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   虫歯&銀歯の女の子   
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    虫歯&銀歯の女の子   
  
- 1 :名無しさん@ピンキー:04/07/19 16:12 ID:8MZmTy88
 -  こんな子に激しく萌えます 
    
 
  
- 511 :岸利徹:04/09/10 00:08 ID:GLO3eQKX
 -  岸利徹 
 
  
- 512 :岸利徹:04/09/10 00:26 ID:GLO3eQKX
 -  岸利徹 
 
  
- 513 :岸利徹:04/09/10 00:27 ID:GLO3eQKX
 -  岸利徹 
 
  
- 514 :名無しさん@ピンキー:04/09/10 00:57 ID:aTWVm/TO
 -  >>485-&490 
  でも、書き始めると、なんだか乗っちゃって、こんな風になっちゃったりするんだよね   みんな、萩原先生に思い入れ強すぎ・・      >>492   うーむ、それは辛い・・      とりあえず今晩のオカズになんか書こうっと 
 
  
- 515 :夏美編:04/09/10 03:51 ID:dPR3aBQk
 -  >>490の続きです。 
     「ならいいけど・・」   佳奈子は、心配そうだ。   「何か強いストレスがかかってるとか・・ドライマウスではない?」   「いえ、大丈夫です。」   「最近飲んでる薬、ある?」   「ないです・・・」   「じゃあ、どうしたのかしら・・」   たぶん、自分の不摂生だ、と、夏美は思っていた。   これまで、歯が丈夫だと自信を持って、いいかげんにしてきたツケが回ってきたのだ。   虫歯になるのが、こんなにショックだとは。   しばらく、夏美は、治療ユニットの上で、呆然としていた。   「・・大丈夫?」   黙り込んでいる夏美の顔を、佳奈子がのぞきこんだ。   「他のスタッフも帰ったし、ちゃんとチェックしたいんだけれど、いい?」   夏美が、歯を自慢にしていることは、医院内でも有名であった。   その夏美が虫歯になってしまったことを、他のスタッフに知られるのは嫌だろう、という佳奈子の配慮だった。   「すみません、・・・お願いします」   虫歯の状況を知るのは怖かったが、覚悟を決めた。   「じゃ、椅子倒すわね。」   うぃーーーん。 
 
  
- 516 :夏美編:04/09/10 03:52 ID:dPR3aBQk
 -  この椅子が倒れていく音でさえ、患者には怖いかもしれない、ということを知った。 
  「はい、お口開けて・・」   ライトが当てられる。自分の口の中が暴かれると思うと、たまらなくなって、目を閉じた。   「もっと楽にして。じゃ、見せてね。」   右上から、佳奈子が丹念に見ていく。時折、カルテにメモをしたり、   探針でカリカリ、と引っかいているのがわかる。恐る恐る目を開けてみると、   佳奈子が眉根を寄せ、厳しい顔をしていた。   「はい、いいわ。」佳奈子が体を起こし、椅子も起こしてくれた。   ずいぶんと長い時間に感じられた。緊張で、口の中がカラカラだった。   コップの水でうがいをしてみる。冷たい感じのするコップだ・・・よく考えると、初めての経験なのだった。   「えっとね・・」話し出す佳奈子の顔を、じっと見た。   「治さなきゃいけない虫歯が、9本あるの。でも、ほとんどC1だから、大丈夫よ。すぐ終わるわ。」   「9本も・・ですか」   「ふふ、私は10本あるのよ。ま、私と比べてほしくない、か。」   佳奈子は笑ってみせた。緊張をほぐそうとしてくれているのはわかったが、何も言えなかった。   「で、どうする?今日、もう治しちゃう?痛いってことはないけど。」   頭の中がグルグルして、考えられなかった。   「そうか、初めてだもんね。じゃ、1本だけ治そう。ちょっと安心できると思うわ。」   こくり、と頷いた。   「じゃあ、前歯の裏からいくわね。右の1番の裏。」   前歯まで虫歯にしてしまったんだ・・夏美の目に、涙が盛り上がった。 
 
  
- 517 :夏美編:04/09/10 03:53 ID:dPR3aBQk
 -  治療が始まった。エプロンをつけられ、椅子が倒される。 
  佳奈子が、タービンの先にチップをつけている。   その様子を心配そうに見つめる夏美に気付くと、佳奈子は微笑んだ。   「痛くはないわ。歯はね。」   そう、痛いのは心だ。普段の、自分の無神経さを反省した。   「はい、あーん。痛くないはずだけど、痛かったら、左手上げてねー」   ヒュイーン、という音をさせながら、タービンが近付いてきた。ぎゅ、っと目をつぶって耐えた。   ブゥン、ガガガガ、ブゥン、という振動が、歯から伝わってきた。   自分の歯が、なくなっているのだ、という気持ちに、涙が溢れ出た。   「はい、いいわ。口ゆすいで。」   くちゅくちゅ、とやって吐き出すと、歯のかけらのようなものが、流れていった。歯が・・   舌で触ると、予想以上に大きい穴が開いている。   またも涙が出てくる。   「ほら、泣かない。舌で触ると、大きく感じるのよ。実際はたいしたことないから。ほら。」   なぜわかったのか、佳奈子が、手鏡を差し出してくれる。ミラーで映してみると、たしかに、それほどの穴でもない。   「じゃ、詰めていくから。」   手早く、薬をつけられ、風を当てられ、別の薬、風、レジン・・・最後に、光を当てられて、   もう一度タービンで磨かれて、治療は終わった。 
 
  
- 518 :夏美編:04/09/10 04:20 ID:dPR3aBQk
 -  「舌に引っかかるとか、気になることはない?」 
  舌と鏡で確認して、こくり、と頷く。どこが治されているのか、全くわからなかった。   「こんな感じで治していくんだけど、平気?」   「はい。もう大丈夫です。ありがとう・・ございました。先生に診てもらって、よかったです」   夏美が言うと、佳奈子は、少し照れた。      「あ、そうだ、親知らずなんだけど」   「はい。」   「見たところ、一番虫歯が酷いから、抜いたほうがいいかな、と思うんだけれど」   「・・はい。」   「実は私、抜歯って得意じゃないの。特に、虫歯になってるとね。で、紺野先生に頼んでもいいかしら」   嫌だとは言えなかった・・が、夏に、佳奈子にきついことを言って、紺野にたしなめられた事を思い出すと、   この口の中を見られるのは、耐えられなかった。   「大丈夫よ。紺野先生、患者さんにはやさしいから」   ・・・夏の、佳奈子を叱った様子では、そうは見えなかったが。   「じゃあ、明後日の夜にお願いしておくわ。次の治療は明後日にしましょ」   「どうもありがとうございました。」   「はい、お疲れ様。」   夏美の、初めての治療が終わった・・ 
 
  
- 519 :夏美編:04/09/10 04:21 ID:dPR3aBQk
 -  次の治療の日。紺野がやってきた。 
  佳奈子に、「虫歯の親知らずを抜いてほしい」とだけ頼まれてきた紺野は、   治療台に、夏美が座っているのを見て驚いた。   「ん?患者さんって、金子君?」   紺野の顔をまともに見られず、うつむいたまま頷く夏美。   紺野が、傍らの佳奈子の顔を見つめる。   「そうなの。で、口の中見ても、何も言わないで。」   と、佳奈子が答える。   「なんだそれは・・ま、いいや、じゃ、見せて。」   紺野に促され、夏美が口を開ける。   「えっ・・」   今見たものが信じられない、といったふうにまばたきをして、ふたたび覗き込む紺野。   「これはまた・・どうかしたの?」   と、佳奈子に尋ねる。   「それが、わからないのよ。体は大丈夫そうなんだけど」   それを聞いた紺野は、何かひらめいたようだった。   夏美に向き直ると、   「ま、治すしかないな。それに、こんな虫歯だらけだと、彼氏に、虫歯をうつしてしまうよ。」   と言った。   それを聞いて、夏美が、あっ!という顔をした。   「虫歯って・・大人でも、うつるんですか??」   「うん、特に、付き合ってるなら、ちゃんと気をつけないと、うつると言われてるね。」   考え込む夏美。   「思い当たる節があったかな。」   「はい。彼氏が・・虫歯の多い人で。」   「うん、たぶん、それだろうね。さすがに、虫歯の彼氏がいるだろう、とも聞けなくて、   ああ言ったんだけど。」   紺野が笑う横で、佳奈子が少し暗い顔になっていた。   「私は、好きな人に・・虫歯をうつしてしまったりするのね・・」      「ま、とにかく、始めよう。萩原君、使って悪いんだけど、シンマと麻酔、用意して。」   そう言うと、紺野は、夏美のレントゲンと歯を見比べ、抜き方を考えていた・・ 
 
  
- 520 :夏美編:04/09/10 04:21 ID:dPR3aBQk
 -  続きよろしく〜 
 
  
- 521 :名無しさん@ピンキー:04/09/10 04:31 ID:0nsJmpzi
 -  夏美が痛くされて泣いてるのが読みたい。 
 
  
- 522 :岸利徹:04/09/10 05:43 ID:GLO3eQKX
 -  http://bbs1.on.kidd.jp/?0002/amiami 
 
  
- 523 :名無しさん@ピンキー:04/09/10 07:38 ID:bYykrTd2
 -  青春ですねぇ♪仕立てがドラマチックになってきた。 
     >>492   そのときは、検診の結果受診した女子中学生でも。   萩原先生視点で。      萩原先生はホントみんなに愛されてますねw 
 
  
- 524 :香緒里編:04/09/10 12:18 ID:MVHjtKQX
 -  超ひさしぶりの気がする。香緒里編。 
     次の日。香緒里は、元気な顔をしていた。   もっとも、それは痛み止めの薬のおかげなのだが、一時、痛み止めすら効かなくなっていたことを考えると、   大進歩だ。   「せっかくだから、映画でもいこうよ。観たがってたよね。」   香緒里が言うので、夕方、前から観たかった、宇宙戦争ものを観に行くことにした。   戦闘シーンが大迫力らしいのだ。   「男の人って、こういうの好きよね・・子供っぽい。」   と、バカにされながら、久しぶりに香緒里の調子が戻ってきたことが嬉しかった。   映画は、満員だったが、やはり、最後の戦闘シーンはすごかった。   ドカーン。ドォオーン!   やはり、映画は迫力だな、と思って観ていると、隣の香緒里が、ぎゅっ、と手を握ってきた。   こんなのが、怖いのかな。可愛いな・・と思っているうちに、映画が終わった。   それでも、香緒里の手は離れない。   明るくなって香緒里の顔を見ると、涙を流している。・・そんな感動するとこ、あったっけ??    
 
  
- 525 :香緒里編:04/09/10 12:24 ID:MVHjtKQX
 -  しかし、感動しているにしては様子がおかしい。 
  「香緒里、どうした?」   「・・・痛いの。」   「え?」   「さっきの音が、歯に響いて・・・前歯がズキズキするの。痛いよぅ・・・」   そう言って、シクシクと泣き出した。   周りの視線が、痛い。   どうしよう・・・もう8時半だ、歯医者は閉まっているだろう。   「痛み止めは?飲んだ?」   「うん、さっき、我慢できなくて、夜の分、飲んだんだけど・・・。」   「効かないか?」   「ちょっとはまし・・かも・・・」   とりあえず、家に帰るが、痛くて泣いているうちに、神経が興奮したのか、   夜中には、しばらくおさまっていた、左上の奥歯まで痛み出したようだ。   「あぁぁっぁぁああん。痛いぃぃ。痛いよぉぉぉ。」   早めに飲んだと言う、夜の分の痛み止めが、今回の最後の薬だったので、   薬もない。冷やしてもみたが、かえってしみる、というので、   隣で肩を抱いててやること以外、どうすることもできなかった。   泣きつかれたのか、ときどき、うとうと、とするものの、   しばらく経つと、また   「痛いよぉ」   と泣き出す。何度繰り返したころだろうか。ようやく、朝になった。    
 
  
- 526 :香緒里編:04/09/10 13:49 ID:MVHjtKQX
 -  「香緒里、歯医者さん行こう」 
  「・・・イヤ」   「何でだよ。痛いんだろう」   「うん。」しゃくり上げながら、答える。   「じゃあ、早くなんとかしてもらおうよ」   「だって・・・差し歯・・・あと、奥歯・・・抜かれちゃう・・・怖いよ・・・」   「・・・そんな」   そんなことないよ、と言おうと思ったが、この痛がりようでは、それもあるかもしれない。   「・・痛いよぅ」   渋っていたものの、やはり、痛みには耐えられなかったのだろう、   11時ごろ、ようやく、香緒里も決心がついたらしい。二人で歯医者に向かった。   行ってみると、さすがに夏休みのせいか、子供が多かった。   待合室についても、シクシクと泣いている香緒里。   「お母さん、あのおねえちゃん、泣いてるよ」   「あのおねえちゃんはね、歯が痛いの。健太も、ちゃんと治さないと、おねえちゃんみたいになるわよ」   という親子の会話が聞こえてくる。   真っ赤になって、立ち上がる香緒里。   母親をにらみつけて、あわてて後を追う。 
 
  
- 527 :香緒里編:04/09/10 13:58 ID:MVHjtKQX
 -  「あら、香緒里ちゃん」 
  ちょうど、診察室から患者を送り出してきた萩原先生が、香緒里を見つけた。   「ちょっと、どうしたの?痛むの?」   香緒里が、涙を拭きながら、頷く。   「とにかくいらっしゃい。受付で言ってくれればよかったのに。」   そう言って、診察室に入れてくれた。   「金子さん。大野さん先に診るけど、あと平気よね?」   「はい、次の方は初診なので、紺野先生にまわします。午前はそれでOKです」   話はついたらしい。   「で・・・どこが痛むかしら?」   香緒里が、黙って前歯を指差す。   「あぁ、痛み出しちゃったか・・今日は院長先生がいるから、ちょっと聞いてみるわ」   立ち上がりかける萩原先生に、香緒里が   「萩原先生が・・いいです・・・」   と言う。萩原先生は、ちょっと微笑むと、   「大丈夫よ。相談するだけだから。治療は私がやるわ、責任持って。」   と言ってくれた。香緒里がホッ、とため息をつく。 
 
  
- 528 :香緒里編:04/09/10 15:20:56 ID:MVHjtKQX
 -  萩原先生は、隣の椅子のところの院長先生と、二言、三言しゃべると、戻ってきた。 
  「じゃ、始めましょ。ちょっと見せてくれる。」   香緒里の唇をめくったり、口を開けさせたりして、診察すると、   「たぶん、虫歯が進んで、中で膿がたまってるせいで痛むのね。だから、とりあえず、   削って、膿を抜きましょ。それで楽になると思うわ。大丈夫?」   香緒里はおとなしく頷いた。   「じゃあ・・麻酔するわね。前歯の麻酔は痛いけど、歯の痛みよりはましよ。我慢してね」   アングルワイダーをはめられ、歯茎がむき出しになっているところに、   麻酔の針が刺さる。   「んんっ」   香緒里が顔をゆがめる。   「ん、大丈夫よ、頑張って」「楽にしてー」   先生と、助手がかわるがわる励ます。   「はい、じゃ、もう1本。今度は裏からいくわね」   口を開けられ、また麻酔が打たれる。   「んあああー」   「すぐ終わるからねー、はい。いいわ。麻酔が効くまでしばらく待ってね。」   そう言って、萩原先生は、ドリルの先を点検した。   治療台に、たくさんのガーゼと、小さい金属製のお皿のようなものがセットされた。 
 
  
- 529 :香緒里編:04/09/10 15:21:31 ID:MVHjtKQX
 -  「もういいかしら」 
  先生が言い、治療が始まった。   削り始めてすぐ、   キュイーン、キュイーン、というドリルの音に、香緒里の泣き声が混じる。   「あああぁあぁぁん。う、ぅあああああ。」   「ちょっとだから。我慢して。」   隣の椅子の子供も、不安そうな様子でこちらを見ている。   「あ、やぁぁぁぁん」   香緒里がひときわ大きい声で泣き叫んだとき、ドリルの音がやんだ。   「ちょっと痛いと思うけど、すぐ楽になるから。」   ガーゼとお皿を香緒里の口の中に入れ、萩原先生が、歯茎のあたりを押す。   「んあ!」   すると、白っぽい液体が、たらー、と出てきた。   香緒里は、目を白黒させている。   しばらくたって、ガーゼとお皿を取り出す。   「どう?」   「だいぶ楽になりました。」   「じゃ、また、ここも根の治療していくから。ちょっと休憩ね。」   はい、と香緒里が静かに返事をする。    
 
  
- 530 :香緒里編:04/09/10 15:22:19 ID:MVHjtKQX
 -  気がつくと、周囲は昼休みに入っているようだ。 
  治療されていた子供たちはいなくなり、他のスタッフも片づけをして、ほとんど奥に入ってしまった。   「萩原先生、あのう・・」香緒里が、おそるおそる話し出す。   「どうしたの?」   「この、前歯は・・・どうなるんでしょうか」   「そうね、一応、根は大丈夫そうだから、前にも言ったけど、差し歯にできると思うわ」   「そう・・ですか。」   香緒里がうつむく。   「えーと、香緒里ちゃん。差し歯が気になるのはわかるけど、最近は、見た目も綺麗なのができるわ。」   萩原先生が、優しく言う。   「でも・・でも・・」   「でも、他にないし、歯抜けっていうわけにもいかないでしょう?」   「先生みたいな・・綺麗な歯の人には分からないですっ!」   香緒里は泣き出してしまったが、萩原先生も、思いつめたような顔をしていた。   そのとき、端の治療台の上をいじっていた男の人が、こちらへ歩いてきた。今日、初めて見る人だ。   さっきの、コンノ先生とかいう人だろうか。   その人は、通りすがりに、萩原先生の肩をポン、と叩いて、受付の方へ行ってしまった。   萩原先生は、ハッ、とした顔で、その男性の後姿を見ていたが、   「・・・香緒里ちゃん。」   しばらくの沈黙の後、決心したように、静かに口を開いた。   「私の前歯も、虫歯でダメになっちゃったの。だから、香緒里ちゃんの気持ち、わかるつもりよ。」   俺は、驚いて萩原先生の口を見た。そうだ、裏が銀色だったのは・・・   香緒里は、もっと驚いているようだ。   「だから、がんばって、治しましょ?ね?」   「はい。わがまま言って、すみませんでした・・」   受付の方を見ると、さっきの先生が、萩原先生をじっと見つめていた・・・ 
 
  
- 531 :香緒里編:04/09/10 15:23:11 ID:MVHjtKQX
 -  またもわき道にそれちゃった。 
  誰か、続きお願い。   6番の痛いのは、どうなっちゃうんだろ・・ 
 
  
- 532 :名無しさん@ピンキー:04/09/10 21:04:11 ID:dF453jr9
 -  をー、萩原先生告白♪ 
  やっぱり香緒里が萩原先生に治療される、ってのが一番だなぁ。   黄金の組み合わせ。   ・・金子助手歯ブラシ指導期待∩(゚∀゚∩)age 
 
  
- 533 :紺野のウワサ:04/09/11 00:10:36 ID:YfKIbNYU
 -  どれか採用されるかな 
     紺野バツイチ説   吉村は紺野の差し金説   佳奈子のブリッジは紺野の策略説      <番外>「俺」は実は50歳説 
 
  
- 534 :期待エピソード:04/09/11 00:18:05 ID:YfKIbNYU
 -  期待度高い順 
  ・たいしたことがなさそうだった夏美の虫歯、親知らずの後ろが酷くて超痛い治療に   ・秋、夏美の虫歯を診た萩原先生が「俺」の歯を心配、   検診の結果虫歯がたくさん見つかり、香緒里が超落ち込む   ・見えるところはセラミックにして欲しいと無理を通す香緒里、   しかし硬いものを噛んで割れてしまい、再治療(根も割れて抜歯とか)    
 
  
- 535 :名無しさん@ピンキー:04/09/11 01:29:31 ID:yt8sgmus
 -  >>447 
  治療されてみたいw 
 
  
- 536 :名無しさん@ピンキー:04/09/11 02:24:07 ID:nR5mlLmz
 -  香緒里の奥歯はさんざん痛い治療をされてそれでも 
  残せないと言われて抜く事になる展開がいい。 
 
  
- 537 :名無しさん@ピンキー:04/09/11 02:31:46 ID:YfKIbNYU
 -  >>536 
  それ賛成   さらにそれが、萩原先生に不審の目が向くんじゃなくて   香緒里が自責の念にかられるようなのがいい 
 
  
- 538 :岸利徹:04/09/11 07:10:38 ID:k/JGKG73
 -  歯フェチの皆さん、たいへんお待たせしました。ホームページ近日再開します。 
  閉鎖前に会員だった方はそのまま引き継ぐように調整します。   私が勝手に閉鎖したので、迷惑を最小限におさえるよう努めます。      http://www.itefah.net/   ● LAST MODIFIED   09/09/2004 20:12:54    
 
  
- 539 :名無しさん@ピンキー:04/09/11 08:23:19 ID:0VeWmAMB
 -  >>534 
  「俺」は良い歯のままが良いなぁ・・。   個人的願望として。      >>536   そうだよね、やっぱり抜いて、落ち込むのを彼氏が慰めるのが(・∀・)イイ! 
 
  
- 540 :名無しさん@ピンキー:04/09/11 08:43:09 ID:0VeWmAMB
 -  今のところ 
     香緒里編 >>530   萩原先生編 >>487   夏美編 >>519      ですね。 
 
  
- 541 :本編 香緒里編:04/09/11 14:00:52 ID:er/7PfSu
 -  要望を取り入れるところは取り入れつつ… 
     「じゃあ、神経の治療、していくわね。」   もう何度目かになる根の治療が始まった。   昨日ほとんど寝ていないのと、麻酔が効いたのだろう、   香緒里は今度は泣かずにおとなしく治療されている。   「うん、これで良し。」   荻原先生は満足げにそう言った。   「じゃあ、今日は左奥の土台を入れて、その前の掃除と、右の掃除かな。    掃除からやっちゃうわね。」   再び香緒里の口を開かせる。   「右は…良いわ。綺麗。次土台に入れるわね。思ったより回復が早いわね。」   香緒里が「よかった」とつぶやく。   「問題の左ね…」   左の歯の仮詰めが外される。綿を引き抜いた荻原先生が途端に眉根をひそめた。 
 
  
- 542 :本編 香緒里編:04/09/11 14:06:19 ID:er/7PfSu
 -  「これは…痛くなかった?」 
  香緒里に聞く。   「あ、…昨日の夜中からまた急に痛くなって…でも、前歯のせいだと思うんです」   香緒里が怯えながら答える。   この歯は抜くと抜かないの境界線上にある。   何かあれば抜かれるかも…といつも気にしていた。   「香緒里ちゃん、落ち着いて聞いて欲しいんだけど、」   荻原先生がそう切り出す。香緒里の目に、さっき枯れたはずの涙がまた滲んでくる。   「この歯はもう、抜いた方が良いと思うの」   「やあぁぁぁっ!」   香緒里は耳をふさいで泣き出した。   「あぁぁぁあぁんん! 嫌ぁ、抜くのは嫌あぁっ!!」   「香緒里ちゃん…」   子供のように激しくしゃくり上げる香緒里を、荻原先生が抱くようになだめる。   ひとしきり泣くと、少し落ち着いてきたようだ。 
 
  
- 543 :本編 香緒里編:04/09/11 14:17:29 ID:er/7PfSu
 -  「ひいっく、うえぇぇん、嫌、嫌ですぅ」 
  泣きながら訴える。   「わかったわ。院長に相談してみるから。ちょっと待ってて。    私が帰ってくるまでに泣きやんでてね。泣かれると手を出せなくなっちゃう。」   荻原先生はそう言い、最後は香緒里の頭をぽんぽんと軽くなで、ブースを出て行った。   院長は二つ隣のブースで入れ歯のお婆さんの治療中だった。   荻原先生がカルテを見せている。   何を話しているのかは判らないが、あまり芳しくない雰囲気だ。   入れ歯の患者さんが興味深げに二人の会話を聞いている。   荻原先生が院長にさっと一礼して、院長のブースをでた。   どうなるのだろう、と思っていると、院長のブースからお婆さんの声がした。   「んなもん、さっさと抜いて、入れ歯にすりゃ楽になんべ」   訛り混じりの大きな声は、香緒里にも聞こえたようだ。   せっかく泣きやみかけていたのに、また肩を震わせ、しゃくり上げだした。                
 
  
- 544 :本編 香緒里編:04/09/11 14:32:42 ID:er/7PfSu
 -  「あら、泣きやんでないじゃない」 
  荻原先生が戻ってきた。笑顔だ。   「泣きやまないなら抜いちゃおっかな〜」   「やっ!」   「嘘よ」   この先生、来るたびにお茶目になるなあ…と俺は場違いなことを考えた。   「あのね、この歯にも前歯と同じように膿が溜まってるの。    でね、抜くと簡単に治るんだけど、抜いた痕はそのままにしておけないでしょう?    前歯なら言うまでもないけど、奥歯も抜けたままにしておくと、どんどん歯が動いて、    物が噛めなくなっちゃうから。」   「…はい」   荻原先生の笑顔と冗談のおかげか、香緒里は落ち着いて聞いている。   「そういうときはね、ブリッジっていうんだけど、前後の歯を削って、    橋を架けるように3本続きの人工の歯を入れるの。」 
 
  
- 545 :本編 香緒里編:04/09/11 14:46:23 ID:er/7PfSu
 -  荻原先生は、治療台の横にあったイラストを使って説明してくれた。 
  「インプラントって言って、抜けた歯だけ入れ直す方法もあるんだけれど、保険が効かないの。    香緒里ちゃん、大学生でしょ? ちょっと払うのは大変かな、と思ったの。」   香緒里と俺は同時に肯く。二人とも苦学生ではないが金持ちでもない、典型的な現代の学生だ。   「そうよね。だから、治すときはブリッジにすると思うんだけど、    で、今香緒里ちゃんのこの歯の奥の歯がちょうどかぶせる治療をするから、    ついでに治せば一石二鳥かな、って思ったの。    でもそれは歯医者の都合よね。ごめんなさい。    香緒里ちゃんがまだ抜きたくない、っていうなら、    もうちょっと頑張ってみても良いかもしれないわ。」   「じゃあ…」   「まだ抜かなくていいわ。」   香緒里の顔がぱっと明るくなる。   「そのかわり、このまま治せるって決まったわけでもないし、    もしどうしても残せない、ってことになったら、力づくでも抜くからね。」 
 
  
- 546 :本編 香緒里編:04/09/11 15:03:41 ID:er/7PfSu
 -  そう言って、荻原先生は治療台を寝かせた。 
  香緒里が反射的に緊張したのがわかった。   「はい、あーん」   荻原先生の手には、すでにリーマーが握られている。   ぐりぐり、ぐいぐい。   「ああっ! うあぁぁあ、んんぁ!」   体を跳ねさせるようにして香緒里が呻く。   「がんばって。ちゃんとやらないと治らないのよ。    歯を残せるように、私も頑張るから、香緒里ちゃんにも協力して欲しい。」   荻原先生が手を止めてそう言った。   香緒里はうなずき、治療台の端を手で掴んで、じっと体を硬くした。   それでもやはり痛い物は痛いのだろう。   「ん、くぅう、んんっ」   時折、何とも言えない声がのどの奥から漏れだしている。 
 
  
- 547 :本編 香緒里編:04/09/11 15:22:30 ID:er/7PfSu
 -  根の掃除が終わり、薬を浸した綿、そして蓋が詰められた。 
  「もしかしてまた膿がでても良いように、蓋に小さな穴を開けてあるの。    少しぐらいの膿なら大丈夫。    でももしたくさん膿が出たら、とても痛いし、痛み止めも効かないと思うわ。    そう言うときは、この蓋、外したら楽になるから自分で外してね。    そして、ここにすぐに来ること。いいわね。」   香緒里がうなずくのを見て荻原先生はうなずき返した。   「じゃあ、土台を入れて、クラウンの型取りね」   前の詰め物の時も異様に手際が良かったが、今回も早かった。   高さを調節し、歯の周りを削っていく。例の助手に型を取ってもらい、   仮のかぶせ物をして、治療は終わった。 
 
  
- 548 :本編 香緒里編:04/09/11 15:40:28 ID:er/7PfSu
 -  「ありがとうございました」 
  そう言って治療台を降りようとする香緒里を、荻原先生が押しとどめる。   「ちょっと待って。ごめん。もう一度前歯、診せてね。」   そう言って治療台を再び寝かせる。   さっきの前歯を診るのかと思ったが、唇をつまんでまくり上げ、他の歯を診ている。   香緒里は真っ赤になっている。   歯の先は白く綺麗で、笑っても歯茎が出ないので判らないが、   真ん中の二本は根元に穴があいて茶色くなっている。   さっきの歯の隣の犬歯も、境目のところが黒くなっている。   さっきの歯は、まだ両側が黒く、大きな虫歯が残っているのがわかる。 
 
  
- 549 :本編 香緒里編:04/09/11 15:46:07 ID:er/7PfSu
 -  「あれ、その歯、削ったんじゃないんですか?」 
  俺がそう聞くと、荻原先生が振り向いて言った。   「さっきは神経に届くように削っただけなの。かぶせるのは最後だから、    今全部削っちゃうと、半月ぐらい歯抜けになっちゃって可哀想でしょ?    まあ、最終的には削るから、どうしても一週間弱は歯抜けにはなるんだけど、    それぐらいの期間なら仮の歯を入れてあげられるからね。」   確かにそうだ。香緒里は歯抜けと聞いて更に赤くなっている。   荻原先生は香緒里の方に向き直って言った。   「ところで、前歯、鏡で見て気になるでしょう。」   「…はい」   「女の子だもんね。他の歯が落ち着いたら、一気になおしましょうね。    白いので治すから、一日で済むし、見違えるように綺麗になるわよ。    はい、今度こそ終わり。お疲れ様」   「ありがとうございました。」   「あ、左で固い物とか食べないでね。    一番奥は全部仮詰めだし、その前の歯は安静にしたいからね。」    
 
  
- 550 :本編 香緒里編:04/09/11 15:53:58 ID:er/7PfSu
 -  もう一度お礼をいい、医院を後にした。 
  「よかったな。とりあえず抜かずに済んで」 「うん」   「早く前歯、治してもらえるといいな」 「うん」   「とりあえず昼ご飯食べてさ、早く帰って昼寝しようよ。俺もう眠くて」   あくびをしながら言ったら、香緒里にこづかれた。   「それって何か嫌味…」   「嫌味じゃないよ、ただ、その、欲の中で睡眠欲が一番強いっていうじゃん…」   あわててごまかす。香緒里はふっと笑うと言った。   「まあいいわ。私も眠いし。」   二人で揃ってあくびした。 
 
  
- 551 :本編 香緒里編:04/09/11 15:58:26 ID:er/7PfSu
 -  とりあえずここまで。 
  >>533   <番外>「俺」は実は50歳説 は採用できず(笑)      痛み出した奥歯、今回は抜かずに頑張ったので、   誰か、さんざん痛い治療をしたあげくに抜いてあげて下さいw   切開排膿とかかなあ。   で、結局ブリッジにするためにせっかく治した後ろをまた削ったり、   それか恐怖のインプラント治療でもいいや。   お金の問題があるけど…。 
 
  
- 552 :名無しさん@ピンキー:04/09/11 16:03:18 ID:Du4CCWbL
 -  インプラントまで行くとグロいな。 
  ブリッジで銀歯ギラギラの方がいいんじゃない?   学校で友達に指摘されて、白い歯に変えてもらうとか…    
 
  
- 553 :岸利 徹 ◆a6xQiseJz2 :04/09/11 18:31:24 ID:LS56LxGc
 -  >>538 の岸利さま 
  告知ありがとうございます。      実は書かなかったけど閉鎖してた理由に、「某ホスティング業者がアホやから更新でけへん。」というのも理由でした。   FTPは3回に1回しか繋がらないし、繋がっても時々落ちるし、POP3&SMTPが死んで繋がらないのに、   「サーバーの電源が入っていますので問題ありません。」の繰り返しだし・・・   昨日の午後やっと、サーバーをRAQ500に移してくれて今のところ問題がないので、   明日午前中辺りにトップページだけでもなんとか作らさせていただきます。      その後は、アラジンさんにお詫び入れて、秘宝館からなんとか再建させていただければ良いかなぁ〜と   思っています。      >>538の岸利さまが、itefah.netのFTPのアカウント知ってたら、僕の代わりにヤッてくれれば有り難いですが。       
 
  
- 554 :萩原先生編:04/09/11 20:21:07 ID:H3jFpl6J
 -  それから二日後。 
  佳奈子の右下6のインレーが出来たので、通常の診察が終わった後紺野にセットしてもらうことになった。   「んー、ここの技工士さんはホント上手だよねぇ」   紺野はそう言いながら、歯形にセットされた大きな銀のインレーをしげしげと眺めた。   これが私の口に入るんだ、と思うと、佳奈子は急に恥ずかしくなった。   「じゃあ、口開けて・・しばらく閉じないでね」   紺野はそう言うと、仮詰めしてあったゴムをスポッと取った。   「分かってるだろうけど、軽く洗浄するね」   そう言いながら、しゅっと水を当てる。   「んっ・・」   すこししみるが、大したことはない。   そして、空気を当て乾かす。と同時に、夏美が練ったセメントを台の上に置く。   「ん、ありがと。じゃ、セットするから」   紺野はそう言うと、インレーを佳奈子の歯にセットし、ぎゅっと押し込む。   「OK・・じゃ、今度は上の・・7から行く?6から行く?」   ぺらぺらとカルテを振りながら、紺野は言う。   「・・6からで」   微妙に悩んでそう言うと、紺野は「分かった」と笑った。 
 
  
- 555 :萩原先生編:04/09/11 20:21:38 ID:H3jFpl6J
 -  仮蓋をとって、中から綿を抜き出す。 
  「ん・・びみょ。土台は立てず、もっぺん根治やるわ」   紺野はそう言い、リーマーを手に取る。   佳奈子の体が、反射的に硬くなる。   「ゆっくり行くから・・」   こり、こりと入っていき、そしてびくっと痛くなる。   「んぁぁっ・・」涙があふれてくるが、紺野は   「ちょっと我慢な・・・」といい、治療を続ける。   「あぁんっ」痛みが強くなる。   「んー、もうちょっと・・」   「はぁんっ・・んんっ・・」   もう無理、と思ったところで紺野は針を抜いた。   「まぁ、次ぐらいに何とかなるかな・・」   紺野はそう言うと、もう一度薬を入れて蓋を閉じた。      「次、7やっちゃう?」   紺野がそう言ったが、人間いやなことは先送りしたい物だ。   佳奈子は「・・いや、次の時に」と答えた。   紺野は笑いながら「分かったよ」と言った。 
 
  
- 556 :名無しさん@ピンキー:04/09/11 20:23:42 ID:H3jFpl6J
 -  ネタふっときましたー。7は誰か適当にカタつけてください。 
  香緒里は・・大変そう・・。 
 
  
- 557 :名無しさん@ピンキー:04/09/11 23:57:38 ID:LnW7ceHU
 -  急に紺野が軽くなってる・・ 
  佳奈子にももうちっと恥じらいが欲しい 
 
  
- 558 :名無しさん@ピンキー:04/09/12 00:06:38 ID:qilb9376
 -  >>557 
  言えてる。「びみょ」はかなりびみょやった。   でもこの後歯磨き指導だよね。   楽しみ〜 
 
  
- 559 :名無しさん@ピンキー:04/09/12 00:10:21 ID:aESxEEL1
 -  >>551,556 
  乙でしたー      しかし、>>557 の言うことも分かる気がするな、たしかに    
 
  
- 560 :名無しさん@ピンキー:04/09/12 00:53:53 ID:MtiD8JIK
 -  関係ないけど昔から麻酔無しで虫歯を削られて苛められて神経抜かれるのに 
  すごく憧れているんだよね。最近の歯医者さんは痛くしてくれないし   誰かSの歯医者さんで拷問みたいに痛くしてくれる人に出会いたいよーっ。 
 
  
- 561 :名無しさん@ピンキー:04/09/12 03:14:17 ID:Qu1928kx
 -  >>560 
  どっかの日記サイトに、麻酔がきらいだからっていって、   頼んで麻酔なしで治療してもらった、っていう日記があった。   「気絶しないでね」って言われたらしい。   マジで気絶しそうになったらしい。(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル  
 
  
- 562 :萩原先生編:04/09/12 06:10:27 ID:p81g9f66
 -  昨日会議中こっそり書いてたんだが・・・  
  つながらなくてアップできなかったら、すでに最初がうpされてるな    ま、勿体無いので&どこからにしていいかわからないので、全部うpさせてもらいます    つまり、555じゃなくて487の後ね       さて、その日の夜。   夜、たいてい最後に残るスタッフは、院長、佳奈子、そして衛生士チーフの夏美である。   助手や他の衛生士は、自分の仕事が終わると、それぞれに帰って行くのであった。   スタッフがだいたい帰ったのを見計らって、紺野が言った。   「佳奈子ちゃん、今日、どうする?」   一瞬、食事のことかと思って振り向いてみたが、紺野は、人差し指で、右ほほを叩いていた。   院長が、それを目ざとく見つけた。   「ん?何の合図だ?まあ、若いんだし、おじさんは何も言わないが」   院長は、紺野と佳奈子をくっつけたがっているらしい。   もはや、慣れっこになっている紺野は、   「はは、見逃してください」   と適当にあしらっている。   佳奈子は、できれば院長に虫歯のことを知られたくなかったのだが、夏美が   「萩原先生、虫歯を作っちゃったので紺野先生に治療してもらってるんですよ」   と、あっさりバラしてしまった。   佳奈子は、赤くなってうつむいたが、院長は、   「なんだ、そうか。ま、紺野君は上手いし、優しいしな。萩原君みたいにきついことも言わないだろう」   と、特に虫歯を作ってしまったことについては気にしていないようだった。   「じゃ、あまり遅くならないように。戸締り頼んだよ。金子君、雨が降りそうだから駅まで乗せていこう」   と、夏美を無理やりに連れ、院長は帰って行った。    
 
  
- 563 :萩原先生編:04/09/12 06:11:09 ID:p81g9f66
 -  「さて・・と。本当に、どうしようか。あのあと、痛みはどうだった?」 
  「先生に言われたとおり、痛み出して、薬飲んで寝ました。」   「じゃあ、明日があるから、6番は休みの前の日にやるとして、今日のところは、   薬だけ取り替えておこうか。あとは7番だけだけど、どうする?」   「・・・どっちがいいんですか?」   「うーん、先延ばしにするな、と言いたいところだけど、神経ギリギリまでいってたら、しばらく痛むからね。   やっぱり、休みの前にやろう。」   ということで、佳奈子は少し、ホッとした。   「じゃ、口開けて。」   歯の仮封を外し、綿を取り出す。   新しい綿に、薬をつけて、詰める。   「んんっ」   「ん、しみるか?」   一瞬、正直に言っていいかどうか迷う佳奈子に、紺野が苦笑する。   「懲りないな、君は。」   そういいながら、再び封をした。   「じゃあ、くれぐれも歯磨きはやさしく。何かあったら、すぐに言うこと。いいね?」   最後まで、歯科医としての態度を崩さない紺野に、少し寂しさをおぼえつつ、その晩は別れた。 
 
  
- 564 :萩原先生編:04/09/12 06:11:39 ID:p81g9f66
 -  2日たった土曜日。土曜日は、診療時間が少し短い。 
  「じゃ、佳奈子ちゃん、やろうか。」   紺野は、仕事中は佳奈子を「萩原君」と呼ぶが、終わったとたん、呼び方を「佳奈子ちゃん」に変える。   どうやら無意識らしいが、佳奈子は、少し嬉しさを感じていた。   とはいえ、治療が始まるときは別だ。   白衣を脱ぎ、しぶしぶ治療椅子に座る。   「お願いします・・」   「じゃ、まず、6番からやっていこう。」   そう言って、封を取り、少し観察する。   「大分きれいになってきたよ、今日で終わるといいけどね」   リーマを選び、口を開かせる。   「もうそれほど痛くないと思うけど」   と言いながら、ゆっくりと進めていく。たしかに、痛くな・・   「あぁっ!」   やっぱり痛かった。前回のように、脚をばたつかせるほどではないものの、涙は出てきた。   「んんんー、ん、んぁ!」   「もうちょっと・・ちょっとだからね・・・」   そう言いながら、紺野の手はなかなか止まらなかった。   「んんっ」   「はい、おしまい」   手早く、薬を入れて蓋をする。   「ちょっと休憩したら、7番始めよう。」   そう言うと、紺野は、帰り支度をはじめている夏美を呼び止めた。 
 
  
- 565 :萩原先生編:04/09/12 06:12:18 ID:p81g9f66
 -  「金子さん、今日は用事あるの?」 
  「いえ、特に何も・・」   「じゃ、補助入ってもらえるかな?」   夏美は、笑顔を浮かべながら戻ってきた。   「もちろん、いいですよ」   佳奈子は憂鬱になった。が、たしかに、治療のとき、衛生士がいたほうが格段にやりやすい。   特に、夏美のような補助が上手い衛生士ならなおさらだ。技術はいいのよ、技術は・・・   それがわかるだけに、紺野に異議を唱えることもできないのだった。   夏美が、手を洗って戻ってくると、治療が始まった。   「痛くなったら言って。」   紺野は佳奈子に微笑みかけると、タービンを手にした。   ヒュイーーーーン   普段聞きなれている音だが、自分の口の中で聞くのは大違いだ。   ヴィ、ヴィン、ヴィン、と、頭蓋骨に振動が伝わってくる。   「ん、ん、んぁ!」   やがて、痛みが襲ってきた。   「ぁあああああ」   「んー、意外と広がってるなあ、もうちょっと頑張って」   「あ、あっ」佳奈子の顔がゆがむ。   無意識に口を閉じかけていたらしい。   夏美が、バキュームを持ちながら、ぐいっ、と佳奈子の顎をおさえる。   うっすらと目を開けて、夏美を見ると、今日は、佳奈子の顔ではなく、   口腔内の作業に集中していた。   なんとなくホッとしたが、痛みは続いていた。    
 
  
- 566 :萩原先生編:04/09/12 06:26:29 ID:n8sgeWHr
 -  「んぁあ、んぁあっ」 
  「もう少しだからねー、我慢して。」   ずいぶん長いもう少し、の後、ようやくタービンの音がやんだ。   「えっとね、神経までは行ってないけど、かなり際まで行っていたよ。   なので、神経は取らずにおくけど・・わかってるよね?」   「しばらく痛むから、ですか」   「いや、それよりは、後で痛みがひどくなるようだったら、ちゃんと言って、と言いたかったんだけど」   歯の型を取ったあと、薬を詰めて、仮の歯をかぶせた。   さあ、終わったわ、と思い、佳奈子が   「ありがとうございました」   と、椅子を降りようとすると、紺野が止めた。   「ちょっと待った。何か忘れてない?」   微笑みながら聞いてくる。   まさか・・・「歯、歯磨きですか」   「なんだ、覚えてるじゃないか」   「紺野先生に・・・ですか」   「金子君にやってもらうのは嫌なんだろう」   「・・・どっちか選ばないと、ダメですか」   楽しそうに、片づけを終えた夏美も傍へやってきた。   「わかりました。金子さんに頼みます」   先日の怒りはおさまっていたし、何より、紺野に歯垢を染めたりされるのは、嫌だった。   「ほう」   紺野は、意外そうな顔をした。   「金子君、いいかな」   「やりますよ」   夏美は、ニヤッと笑った。    
 
  
- 567 :萩原先生編:04/09/12 06:28:43 ID:n8sgeWHr
 -  「じゃ、歯ブラシ選んでください。差し上げますから。」 
  夏美が歯ブラシを持ってきた。   「じゃあ・・キリンさんで。」   こうなったら、ヤケだ。なぜか大人用なのに絵が描かれた黄色い歯ブラシを選ぶ。   傍では、紺野がおもしろそうに見守っている。   「まず、いつもどおりに磨いて下さい。」   夏美が指示する。   シャコシャコシャコ、と磨くが、二人のプロに見られていると、緊張する。   「右上、取れても治せるようにスタンバイしてるから、好きにやっていいぞ」   紺野も楽しそうに茶々を入れる。   「そんなに見ないで下さい」   少し赤くなりながらも、磨き終えた。   「じゃ、残っている歯垢のチェックをしますね。」   夏美が、口の中に歯垢染め出し液を塗る。   「軽くゆすいでください。軽くですよ!」   二人の目がしっかりとこちらを見ているので、軽くゆすぐだけにした。   「じゃ、見せて下さい。」   夏美が、佳奈子の口にリトラクターをはめる。   紺野も面白そうにやってきた。   やめて・・と思ったが、リトラクターのせいで、何も言えない。   「はい、んー、さすがですね、だいたい磨けてます・・・でも、やっぱり、右側が甘いですよ。   青いのも残ってるし。青は、数日前からの汚れですよ。赤は新しい歯垢です。   歯医者さんなんですから、歯磨きくらいきちんとしてもらわないと。   歯が弱くても、汚れが残っていなければ、虫歯になんかならないんですからね。」 
 
  
- 568 :萩原先生編:04/09/12 06:29:21 ID:n8sgeWHr
 -  紺野にも、じっくり覗き込まれ、佳奈子は顔が赤くなるのを感じた。 
  さらに、手鏡を手に持たされ、自分でもチェックさせられる。   たしかに、奥歯の外側や一番奥など、右側の方が磨き残しが多かった。   昔、予防歯科で徹底的に教えられたから、歯磨きには自信があったのに・・・   ややショックを受けていると、   「これじゃあ、またやっちゃいますよ」   夏美の声が降って来た。ニヤニヤしている。   やっぱり、やめておけばよかった・・・佳奈子は後悔したが、もはや、やめられなかった。   「じゃ、歯ブラシ、こう持ってください。で、上の歯は・・・」   佳奈子は指示通りに磨くが、   「そんなんじゃダメです。来年には残りの歯も虫歯ですよ」   と、即座にダメ出しされる。そんなことまで言わなくていいのに・・・   佳奈子は落ち込んできた。   助けを求めるように紺野を見たが、やさしく微笑んで首を振っただけだった。   「はい、萩原先生、よそ見しないで下さい。また虫歯になりたいんですか?」   本当に、いちいち気に障ることを言う。   そんなことを思いつつも、右側の磨き残しもなくなり、無事に終了、と思ったとき、   「ダメです、萩原先生には、まだ特別レッスンがあります」   と、夏美は許してくれなかった。 
 
  
- 569 :萩原先生編:04/09/12 06:31:09 ID:n8sgeWHr
 -  「萩原先生、歯間ブラシは使われますか?」 
  「使わないわ、フロスは使っているけれど」   「それじゃダメです、萩原先生、ブリッジあるでしょう」   「・・・ええ。」   「ブリッジは、かぶせてあるところから虫歯になりやすいし、それでどんどんダメな歯が外に広がっていって、   入れ歯になったりするんです。ご存知ですよね」   「・・・・ええ。」   「だから、ブリッジのところは念入りに磨かないと。特に、欠損しているところの下なんかは   歯間ブラシも使わないとダメなんです。じゃ、やりましょう」   ブリッジのところは、綺麗にしておかないと臭う気がして、歯ブラシでは細かく磨いていたが・・・   佳奈子は、夏美のプロぶりに、やや感心した。   紺野も、ほぅ、という顔をしている。   さきほどのようにイヤイヤでなく、真剣に、歯間ブラシの指導を受けた。   「はい、今度こそ、終わりです。お疲れ様でした。」   「いえいえ、どうもありがとう、ためになったわ」   夏美がにこっと笑う。   「それはよかったです。さすがに萩原先生が入れ歯になったら、可哀想で見ていられないですから」   「・・・・・」   「でも、金子君にやってもらってよかったじゃないか。僕じゃ、歯間ブラシはなかったな。   子供向けの指導にそれは入ってないから」   紺野が笑いながらフォローを入れる。   「さすがにお腹空いたよ。もし佳奈子ちゃんの歯が大丈夫なら、帰りに何か食べに行こう。」   紺野が提案し、3人で外へ出た。      後よろ〜   歯磨きレッスンしてしまったよ、でも実は歯磨き指導って何やるの?   こんなもんかと思ったんだけど・・・   詳しい人訂正あればよろ。    
 
  
- 570 :554:04/09/12 06:47:01 ID:Vl1P63KB
 -  飲みながら適当に書いたもんで、起きて読み直すとダメだ。 
  >>554-555はカットしてください。      >>562-569の方が(・∀・)イイ! 
 
  
- 571 :554:04/09/12 07:17:50 ID:Vl1P63KB
 -  不覚にも、キリンさんに(;´Д`)ハァハァですw 
  香緒里編にもブラッシング指導入れて欲しいっ! 
 
  
- 572 :名無しさん@ピンキー:04/09/12 23:53:27 ID:fg6+awCk
 -  漏れ、文章鑑定学みたいなのやってるんだけど、 
  ここんとこ書いてるの、一人じゃね?って気がする   皆書いてやれよ      でも、うまいんだよなあ、いろいろと。ツボ押さえてるし   これからもよろ。 
 
  
- 573 :名無しさん@ピンキー:04/09/13 00:07:57 ID:BmSUzb8c
 -  >>572 
  漏れは541からの本編書いたんだけど、562からの佳奈子編は書いてないよ。   今までの読みながら書くと似てくるんかなあ? 
 
  
- 574 :名無しさん@ピンキー:04/09/13 00:29:50 ID:Y4VcRFqO
 -  >>573 
  うん、そこは違うかも というのもなんだけど、   内容とかトーンもだけど、けっこう調子とか言い回しの方があらわれるね   えーと、予想   香緒里をほとんど全部虫歯にしたのと   萩原先生編を始めたのと夏美編を始めたのは同じ人物(たぶん20代後半の女性)   佳奈子編の続編の始めと、562からの佳奈子編と、524からの本編もたぶんこの人   「345」は別だな 
 
  
- 575 :名無しさん@ピンキー:04/09/13 01:02:27 ID:HuTHo6yj
 -  香緒里口腔内情報、しかしあまり変化ないね 
  右上   7 C2   6 2次齲蝕・歯冠部全除去・根を治療中(次回土台?)   5 C2   4 C2   3 C1   2 C2   1 C2   左上   1 C2   2 C3 急性化して排膿・根の治療中   3 C2   4 C1    5 C2   6 C4 根を治療中・排膿中(しかし抜く方向で)   7 C3 感染歯質除去・神経処置済み・土台立て済み・次回クラウン   右下   7 C2   6 インレー(OK)   5 C2   4 レジン・2次齲蝕   左下   5 C2 インレー治療完了!   6 インレー(OK)   7 C2    
 
  
- 576 :夏美編:04/09/13 01:41:22 ID:HuTHo6yj
 -  といっても全然続いてないけど 
     「ところで、金子君、この親しらずは痛みがあるの?」   「よくわかんないんです。歯茎の腫れのせいでうずうずしてるのかな、って気もするし   歯が痛いような気もするし・・・」   「そうか・・いや、あと3本の親しらずはきちんと生えてるから。   この左下を抜いたら、あとのも抜かなきゃならないし、勿体無いなと思ってね」   「・・・そうです、よね」   「レントゲン見ると、けっこう辛そうなんだけど、なにせ全部萌出してないから   判断しにくいところがあってね。虫歯になってるのは間違いないんだけど。   もうちょっと生えるのを待って、できそうなら治療する、っていう選択はない?主治医の萩原先生。」   すると、横に立っていた佳奈子が答える。   「もちろん、他の3本のこともあるから残したほうがいいかな、て思ったんですけど、   その8番はけっこうやられてそうだったから、痛む前に抜いてしまいたかったんです。   8番のせいで、その手前の7番の治療もやりにくいですし。」   夏美は、二人の歯科医を不安そうに見比べている。   紺野の意見に従うと、歯をぬかなくても(少なくともとりあえずは)いいが、痛くなるかもしれないらしい。   佳奈子の意見に従うと、早めに治してもらえるが、痛くない歯も抜かなければならない・・・   「どうする、決めるのは金子さんよ。どっちが正解ってこともないわ」   佳奈子に答えをせまられ、夏美は、ふと目の合った、紺野の意見に従うことにした。   こうして、夏美の、限りなくC3に近いC2の8番は、しばらく様子見という大義を与えられ、   放って置かれることとなったのである・・      振りかいな。後よろしく。 
 
  
- 577 :名無しさん@ピンキー:04/09/13 12:59:11 ID:oALnCs1B
 -  >>576  
  わくわく、いい展開・・    しかし、これはひょっとして、紺野の夏美いじめですか??    後で苦しむのを見ようっていう・・    そこまで悪人じゃないか、紺野。彼はよくわからないんだよね。    佳奈子がいじめられてたんで仕返しとかっていうのは器が小さすぎだよね、    ってか別にそれほど佳奈子を思ってはいないかもしれないし。       関係ないが、昨日電車で見た20過ぎの女の子と両親の3人連れ    母は超歯が丈夫そうで、50超えてるだろうに綺麗な天然歯    しかし父は部分入れ歯のバネとかも見えてて、いかにも歯が悪いという様子    そして娘は、上1番両方とも抜髄っぽい変色、2番とかもやられてる雰囲気で 期待できそうだった。    しかもよく笑う、イイ子だった。4番は白いクラウンだな、ありゃ。   子供の頃、「お父さんみたいに虫歯だらけになるよ」とか母に怒られてそうなイメージ  
 
  
- 578 :名無しさん@ピンキー:04/09/13 16:41:40 ID:T8rdi56n
 -  >>577 
  その分だと奥歯は全滅だね!   リアル香緒里って感じ。   いい物見ましたね。羨ましい。 
 
  
- 579 :本編:04/09/14 00:02:47 ID:/aZ/pPAZ
 -  9月も中旬になり、大学の長い夏休みが終わる日が近づいてきた。 
  香緒里の歯の治療も、香緒里がなれてきたこともあるのか、   少しずつだが着実に進み、右上の奥から2番目と、左上の一番奥は、   クラウンが入り、完治していた。   前歯の根も綺麗になり、差し歯の土台立てまで済んでいる。   次回の治療で完全に治るらしい。   だが、他の歯が着々と治っていく一方、例の左上の奥歯の治りは悪かった。   何度根を掃除してもらっても、次に行ったときには中が膿んでいる。   「中がうずく」と言っては薬で抑える日が続いていた。   「香緒里さ…その歯、そろそろ限界じゃないか?」   「…」   「薬が切れたときの痛みも前より酷そうだし」   「…そんなことないよ。第一、抜かなきゃならないなら、荻原先生がそう言うはずよ」   「それはそうなんだけど…」 
 
  
- 580 :本編:04/09/14 00:25:10 ID:/aZ/pPAZ
 -  なんだか釈然としなかったが、我慢しているのも歯を抜くのも香緒里だから、 
  俺は強く出られなかった。      次の日の夜は台風だった。   風が酷くならないうちに香緒里の家に向かう。   ドアを開けた香緒里の顔を見て、驚いた。   「それ……。左、凄い腫れてない? どうしたの?」   「さっき急に痛くなって…でも薬飲んだから大丈夫だよ」   そう香緒里は言って俺を部屋に入れたが、どう考えても大丈夫な腫れ方ではない。   案の定、しばらくすると、   「駄目…痛い、痛い、助けてぇ」   と泣き出した。 
 
  
- 581 :本編:04/09/14 00:29:46 ID:/aZ/pPAZ
 -  確かこういうときは仮の詰め物をはずせ、って言われてたっけ。 
  「外そうか?」   「でも…薬が抜けちゃう……痛っ!ああぁん…!」   「そんな、薬なんて言ってる場合じゃないだろ!もう、外すよ!」   俺が強く出ると、香緒里は反論しなかった。   荻原先生に言われたように、爪楊枝で引っかけると、蓋は簡単に取れた。   蓋に絡まってきた綿も一緒に引っこ抜く。   「ひぁっ!」   その瞬間、香緒里が悲鳴を上げる。   歯の奥から、膿がとろ〜っと流れ出てきた。   でも、それは少しだけで、左頬の腫れは全くひかない。   「痛ぁい、うぅっ、ひっく」   「全然良くならないの?」   「う…ん、歯は…わかんない…頭がいたいよぉ」 
 
  
- 582 :579:04/09/14 00:31:19 ID:/aZ/pPAZ
 -  ここまで。 
  クラウンとか飛ばしてスマソ。   中途半端スマソ。 
 
  
- 583 :本編・少しずつ進行編:04/09/14 03:40:54 ID:nmVexB9H
 -  おお、なんかオオゴトになってそうだ、大丈夫かな、香緒里。 
  ぜひ続きをお願いしたい!早く抜きたいもんねぇ。      でも、じりじり進行編も・・クラウンとか気になる。      次の日、香緒里は、高校時代の友達と遊びに行ってしまった。   俺は、一人で買い物にでも出かけることにした。   デパートに入り、ふらふらしていると、新しい香水のキャンペーンをやっていた。   「どうぞー。当店で先行発売です。お試しください」   紙に染み込ませた見本をもらった。ふんわりとした、いい匂いだった。   香緒里に似合いそうだ。ボトルもなかなかかわいい。   最近、香緒里も歯の治療を頑張ってるし、ふとプレゼントしてみようかな、と思い立った。   「あの・・これ、プレゼントに・・」   「ありがとうございます。お包みしますので少々お待ちください」   にっこり笑って応対してくれた売り場のお姉さん。上の前歯が1本、やけに白く目立った。   このところ、歯医者通い(自分の治療じゃないが)をしているせいか、人の歯がちょっと気になるのだ。   差し歯かな・・   そう思っていると、別の係りのお姉さんが、   「彼女にですか?喜びますよー」   と言ってくれた。この人は、前歯が4本とも、少し不自然な気がする。ちらりと見えた奥歯は、1本まるごと、銀色に光っていた。   これがクラウンだろうか。案外セクシーだな・・   周りを見回すと、けっこう前歯が差し歯っぽい人が多かった。   香緒里に、大丈夫だって言ってやろう、と思いながら、家に帰った。 
 
  
- 584 :本編・少しずつ進行編:04/09/14 03:43:24 ID:nmVexB9H
 -  家に帰ってしばらくすると、香緒里から電話だ。晩御飯でも食べにいこう、という。 
  メニューは迷った挙句、パスタなら食べられそうだ、というので、イタリアンに行った。   席につくと、香緒里は、今日会った友達は4人だが、2人が差し歯を入れていた、という話を始めた。   その中の、前歯を全部差し歯にしたという一人が、香緒里の前歯の虫歯を目ざとく見つけ、こう言ったらしい。   「香緒里もさっさと歯医者に行って、差し歯にしてもらいなよ。綺麗になるよ。」   香緒里が、歯医者には通っていること、奥歯の根の治療があるので、   前歯は治療待ちだが、差し歯にするのは1本だと説明すると、   「ええっ、穴開いてるのに、大丈夫なの?その歯医者。   私の前歯は、アイスがしみるだけだったけど、念のため神経取りましょうって言われて、   神経とると歯の色が変わっちゃうからって、差し歯にしてくれたよ。   奥歯もしみるところは、ほとんど神経抜いてもらったけど、   そんなに何回も根の治療なんかせずに、すぐかぶせてくれたし。紹介しようか?」   と言われたそうだ。   香緒里は、少し心配になってしまったらしい。    
 
  
- 585 :本編・少しずつ進行編:04/09/14 03:44:17 ID:nmVexB9H
 -  「じゃあ香緒里、前歯も全部差し歯にしたいわけ?」 
  「それは嫌・・」   「じゃあ、いいんじゃないの。」   「奥歯も、萩原先生、神経は残せたわ、って言ってくれたけど、取らなくてよかったのかなあ。根の治療もほとんど終わってないし」   「そりゃ、神経は残せるなら残したほうがいいと思うよ。根も、たしかに、時間かかってるけど、丁寧にやってくれてるんじゃないのかな。気になるなら、今度聞いてみなよ」   「うん、そうする」   香緒里は少し安心したようで、ぱくぱくとパスタを平らげた。   そんなにばくばく食べて大丈夫か、と思っていると、案の定、   「ぁ、つっ!」   香緒里は左頬を押さえて、顔をしかめている。   思わず、左で噛んでしまったらしい。   「大丈夫か、左ではあんまり噛むなって言われてただろ」   そう言うと、香緒里は、もごもご、と舌で左上を探り、   「うん、詰め物は取れてないみたい。よかったー」   と、にっこりした。食べ終わると、明日の歯医者の時間にまた香緒里を迎えに行く約束をして、別れた。      これは579からよりも前です。少しずつ進行、と書いたが、実際、全然進行してないな。   気が向いたらこっちも続きよろしう。 
 
  
- 586 :本編 少しずつ進行編:04/09/14 11:36:52 ID:CFbxOkdP
 -  >>585の後、>>579の前でよろしく。 
     次の日。   「じゃあ、今日はどこから始めようか・・」   荻原先生が言いかけたところに、香緒里が   「あの、ちょっと聞きたいことがあるんですけど・・」といった。   「ん、なあに?」   「えっと・・この前歯、差し歯にするのは一本だけで大丈夫なんですか?」   香緒里が聞くと、萩原先生はちょっと顔を曇らせた。   「んー・・削ってみないと分からない、としか言えないわ・・」   先生はそう言うと、カルテを台においた。   「虫歯がね、浅くて小さかったら、削ってプラスチックを入れるだけで治療できるの。   これでも、きちんと詰めたら、普通に見たら分からない程度に出来るわ。   ただ、変色するから何年かに一回詰め替えないといけないけど」   先生にそう言われ、香緒里がこくんとうなずく。   「浅くても広かったら、プラスチックを詰める方法じゃ強さが足りなくなるわ。   だから、神経は残すけど、歯を細く削って、かぶせ物をかぶせることになる」   すこし不安げに香緒里がうなずく。   「で、もし神経にまでいってたら、神経を抜いて、根っこだけ残して歯を全部削って、   そこに金属の土台を差し込んでかぶせ物をかぶせる。これが差し歯ね」   説明を聞いているだけなのに、香緒里は泣きそうな顔をしていた。 
 
  
- 587 :本編 少しずつ進行編:04/09/14 11:37:24 ID:CFbxOkdP
 -  「1本は、詰めるだけでいけるわ。後は・・やってみないと分からないわね。 
  ただ、いずれにせよ、見た目はなかなかきれいに治るわ。心配しないで」   萩原先生がそう言って肩を叩くと、香緒里は不安そうにうなずいた。   「じゃあ、今日は根の治療のあと前歯の治療をしましょうか」   「はい」   香緒里がそう言うと、先生はにっこり微笑み、ユニットを倒した。      「まず土台を入れるわ。はい、あーん・・」   先生が、歯にぎゅっと土台を押し込む。   香緒里はハンカチをぎゅっと握りしめて目尻から涙を流したが、声は出さなかった。   「あれ、香緒里ちゃん、我慢強くなったわね」   萩原先生がほほえみかけると、香緒里もにこっと笑い返した。   「じゃあ、次は・・例の歯の根の治療ね」   先生がそう言うと、香緒里は一瞬びくっとしたが、おとなしく口を開けた。   先生は、蓋を取って、難しい顔をする。   「ん・・今日は、薬を詰め替えるだけにしようか」   先生はそう言うと、綿を歯から抜く。   綿は、しっとりと膿でしめっていた。   「新しいの入れるわね」   先生はそうとだけいって新しい綿を押し込むと、蓋をした。 
 
  
- 588 :名無しさん@ピンキー:04/09/14 11:39:02 ID:CFbxOkdP
 -  ・・ふぅ、息切れ。 
  どなたか前歯の治療をしてあげてください・・。      C2でも、削ってみたら露髄しちゃったってのが欲しいなぁw 
 
  
- 589 :本編 少しずつ進行編:04/09/14 16:55:51 ID:V1gcG3gP
 -  ちょびっと続けさせてもらいます 
     「ぅ、くう」   「痛む?」   香緒里は、ちょっと迷ってから、首を振った。   「香緒里ちゃん。」   先生は、静かに言った。   「香緒里ちゃんの歯が痛いかどうかは、香緒里ちゃんにしかわからないの。   で、神経のところを治療しているときは、特に、痛いかどうかって重要な情報なのね。   もし、痛いのに、それを気付かずに詰めてしまったりしたら、あとで大変なことになるのよ。」   香緒里は真剣な顔で頷いている。   「だから、痛いかどうか聞いたときは、嘘はつかないで欲しいの。   抜くのがイヤだっていうのは分かってるから、そうなったらちゃんと相談するから。いい?」   ハイ、と小さく香緒里が答える。   すると、背後から、ぷっ、と吹き出す声がした。   振り向いてみると、隣の椅子で、子供の治療を終えたばかりの男の先生が、笑っていた。   この間の先生だ。   それを見た萩原先生は、赤くなって笑いながら、   「なーんて言ってもね、つい、痛くないって言っちゃうものだけどね、ダメよ。」   と、香緒里に念を押した。 
 
  
- 590 :本編 少しずつ進行編:04/09/14 18:44:08 ID:V1gcG3gP
 -  「じゃ、次、前歯治しましょうか。」 
  「ハイ、お願いします」   「ただ、さすがに5本いっぺんにはできないわ。今日は左側をやりましょ。」   そう言って、先生は、香緒里に手鏡を持たせて、唇をめくった。香緒里がちょっと赤くなる。   「まず、この、ちょっと黒くなってる犬歯、ここね、ちょっと口開けてくれるかな、裏も黒くなってるけど。ほら。」   ミラーで、歯の裏側を見せられ、香緒里が泣きそうな顔になった。   裏側は、歯の4分の1くらいまで、かなりクッキリと黒ずんでいた。   「あと、この歯ね。」   次に、前歯の真ん中を指差す。根元に穴があいてしまっている。   やはり裏側を見せられるが、裏は穴の周りが黒くなっていた。   「大丈夫よ、こんなになってても、ちゃんと治るから。じゃ、治すわね。」   先生が、微笑みながら、椅子を倒した。   「ちょっと響くと思うけど、痛いってことはないと思うわ。でも、痛かったら手、上げてね。」   今日は、口を開ける器具は使わないらしい、と思っていると、助手がガーゼを唇の下にぐい、っと挟み込み、   左側の唇だけを大きく開かせた。   ヒュイーン、と音をさせながら、ドリルが香緒里の口の中に入る。   どうやら、裏側から削るらしい。   ウイン、イン、チュイィィィィン、   香緒里は、目をギュッとつぶったまま、おとなしく削られている。   ずいぶんと長く削っていたが、香緒里は、最後に一度呻いただけだった。 
 
  
- 591 :本編 少しずつ進行編:04/09/14 18:49:35 ID:V1gcG3gP
 -  「うん、大丈夫だったわね。口ゆすいでいいわ」 
  先生が満足そうに言い、ガーゼを抜いて、椅子を起こした。   口をゆすいだ香緒里に、   「イーってしてみて」と言ってみる。イヤイヤながら口を開ける香緒里。   が、予想に反して、特に前から見て、穴は開いていなかった。   「黒く見えてたのは、後ろの虫歯が透けていただけなの。だから、前は残ってるわ」   先生が横から説明してくれた。   「じゃ、埋めていくわね。最初の薬だけちょっと熱くなる感じがするかもしれないけど。」   そう言って、助手が治療台に用意した薬を付けたり、風を当てたり、ペーストを埋めたりして、   最後に青い光を当てて、手際よく処置してくれた。   「はい、こっちの歯は終わったわ。」   そう言って、香緒里に手鏡を渡し、椅子を起こす。   香緒里は、おそるおそる口を開いて、鏡を見たが、その顔がパッと明るくなった。   「綺麗に治ったでしょう。」   ミラーで裏も見せてくれたが、そこには、さっきの黒ずみは見当たらなかった。   香緒里は嬉しそうだ。   「さて。次はちょっと痛いかもしれないけど・・・頑張れるわよね」   先生が香緒里を励ますように言う。   香緒里は、大きく頷いた。      終わり。後よろしく。綺麗に治るので喜んだ香緒里、ってとこで止めてみました。   >>588   たしかに、露髄も欲しいですね。やっぱり1番と、右の2番あたりが怪しいかな。   とりあえず痛くなってないので、覆髄試して、1本くらいうまく行くかも。   紺野が出てきて、佳奈子に3Mixでも使わせるっていうのもアリだと思うけど・・      9月の香緒里の続きもゼヒお願いします 
 
  
- 592 :名無しさん@ピンキー:04/09/14 19:07:25 ID:50J+ZJxn
 -  おー、1本は無事治ったんだー。良かった♪ 
     3Mixまで出てきたw   聞いたことあるけど使い方しらないやw 
 
  
- 593 :本編 少しずつ進行編:04/09/14 20:16:21 ID:50J+ZJxn
 -  治療がちょびちょび進む・・ 
     「じゃあ、削っていくから。ちょっと我慢してね」   先生がそう言うと、助手がさっきと同じようにガーゼを押し込んだ。   香緒里の顔が、ちょっとこわばる。   チュイィィィィン、と同じように裏から削っていくと、香緒里の眉間にしわが寄っていく。   「ふぁ、あぁあっ・・」   痛そうな声を上げるが、先生は全く気にしていない。   「ふぅぅん・・ぁあっ・・」   ハンカチをぎゅっと握りしめ涙を流す香緒里。   「んぁああっ!」   香緒里がひときわ大きな声を上げると、先生はドリルを止めた。   「・・香緒里ちゃん。虫歯を削っていたら、神経がでちゃったわ」   先生がそう言うと、香緒里はさっと青ざめた。   「じゃ、じゃあ・・」   「神経を抜いて、差し歯にした方が良いわ。神経を抜いた歯は折れやすいし、変色もするし」   香緒里は、がっくりとうなだれた。 
 
  
- 594 :本編 少しずつ進行編:04/09/14 20:16:47 ID:50J+ZJxn
 -  「・・いいかしら」 
  先生が念押しに聞くと、香緒里は力なくこくんとうなずいた   助手が麻酔を持ってきた。   「じゃあ、麻酔するからね」   先生はそう言うと、香緒里の歯茎にすっと針を差し入れる。   「ひぁ・・んんっ・・」   「ん、もう一本打つわね」   「あぁっ・・ん・・」   見慣れてしまった麻酔の光景である。   しばらく経つと、先生はまたドリルで香緒里の歯を削っていく。   香緒里はぎゅっと目を閉じて、痛みに耐えている。   「じゃ、神経取るから」   先生はそう言うと、例の針を手に取った。   香緒里が、びくっと身構えた。         ってことで、どなたか前歯2本の根の処置してください(汗 
 
  
- 595 :名無しさん@ピンキー:04/09/14 20:23:07 ID:50J+ZJxn
 -  現段階で 
  本編 少しずつ進行 >>594   本編 9月期 >>581   萩原先生編 >>569   夏美編 >>576      たくさんありますので、作る方お間違えのないようw 
 
  
- 596 :579:04/09/14 20:45:07 ID:Be7P6buZ
 -  治療を少しずつ進行させるネタが思いつかなかったんで、すっ飛ばして書いたんだが、 
  今読んだら、少しずつ編がかなり本格的で良い感じ。   この段階でパラレルにするとしんどそうなので、   9月期編は無かったことにしてくれていいです。   でももし良ければ、左上6番が痛くなるエピソードなんか、   使えそうなところだけタイミング合わせてコピペしてくれると嬉しい。   ちなみに、あわててレントゲンを撮ったらでっかい膿瘍ができてて、   それを見た荻原先生が真っ青になる予定でした。 
 
  
- 597 :名無しさん@ピンキー:04/09/14 20:48:47 ID:V1gcG3gP
 -  いえいえ、9月編、すごくいいです。 
  香緒里の意地っ張りぶりとか。 
 
  
- 598 :名無しさん@ピンキー:04/09/14 20:51:33 ID:V1gcG3gP
 -  お、香緒里の前歯、神経が! 
  紺野、今だ、助けてやれ。   自分の中では、紺野は10年前佳奈子の歯を抜いちゃったのを悔やんでるイメージ。   今なら治せたのに、みたいな。    
 
  
- 599 :名無しさん@ピンキー:04/09/14 22:50:00 ID:A4n95TbR
 -  >>598 
  それじゃ青春小説だよ、歯フェチ小説だよこれは   と思いつつも、その設定悪くないのでちょっと書いてみる   少々お待ちを   もち、期待もたせてがっくり、ってなるのも入れよう 
 
  
- 600 :本編 少しずつ進行編:04/09/14 23:48:55 ID:qbVZNHdi
 -  「ちょ、ちょっと待って下さい」 
  俺は、声を上げた。   先生と助手が、怪訝そうにこっちを見ていた。   「痛い歯なら、神経取るの、わかるんですけど・・特に痛くなかったのに・・」   うまく言えなかった。無駄な抵抗だというのはわかっていた。   香緒里は、だまってうつむいたままだ。   「そうね、ちょっと説明が足りなかったかしら」   先生は、針を置いて、説明してくれた。   「前歯はね、奥歯よりも固い部分が薄いの。だから、神経にすぐに虫歯が達してしまうのね」   「・・なんとなく、わかります」   「で、削るのは、虫歯になっている部分なんだけど、そこを取っていたら、神経が出てしまったのよ」   「でも、痛くなったりとかそういうのが先じゃないんですか」   「痛くなくても、神経が虫歯と接してた、ってことだから、神経に菌が入っている可能性が高いわね」   「可能性ですよね」   と言ったとき、視界に、さっきの男の先生が入った。助けてくれそうな気がして、目で訴えた。 
 
  
- 601 :本編 少しずつ進行編:04/09/15 01:41:26 ID:mdapgif7
 -  「どうかしましたか」 
  その人がやってきた。   「ああ、紺野先生」   やはり、紺野先生というらしい。   「上左1番のC2の齲蝕を除去していたら、露髄してしまったんです」   そう言って、萩原先生は、香緒里の歯を見せた。   穴とまわりの黒い部分は削られてなくなっていたが、かわりにそこに大きな穴が開き、   痛々しかった。   「なので、抜髄して、治療するつもりです」   萩原先生が淡々と説明する。   「ん、わかった、で、それは嫌だというのかな?」   「患者さん、香緒里ちゃんは了解してくれたんですが、この、彼氏が嫌だって」   「なるほどね。気持ちはわかる。」   紺野先生は、俺を見て、ちょっと笑ってから、萩原先生に言った。   「炎症がなければ、覆髄してみたら。」 
 
  
- 602 :本編 少しずつ進行編:04/09/15 03:19:52 ID:mdapgif7
 -  「でも・・」萩原先生が何か言いかけるのを、 
  「もし、これが萩原君の歯だったら、僕はとりあえず覆髄してみると思う。自分の歯だったらどう?」   と、さえぎった。   「・・・」   「それに、この彼氏がついてるなら、大丈夫じゃないかな。」   「わかりました。やってみます。」      きょとんとしている俺と香緒里に、紺野先生が説明をしてくれた。萩原先生は、   なにやら忙しく薬を準備しているようだ。   「神経に菌が入ってるかもしれない場合、普通、神経を取ってしまうんだ。安全のためにね」   「はい」香緒里も、真剣だ。   「でも、もちろん神経は取らずに残したほうがいいから、神経がきれいで、感染が少なそうな時は、   菌を殺す薬を塗って、そのまましっかり蓋をする、っていう方法がある」   「そのほうが絶対よさそうなのに、何故、そうしないんですか」   さっき、萩原先生が、一度神経を取る、といったのがギモンだったのだ。   「いくつか理由があるんだけどね、まず、神経を取らない上に薬を塗るから、しばらく、痛むんだ、長いと1週間くらい」   「はい」   「だから、我慢できなさそうなら、やらない。あと、やってみて、やっぱりダメだった、ということもある」   「えっ・・」   「特に、しっかり蓋をしてあるから、けっこう痛くなるらしい。で、あの歯医者はダメだ、って、   患者さんが勝手によそに行って、神経を抜かれたりする。残念だけどね」   「はい・・」   「そういうわけなんだ。しばらく痛むけど、我慢できるかな?えーと、香緒里ちゃん。」   「はい、頑張ります。」   「よし。萩原君は、ちょっと怖い以外はいい歯医者だから。安心して。」   紺野先生は、香緒里の肩をポンポン、とたたくと、にっこり笑って、奥へ行ってしまった。 
 
  
- 603 :本編 少しずつ進行編:04/09/15 03:20:26 ID:mdapgif7
 -  「この様子だと、けっこうジンジン痛いかも知れないわ。頑張れる?」 
  気が付くと、萩原先生がスタンバイしていた。香緒里がこくっと頷く。   「じゃ、始めましょうか」   椅子が倒される。香緒里が静かに口を開けた・・・   「ちょっとしみるわよ・・」   ガーゼを当てて、水をかける。   「ん!んんん!」   香緒里が眉根にぎゅっとしわを寄せ、うめく。   さらに、風を当てる。   「んあぁぁっぁぁん」   助手が頭を押さえたので、香緒里は足をもぞもぞさせている。痛そうだ・・   「じゃ、薬塗るからね」   小さいヘラのようなもので、薬を取って香緒里の歯に塗る。   香緒里が、びくん!と大きくはねた。   「いひゃああああい」目からは涙が流れている。   「これでよし。じゃ、蓋しちゃうわね」   先生はそう言って、さっきの歯を治した時のように、手際よく、治療を終えた。   「今は、仮の封だから、ちょっと色が白いけど。2週間経ってなんともなかったら、   こっちみたいに、自然な色でやり直すわね。」   たしかに、ちょっと白っぽいが、さっきまでの、穴の開いた歯よりはずっと綺麗だ。   喜んでいるだろうな、と、手鏡を渡された香緒里の顔をのぞきこんでみると、   やや顔をしかめている。 
 
  
- 604 :本編 少しずつ進行編:04/09/15 03:21:20 ID:mdapgif7
 -  「香緒里、痛いのか?」 
  「・・うん。」   先生の顔を見ると、   「さっき紺野先生に聞いたと思うけど、2,3日から、1週間くらいは痛むと思うわ。   もし、急にズキズキ痛くなってきたら、言ってね。」   と、説明してくれた。   「じゃ、今日はこれでおしまい。また、明後日来てくれる?残りの前歯と、根の掃除するわ。」   弱々しく、ありがとうございました、と言って、香緒里が椅子を立つ。   診察室をでようとしたところで、紺野先生が出てきた。   「ホント、ありがとうございました。」   頭を下げると、   「うん、それより、彼女のこと。けっこう痛むと思うから、しっかり付いててあげて。」   と言って、送り出してくれた。      帰り道。香緒里は、しくしく泣いている。相当痛いらしい。これがしばらく続くのか・・   可哀想になって、香緒里の肩を抱き寄せた。      残してみた。後よろー 
 
  
- 605 :本編 少しずつ進行編:04/09/15 20:10:48 ID:OKH72qGm
 -  家に帰っても、香緒里は泣き続けていた。 
  「痛いよぉ・・」   痛み止めの薬をもらっていたので、飲ませたが、どうやら、効かないらしかった。   夜中になって、痛みはおさまるどころか、より強くなったらしい。   「あぁぁぁん。もうダメ・・痛いぃ・・痛いよぉ・・」   「大丈夫、2,3日我慢すればいいって言われたじゃないか」   一生懸命励ます。   「もうイヤぁぁぁ。」   「でも、差し歯になるのはイヤなんだろ」   「差し歯でいいよ・・こんなに痛いのやだよぉ」   「そんな、ちょっと頑張ってみようよ」   なだめてみたが、もう香緒里は限界のようだった。   「どんなに痛いか、わからないくせに!だいたい、私は頼んでないのに!」   ・・・ 
 
  
- 606 :名無しさん@ピンキー:04/09/15 22:59:21 ID:OKH72qGm
 -  後よろしく。 
 
  
- 607 :本編 少しずつ進行編:04/09/16 02:58:21 ID:1PTYIpG8
 -  よく考えてみると、そうだったかもしれない。 
  俺が先走って、先生に頼んで、香緒里の歯を残してもらったのだ。   「香緒里、ごめんな。明日、歯医者に行って、神経抜いて、楽にしてもらおう。」   香緒里は、泣き顔のまま、頷いた。      次の日。   朝、一番に見てもらえるように、診察時間の前に、香緒里を連れて歯医者に行った。   受け付けをしていると、紺野先生が、香緒里を見つけて、やってきた。   泣いている香緒里を見て、全てを察したようだ。   「どうした?やっぱり痛かったかな?」   黙って頷くだけで、泣いたままの香緒里の代わりに、答える。   「すみませんでした。昨日、無理言って、わざわざ残してもらったのに」   「いや、構わないよ。後で、この歯は残せたかもしれない、って思うより、   なんというか、言い方が良くないけど、本人も、しょうがなかった、って諦めがつくから。   萩原君は今、治療中だから、ちょっと待ってて。」 
 
  
- 608 :本編 少しずつ進行編:04/09/16 03:14:31 ID:1PTYIpG8
 -  治療中?まだ、診察時間は始まってないはずだけど、他にも急患の人がいたのかな。 
  そう思って、診察室をのぞくと、紺野先生が、治療ユニットの椅子を倒しているところだった。   ふと見ると・・治療椅子に座らされているのは・・・萩原先生だ。   ドクン、ドクン・・   治療台の上には、歯の模型があって、その上に、銀歯がちょこんと乗って輝いている。   あれが、萩原先生の口に入るのか・・   俺は、傍らの香緒里のことも忘れて、二人から目が離せなくなった。   紺野先生に促され、萩原先生が口を開けて、目を閉じる。   模型から銀歯を取って、口の中へ・・・   ごくり、と唾を飲み込んだとき、目の前で、診察室のドアが閉められてしまった。   頭がくらくらした。あの二人が付き合っているのかどうか知らないが、   あんなにエロティックな光景は初めて見た気がする。   俺も、歯医者になっておけばよかった・・と、後悔した。 
 
  
- 609 :本編 少しずつ進行編:04/09/16 03:48:29 ID:1PTYIpG8
 -  しばらくして、助手が「大野香緒里さん」と、呼びに来た。 
  診察室に入ると、萩原先生が、白衣を着て、いつもどおり待っていた。   さっきの光景が頭に浮かんで、まともに見られなかった。   萩原先生の口には、さっきの銀歯が入っているのだ。   すると、それを見透かしたように、萩原先生は、   「さっき、見たわね・・」と、いたずらっぽく笑った。が、すぐにまじめな表情に戻って、   「ま、そんなことより、香緒里ちゃん、痛む?我慢できない?」   と、香緒里に尋ねた。   香緒里が泣きながら頷く。   「そっか、じゃ、神経抜いて、治療するわね。いい?」   また、香緒里が黙って頷いた。涙がさらに溢れ出ていた。   「じゃ、麻酔するわね」   椅子が倒され、香緒里の歯茎に、針がささる。   「んっ・・あ・・」   「ちょっと我慢ね」   「んぁ!ぁぁ・・」   「はい、いいわ。しばらく待ちましょう」   そう言って、先生は、話を始めた。   「ところで、根の治療が終わった後のことなんだけど。   この間痛んだ前歯は、歯自体がやられちゃってるから、差し歯にするしかないんだけど。   こっちの歯は、一応、歯はきちんと残ってるから、残すこともできるわ。どうする?   ただ、神経を抜いてしまうと、どうしてもしばらく経って、歯が変色してしまうけど・・   差し歯が嫌っていうのであれば、それも可能だから。どうするか、考えておいて。」   香緒里は、はい、と返事をして、少し考え込んだ。   「じゃ、始めましょ」   萩原先生が、ドリルを手にした。      ここまでです。 
 
  
- 610 :萩原先生編:04/09/16 11:17:26 ID://HhA3SY
 -  あまりに遠くて忘れそうなので、ちょこっと書いてみます。 
     翌日の、日曜日。   前の晩、やはり根の治療中の右上6番がなんとなく痛く、痛み止めを飲んで寝たせいか、   夏休みで患者が多いのに疲れていたせいか、   12時を過ぎてもまだ眠っていた佳奈子は、突然、歯の痛みで目が覚めた。   「ん、いたたた・・」   左頬をおさえる。痛み止め、飲まなきゃ。   え、・・・左・・・?   寝起きの頭で考える。治療してもらってるのは・・・右じゃなかったっけ・・・   じゃあ、今痛いのは・・?新しい虫歯?   ハッ、と、飛び起きた。   紺野に連絡しようと、電話を取る。   が、今日は日曜日だった、と気が付いた。   紺野は何をしているだろう、デートでもしているかもしれない。   実は、佳奈子は、紺野の私生活はよく知らないのだった。   昔から、なんとなく憧れは抱いているものの、会うのはほとんど仕事の時だった。   さすがに日曜に電話をするのは気が引けた。   痛み止めを飲んで、もう少し様子を見てみよう。   そう思って、薬を飲んで、また横になった。      半端でごめん、誰か続けて。 
 
  
- 611 :名無しさん@ピンキー:04/09/17 01:55:23 ID:R9B/t0Yr
 -  最近話が伸びないね。とりあえずあげ。 
 
  
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