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虫歯&銀歯の女の子
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虫歯&銀歯の女の子
- 615 :香緒里・高校生編:04/09/17 18:14:17 ID:RR9eErrI
ちょっとマンネリだったので、新しいのかいちゃいました。 読みきりなので許して。 桜野高校の昼休み。 2年B組の大野香緒里は、廊下で、担任の真鍋先生に声をかけられた。 「大野さん。」 「はい。」 「大野さん、このあいだの歯科検診の日、お休みだったわよね。」 「ええ・・風邪を引いてしまって」 「今日、歯科検診をお休みした人のために、もう一度、歯科の先生が来て下さってるの。 今から保健室に行ってもらえる?」 香緒里の顔が、一瞬強張った。 「大丈夫よ、一人じゃないから。けっこうたくさんいるみたいよ。 私が養護の先生に怒られちゃうから、ちゃんと行ってね。」 「はい・・・」 香緒里は、重い足取りで保健室に向かった。 歯医者の嫌いな香緒里が最後に歯医者に行ったのは、小学校4年生のときだった。 その後も、年に一度の忌まわしい歯科検診で、虫歯は見つかっていたが、 「歯科受診のおすすめ」を親に渡さないという方法をおぼえ、そのまま放置していた。 しかし、高校に入ってからは、歯科検診の日に休めばいいんだ!と思いつき、 去年と今年の歯科検診をパスしていた。今年もうまくいったと思ったのに・・・・ なんで検診をもう一度やるなんてことになったのだろう。しかも抜き打ちで! 「失礼します」 保健室に入ると、すでに10人ほどの生徒がいて、皆、暗い顔をしていた。 養護教諭の牧野が、香緒里を見つけてやってきた。 牧野は、オールドミスと陰口を叩かれる、怖い中年の女性だった。
- 616 :香緒里・高校生編:04/09/17 18:19:56 ID:RR9eErrI
「はい、クラスと名前。」 「2年B組の大野香緒里です」 「大野さんね・・・」 健康診断簿の中から、香緒里のものを抜き出した牧野が言った。 「大野さん、去年も歯科検診、休んでるわよね。見られたくないものでもあるのかしらね。」 「いえ、風邪を・・」 「ま、いいのよ、どうせわかることなんだから。中学から送られてきているあなたの健康診断書に、 未処置の虫歯があるって書いてあるのよね。どうせ治してないんでしょ」 香緒里が無言なのを見て、牧野はさらに得意そうに続けた。 「歯科検診の日は、いつもより、欠席者がちょっと多いのよ。で、ピンと来たわけ。 今年から追加検診を、いきなりやることにしたの。正解だったわ。 今のところ、5人終わったけど、欠席した生徒の方が、口腔状態がひどいのよね。 あなたもその口でしょう。」 香緒里は、うつむくしかなかった。 「うまく逃れたって思ってただろうけど、私の目だって節穴じゃないのよ。 でも、あなたたちの健康のためにやってることだから、ね? まあ、うちの学校は、生徒の自主性を重んじる、って主義だから、結果を家に送ったりはしないわ。 それでどうなっても、あなたの責任だから。でも、自分の歯の状態は知っておいてもらいたいの。」 そこで、次の生徒が入ってきたので、お説教は終わりになった。 歯医者に行かされるわけじゃないなら、いいかな・・と、楽天的な香緒里は思い始めた。 みんな、歯科検診逃れなのね。そう思って周りを見ると、皆、バツの悪そうな顔をしている。 香緒里よりもふたり前に並んでいるのは、去年同じクラスだった、麻衣だ。いつも威張っていて、嫌いだったのだが、 今は泣きそうな顔をして、おとなしい。ちょっと、いい気味だ。 その前にいるのは、同じクラスの雅子。文芸部で、おとなしく、真面目な子、くらいにしか思っていなかったが、 彼女も、歯医者が嫌いなのかな・・・ほとんどしゃべらないし、笑わないので、どんな歯をしていたかなんておぼえていないが。 そのとき、 「やっぱり、嫌ぁっ」 という悲鳴が聞こえた。歯科医の前の椅子に座るのをいやがっているようだ。助手らしき女性に、腕をつかまれている。
- 617 :香緒里・高校生編:04/09/17 18:21:06 ID:RR9eErrI
「なんにもしないから。診るだけだから。」 よっぽど嫌なのかしら、と、声を上げている生徒をみると、一学年上の、中野香織だった。 香織は、顔がかわいく、成績も優秀、スポーツも得意、と、下級生の憧れの的だった。 香緒里も、名前が似ているので、少し気になっていたのだが。 まわりも、自分のことを忘れ、アイドルの運命を、やや興味津々で見守っている。 牧野と助手に腕をつかまれ、椅子に座らされると、助手が、後ろから、容赦なく香織の口を開けさせた。 「ほーぅ。」 歯医者が、感心したように言った。 「こりゃひどい・・かわいい顔してても、歯がこれじゃねえ」 香織はすでに、硬直してしまっている。香織を見つめる生徒たちの視線に、少し残酷な光が混じった。 「じゃ、左上から・・7番C3、6番さんかく、5番C3、4番C2、3番斜線、2番C2、1番C2、右行って1番C1,2,3、4斜線、5番C3、6番さんかく、7番C2」 それはさすがにひどいわ。虫歯だらけじゃない。と、香緒里は思っていた。数年後、虫歯を放置した自分が同じような状況になることは、想像もしていない。 「下行って、8番C2、7番C3、6番C3、5番C2、4番まる。3番まる。2番から左下4番まで斜線。5番C2、6番C3で7番まる。8番C2、以上です」 香織は泣き出してしまったが、歯医者はそれにかまわず、言った。 「ボロボロだね。特に、詰め物が取れたのを放置したり、治療の途中でやめるのは良くないな。これだと、30前に入れ歯だよ。 気付いてないかもしれないが、虫歯やら膿やらで、口もかなり臭いよ。かわいい顔が台無しだ。」 涙を拭きながら出て行く香織を、皆が哀れみの目で見送った。 「はい、次。」 そうだ。自分も検診があるのだ。そして、他の生徒に聞こえているのだ。ということに、気が付いた。そっちの方がやだな・・・ 「ねえ、あなたも、歯科検診、わざと休んだの?」 前に並んでいる生徒に聞かれた。どうやら、3年生だ。
- 618 :香緒里・高校生編:04/09/17 18:21:41 ID:RR9eErrI
「・・はい。」 「そうなんだ。別に、歯科検診なんて、たいしたことじゃないじゃん。私は法事があって休んだけどさ、そんなに嫌なものなの?」 「歯医者に行かされるのが、嫌で」 「へえ。私、生え変わるときに奥歯抜きに行ったくらいだから、わからないや。 ま、怖いもの知らずの香織も、あんなに放っとくくらいだから、嫌なとこなんだろうね」 彼女は、興味深そうに言った。たしかに、歯も丈夫そうだ。 「中野さん、かわいそうでした・・」 「ん?でも、香織の口が臭いのは、クラスでは有名だよ。 最近、彼氏に振られたらしくて、本人は理由がわからないとか悩んでるけど、私らに言わせれば、 口が臭いせいだと思うなあ。ちょっとキスとか無理だよね。内緒話もけっこうキツいもん。 前歯も黒くなってるし、治せばいいのに。」 彼女は、他人の不幸は蜜の味、というように、少しおもしろそうに言った。 「そこ、静かに。」 牧野に注意されたので、2人で顔を見合わせて、口をつぐんだ。 雅子の番になった。後ろがさわがしくてよく聞き取れなかったが、どうやら、前歯がかなり虫歯らしい。 「女の子なんだから、ちゃんと治さないと。」と歯医者に言われている。 「そういう、女の子だからとかいうの、良くないと思います」雅子が抵抗するが、牧野に、 「女の子だからとか関係なく、そんな前歯、さっさと治しなさい!見た目が汚らしいのよ!」 と、怒られ、おもしろくなさそうに、保健室を出て行く。 前歯が虫歯になったら、さすがに治すわよ、みっともないもん、と、思う、高校2年生の香緒里であった。
- 619 :香緒里・高校生編:04/09/17 18:37:22 ID:RR9eErrI
次は麻衣だ。 「おねがい、します」 礼儀正しい麻衣に、歯科医は満足そうだ。 「はい、じゃ、口開けてー。もっと大きく開けてもらえるかな」 すかさず、助手がうしろから口を開かせる。 「まあ、それほどでもないけどね、この、6歳臼歯の銀歯、3つも取れちゃってるけど、いつ取れたの」 「中学2年のときと・・・去年です」 「中学のはこっちかな。ずいぶん放っておいたね。歯が欠けて、なくなっちゃってるよ。」 「歯・・抜かれちゃうんでしょうか」 「この、古いのは抜くことになるかもしれないね。」 麻衣が、体を硬くするのが後ろからでもわかった。 「ま、とにかく、歯医者に行かないと治らないから。ちゃんと行くんだよ。」 「ありがとうございました・・」 抜くなんて、大変そうだけど、あんまり虫歯なくて、正直、つまらない、と香緒里は思った。 次は、歯の丈夫そうな3年生の番だ。早く終わりそうだ・・・その次が・・・香緒里は、緊張してきた。 たしか、中3の歯科検診では、奥歯が5本くらい虫歯だと言われた気がする、と、頭の中で考える。 特に痛いところは、ない。舌で、歯を触って確認していく。 ああ、左上の銀歯が、このあいだ、キャラメルを食べていて、取れてしまったのだった。でもこれは虫歯って言わないかな。 あと、前歯の間が一箇所、ひっかかるような気がするけど、気のせいかも。 と、都合よく考えていると、前の3年生が歯科医に注意されているのが聞こえてきた。 「まあ、歯の丈夫な人は、歯磨きも雑になるからね。どうしても多いんだよ。若くても。 歯周病っていうと、歯槽膿漏のことだからね。ちゃんとケアするように。」 彼女は、うなだれている。 この人、歯槽膿漏だったんだわ。思わず、冷たい目で見てしまったようで、 帰り際、目が合った彼女は、視線を伏せて、逃げるようにして、帰って行った。
- 620 :香緒里・高校生編:04/09/17 18:37:49 ID:RR9eErrI
「はい、次。」 いよいよ香緒里の番だ。 覚悟を決めて、口を開ける。 「んー、たいしたことなさそうだけど・・・ああ、でも、ちょこちょこ虫歯を溜め込んでるね。」 歯科医の言葉に、鼓動が速くなる。 「じゃ、左上から行きます。7番、C1。6番、C3。5番、C1。4番3番斜線、2番C2。1番から右の4番まで斜線、5番C1、6番まる、7番斜線。」 ときどき、カリカリカリ、と、探針で引っかかれるたびに、びくっとする。 「下行って、7番斜線、6番まる、5番C1、4番まる、3番から左の4番まで斜線、5番C1、6番まる、7番斜線、です」 口を閉じると、ミラーの消毒液の匂いが口の中に広がった。 「まず、つめものが取れたら、すぐに歯医者に行くこと。放っておくと、虫歯が大きくなるし、 大きい虫歯になると、そこから虫歯が口の中に広がっていきやすくなるからね。」 つめなおしてもらうだけで済むなら、行くわよ、と、香緒里は思っていた。 「ひどいのはないんだけどね、歯の間に小さい虫歯が多いね。 ちゃんと歯が磨けてないんじゃないの?」 そう言って、歯科医は笑った。香緒里は、カッと赤くなった。こういうことを言われるから、行きたくないのだ。 「こんなに虫歯があったら、恥ずかしいよ。彼氏にも嫌われるよ」 「彼氏なんて、いません。」 「そりゃよかった。彼氏ができて恥ずかしい思いをする前に、早く治すんだね。きっと長くかかるからね。」 このセクハラおやじめ、と、香緒里は、椅子から立った。 彼氏に、歯なんか見せるわけないでしょ。 女子校育ちで、まだ彼氏のいない香緒里は、そんなことを思いながら、保健室を出た。 1ヵ月後。「歯科受診のおすすめ」の紙が配られた。 未処置 7本 と、くっきり書かれているのを見たときは、一瞬胸が痛んだが、 帰り道、駅のゴミ箱に、丸めて捨ててしまい、香緒里は、歯のことを心の中から、消し去った。
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