の中をそのまま見せるのはイヤだった。 「あぁ、そこに座って、ユニットのを使って。コップは・・はい、これ。」 使い捨てのコップを渡された。 佳奈子は靴を脱いで、ユニットに上がり、口を丁寧にゆすいだ。 「じゃ、いいかな?」 滅菌器から器具を取り出した紺野が、横に座る。 「はい。お願いします。」 佳奈子が答えると、紺野はちょっと微笑んで、椅子のスイッチを押した。 うぃーーーん。 椅子が倒されていく。 「じゃ、ちょっと見せてね。とりあえず、あーん」 ミラーを手にした紺野に促され、佳奈子は口を開く。 「うん、だいたい綺麗だね。小さい虫歯が1,2本あるけど、大丈夫。綺麗な歯だよ。」 ほめられて、佳奈子は少し力を抜いた。
- 324 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 20:12 ID:Sb9IXeKW
やべー、本編に安易に萩原先生の過去入れるんじゃなかった。 すごい本格的だよー・・。
- 325 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:14 ID:7moe7J+I
「じゃ、前歯見るよ。」 ミラーが前歯の内側に当てられた瞬間、紺野の顔が少し険しくなった。 「うーん。これは思ったより進んでるね。前から見るよりも、裏はかなりひどいよ。」 佳奈子の顔が歪む。 台の上の探針に手を伸ばしかけた紺野が、佳奈子の表情に気付いた。 「まだ、怖いのかな?」 佳奈子は、思い切って言ってみた。 「歯医者が怖いんじゃないんです。予防歯科に通ってて、慣れてるから。ただ・・」 「ああ、歯は綺麗だったものね。ただ、どうしたの?」 「差し歯・・差し歯になるのが怖くて」 佳奈子はすがるような目で、紺野を見た。 ふう、ため息をつき、紺野はミラーを置いた。 椅子も起こされ、佳奈子は紺野と向かい合う形になった。
- 326 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:18 ID:7moe7J+I
「えっと・・萩原・・・佳奈子ちゃん、だっけ。」 「はい。」 「はっきり言うね。」 「ハイ。」 緊張した雰囲気に、佳奈子の声が震える。 「残念だけど、この前歯は、差し歯になるのは避けられないと思う。」 佳奈子は、頭を殴られたような気がした。 心のどこかで覚悟はしていたが、現実を突きつけられると、やはり、辛かった。 「あと2ヶ月早ければ、差し歯にせずに治せたかもしれないけど」 2ヶ月。やっぱり、あの、激痛が走ったときに歯医者に行っていればよかったのだ。 後悔で、涙がじわっとあふれてきた。
- 327 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:22 ID:7moe7J+I
「ただね。差し歯って、たぶん、お母さんか何かのを想像してると思うんだけど、 あの、ふちが黒くなってて、変に白い、あれ。」 こくり、と佳奈子が頷く。 「最近のは、もっと見た目も自然なのがちゃんと作れるんだよ。 だから、そんなに怖がらなくてもいい。」 心をほぐすように、紺野が続ける。 「ほら、僕もここ、差し歯なんだけど」 右上1番を指差し、にっ、と笑う。 それは、周りの歯と見分けがつかなかった。 「えっ・・わからなかった・・虫歯ですか?」 「僕は、スキーでぶつかって折れちゃったんだけどね。かっこ悪いだろ?」 微笑む紺野に、佳奈子もつられて笑った。 「でも、虫歯も、根っこさえちゃんと残ってれば、 差し歯はかっこ悪くないのができるから。大丈夫。ね?」 佳奈子は頷いた。 差し歯になるのは、まだやっぱりショックだったが、あの差し歯にはならないのだ、 と思うと、少し気が楽になった。
- 328 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:27 ID:7moe7J+I
「じゃあ、ちゃんと治療できるね?」 はい、と答えたものの、こちらでは、いい歯医者がどこかわからない。 「あの・・大学病院でも診てもらえるんですか?」 と聞いた。 「ああ、もちろん。学生はほとんど無料で治療できるよ。 教授には紹介が必要だけど、僕でかまわなければ、僕が診るよ。」 好意とは別に、さっきからの様子に、紺野に診てもらえれば、安心できる気がした。 「お願いします。」 佳奈子がそう言うと、 「じゃあ、さっそく、明日の朝、病院の方に来て。」 と、紺野が指示する。 しかし、明日は友達と遊びに行く約束だった。 「大学は休みでしょ?それに、1番の歯、そろそろ痛み出すと思うから、早いほうがいいよ。 前歯の痛みは辛いらしいし、痛みが出たら、根の状態も急に悪くなるしね。」
- 329 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:31 ID:7moe7J+I
痛いくらいなら、ま、我慢すればいいわ。 差し歯への恐怖が薄れた佳奈子は、根の話は耳に入らなかった。 結局、地元から友達が出てくる、と言って、治療はその次の日に延ばしてもらった。 紺野は、心配だったのか、 「痛くなったら連絡して。」 と、携帯と、構内の内線電話の番号をくれた。 次の日。このところ、気にかかっていた前歯のこともやや進展し、試験も終わって、 佳奈子は、ひさしぶりに、晴れ晴れとした気分で遊んでいた。 夜、シャワーを浴びていると、トクン、トクン、と、脈にあわせて、 1番の前歯に、少し不快感が出てきた。 「ん・・・まあ、痛いわけじゃないし。」 と、そのまま眠りについた。
- 330 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:38 ID:7moe7J+I
・・・ドクン、ドクン、ドクン、ズキン!ズキン! 佳奈子は、歯の痛みで目が覚めた。時計を見ると、5時だった。 叫び出したくなるような痛みではなかったが、頭が痛くなってくる。 「はあ。紺野先生、怒るかなあ」 早いほうがいい、と言っていた、紺野の顔を思い浮かべた。 「あ、そうだ、電話!」 さすがに早すぎると思い、6時まで待ってから、紺野に電話をかける。 「はい。」 「あの・・萩原ですけど。起こしちゃいましたか?」 「ああ、佳奈子ちゃんね。もう起きてるよ。どうしたの?痛み出した?」 「・・・はい。」ほらみろ、と言われるかと思ったが、 「大丈夫?我慢できる?治療は8時からだけど、7時半から開いているから、早めにおいで。」 優しく言われただけだった。
- 331 :番外編・萩原先生:04/09/06 20:48 ID:7moe7J+I
7時半に行ってみると、紺野はすでに待っていた。 マスク姿を見るのは初めてだ。少し怖い感じに思える。 言われるままに、レントゲンを撮りに行き、戻って、ユニットに座る。椅子が倒された。 「はい、見せてごらん」 おとなしく口を開ける。 「あー、これは痛いね。でも、ちょっと我慢してくれる。」 と言うと、指で、1番をとんとん、と叩いた。 「っうぅぅ」 歯だけでなく、目の奥まで痛みが走り抜けた。 「もっかい」 次に、2番を叩いた。 今度は、歯の中がぼわん、と痛んだだけだった。 「どうかな。」 佳奈子が痛みかたを伝えると、今野は、難しい顔になった。 「うーん。とりあえず、こっちの1番からやろう。削って、ちょっと根の状態を確認するね。」 目で頷く。
- 332 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:14 ID:7moe7J+I
根の状態?佳奈子は、なにか大事なことだったような気がして、 一生懸命考えていた。 先日の夜とは違って、今日は、衛生士や助手もたくさんいる。 助手が、麻酔のシリンジを、紺野に手渡した。 「はい。ちくっとするけど、我慢して。」 しばらくして、麻酔が効くのを待って、治療が始まった。 「見にくいから、視野確保して。リトラクター。」 「はい。」 佳奈子の唇に、プラスチックの器具がはめられた。口が大きく開けられ、歯茎がむき出しになる。 「!」 恥かしい、と思って、紺野の顔をとっさに見たが、 紺野は、真剣な顔で、タービンにチップを装着し、佳奈子の目を見て、大丈夫だよ、というふうに微笑むと、 チュイーン と音をさせて、佳奈子の歯を削りにかかった。
- 333 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:22 ID:7moe7J+I
キュイーン、キュィーン。 まずは、1番と2番の間から。次に、裏側へ。進むにつれ、紺野の顔が険しくなる。 「んー、思ったよりも中に進んじゃってるなあ。痛いけど、我慢してね・・」 佳奈子の脚がもぞもぞしているのに気付いてか、紺野は釘をさすように言った。 「ああぁぁぁん、あああぁ、あぁぁ!」 佳奈子が泣き出した。 「ん、もうやめるから」 すぐに、タービンの音が消えた。 「よく頑張ったね。」 紺野はなぐさめながら、泣きじゃくっている佳奈子の口から、リトラクターをはずした。 透明な唾液が、つーっ、と糸を引く。 「とりあえず、口ゆすいで。」 椅子を起こす。
- 334 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:29 ID:7moe7J+I
思ったよりも、削る時間は短かったな・・・<BR> 舌で確かめてみると、意外と穴も小さいようだ。佳奈子はホッとした。<BR> 口をゆすいで、姿勢を戻すと、紺野が、マスクを顎にはずし、佳奈子の方を見ていた。<BR> 「1番の、治療なんだけどね。」<BR> 少し、厳しい顔で話し始める。<BR> 「思っていたより、深くまで進んでるんだよ。2番の方が、前も黒くなっていて気になっただろうけど、<BR> 1番は、虫歯が中に向かって進んでいたんだね。こっちの方が、ひどい虫歯だよ。」<BR> どうやら、深刻な話だ。佳奈子は体を固くして、頷く。<BR> 「で、今、ちょっと削ってみたんだけれど、中が大きくやられてる。おそらく、根っこまで。」<BR> 根っこ。佳奈子は突然思い出した。<BR> “根っこさえちゃんと残ってれば、差し歯にできる。”と、紺野が言っていたのだった。<BR> じゃあ、根っこがない場合は・・?
- 335 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:31 ID:7moe7J+I
ん?昨日のにもこんなのあったけど、何だコリャ 思ったよりも、削る時間は短かったな・・・ 舌で確かめてみると、意外と穴も小さいようだ。佳奈子はホッとした。 口をゆすいで、姿勢を戻すと、紺野が、マスクを顎にはずし、佳奈子の方を見ていた。 「1番の、治療なんだけどね。」 少し、厳しい顔で話し始める。 「思っていたより、深くまで進んでるんだよ。2番の方が、前も黒くなっていて気になっただろうけど、 1番は、虫歯が中に向かって進んでいたんだね。こっちの方が、ひどい虫歯だよ。」 どうやら、深刻な話だ。佳奈子は体を固くして、頷く。 「で、今、ちょっと削ってみたんだけれど、中が大きくやられてる。おそらく、根っこまで。」 根っこ。佳奈子は突然思い出した。 “根っこさえちゃんと残ってれば、差し歯にできる。”と、紺野が言っていたのだった。 じゃあ、根っこがない場合は・・?
- 336 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:36 ID:7moe7J+I
お、大丈夫だ ワードから貼り付けてんだけど・・ま、いいや、続き 「だから、1番は抜かなきゃならないよ。」 歯を抜かないといけない。しかも、前歯を。自分が虫歯にしてしまったせいで。 歯医者に行かずに、放っておいたせいで。 頭がくらくらした。 「あの・・じゃあ、差し歯は・・」 「そう。差し歯にはできないんだ。」 「入れ歯・・・?」佳奈子は、涙声になっていた。 「大丈夫。入れ歯にはならないよ。ブリッジって言って、両端の歯にかぶせ物をして、 その歯で支えるように、つないで歯を入れる。」 父親の奥歯にあった、3連の銀歯を思い出した。 「見た目は・・?」 「それは、普通の差し歯とおんなじだよ。心配いらない。」 佳奈子は、黙ってしまった。
- 337 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 21:43 ID:siUjlSVV
今後は、こっちでどうぞ。 えっちねたロビー http://sakura01.bbspink.com/hneta/
- 338 :名無しさん@ピンキー:04/09/06 21:50 ID:Sb9IXeKW
>>337 行為はしてないだろ。フェチ板でいいはずだ。
- 339 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:56 ID:7moe7J+I
「まだ18歳だし、歯を抜かないといけないのは、つらいだろうけど・・・」 紺野が静かに言う。 「抜かなきゃいけなくなったのは、しょうがないんだ。きっちり治すから。佳奈子ちゃんも頑張ろう。」 佳奈子は、こくり、と頷いた。 「何か、聞きたいことはない?」 「抜いた後・・歯抜けにはならないですよね?」 「ああ、そりゃ、気になるよね。」紺野は笑った。 「大丈夫、仮の歯を作ってはめるから。案外、よくできてるよ。ぱっと見わからないくらい。」 「両端の歯って、右の1番と、左の2番ですか。右の1番は、なんともないんですけど・・」 紺野の顔から、微笑が消えた。 「うん、それはしょうがないんだ。なんともない歯を削るのは悲しいだろうけど、 ブリッジの端の歯には、真ん中の歯の分も力がかかるから、負担がかかる。 右の1番はしっかりしてるから、その点、大丈夫。」 一瞬、佳奈子の顔に浮かんだ不安をさえぎるように、紺野が続ける。
- 340 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:56 ID:7moe7J+I
「問題は、左の2番なんだけどね。 差し歯になるはずだったから、削ってかぶせるのに抵抗が少ないだろうけど、 もともと、2番もかなり虫歯が進行してるからね。自分だけならいいけれど、 たぶん、隣の歯を支えるのは、負担が大きいと思う。」 「だけど、根はあるんですよね」 佳奈子は、自分の頭に浮かんだ考えが、間違っていますように、と祈った。 「うん、ある。でも、隣の歯を支えるほどの力はないんだよ。」 「・・・」 「2番はブリッジの端にはなれない。だから、ブリッジの支えは、右の1番と、左の3番にしようと思ってる。」 「それじゃあ、2番は・・・」 どくん、どくん、どくん、どくん、 佳奈子の心臓は、激しく打っていた。
- 341 :番外編・萩原先生:04/09/06 21:57 ID:7moe7J+I
「・・・残念だけど、抜くことになるね。」 鼓動は強く感じられるのに、頭からは血の気が引いていく感じだった。 歯を2本も抜くなんて。 さらに、そのために、虫歯じゃない歯を2本も削らないといけない。 どうしてすぐに、歯医者に行かなかったんだろう。 「大丈夫?」 紺野がハンカチを差し出し、顔を覗き込む。 佳奈子の頬には、涙が流れていた。 「落ち着いたら、歯を抜くよ。・・もちろん、次回でもいいけれど。」 呆然としたまま、佳奈子が頷く。 「その後は、仮の歯を入れて、しばらく抜いたところを落ち着かせる。で、口の中の型を取って、 両端の歯を削って、そこの型を取って、ブリッジを作って、終わり。ただ、前歯だから、 最終的にはめる前に、一度、色あわせとかしようね。大丈夫。ちゃんと、綺麗になるから。」 紺野が、ゆっくりと説明する。 佳奈子は、黙って頷いていたが、目をつぶって深呼吸すると、ぱちっと目を開け、 「よろしくお願いします。」 と頭を下げた。
- 342 :番外編・萩原先生:04/09/06 22:02 ID:7moe7J+I
その後、佳奈子の左上1番2番は抜歯され、右上1番から左上3番の、4連ブリッジとなった。 紺野が言ったように、前からの見た目は、他の歯とほとんど見分けがつかないくらいだったが、 歯の裏は・・・ 佳奈子は、大学時代、舌が裏側の金属に当たるたびに、あのときの後悔を、思い出していた。 最近、どうも、右下の6番が、痛いような気がする・・・ 「肩こりかな。そろそろ、30だし」 佳奈子は、なぜか、あのときの後悔を忘れ始めていた・・・ 以上です。長々とすみませんでした。 ホントは、萩原先生虫歯が痛くて美人助手にいじめられる、っていうストーリーを考えてたんだが、 前振りのつもりの前歯編で、つい、力が入って・・・ 差し歯好きなんだよ〜
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